魔導兵器マギアーム

白石華

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岩塩都市ブロッサムミスト・本編

まだ続く、不穏な気配

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「ガアアアアア!」
「ステラ! こいつらはいつものと違う! 弱点は……多分雷属性だろうが。」
「はい。魔軍の偵察隊かもしれませんね!」

 俺は大盾を構えてコリスさんの先に出る。今回は洞窟を探索したらモンスターの群れに遭遇したが……海生生物なのは変わらないが大型で魚人のような姿をしている。隊列を作り、大将らしきボスモンスターが後方に構えている。恐らく偵察隊だとしたら、前衛がやられたら早々に撤退するだろう。俺たちとしてはどういう行動に出たらいいか。

「相手の出方を伺おう。深追いはしなくていい。」
「全滅にしなくていいってことですか?」
「恐らく偵察隊がやられたら、こちらに攻め込んでくる数が変わりそうだからね。
 全滅しようがしまいが魔軍が攻めてくることには変わらないのさ。」
「なるほど。」

 偵察隊の割には昼間に軍で姿を見せてくる事にまだ疑問は残っているが、向こうにも何かあるのだろう。俺たちが早めに気づいていてよかったと今は思おう。

「アクア、ライディ、サンダーウエイブ!」

 バチバチバチバチッ!

 コリスさんの放った雷の波の全体攻撃に、魚人たちの群れが呑み込まれる!

「ギャアァアア! ギャッ、ギャギャッ!」

 コリスさんは結局、弱点攻撃でモンスターを全滅させてしまった。

「うーん。弱すぎたのか?」
「どうなんでしょうかね。コリスさんも結構強い魔法でしたよ?」

 例えるなら能力が中盤の山場の状態で通常戦闘の群れを片付けるための全体攻撃魔法というのだろうか。判断に迷う所だ。しかし魔軍の偵察隊としてはどうなんだろう。通常戦闘とは言えないし。コリスさんの言う通り、魔軍にしてはという前提で弱すぎる、という線も捨てきれない。

「とりあえず、勇者の特訓時にこれも報告しておこう。ようやく動きが見えてきたのだからね。」
「はい。」

 事態は着々と決戦に向かっている。魔軍もここを利用して攻めてくるという可能性も取れたのだから、警戒態勢はより厳しくなるだろう。俺たちもいつ、警備の協力から軍と交代することになるかだな。

「あと、一応、昨日のこととかもあるし勇者にそれとなく聞いてみるかな。」
「何をです?」
「いや。軍は今の状態に不満を抱いていないのかとね。」
「コリスさん。あの、俺たちは国にも魔軍討伐にも関われないんじゃ。」
「精霊の悪だくみを阻止しようとしたら結果的にそうなった場合。
 手柄を勇者と王国に渡して我々はそこでスッと身を引くというのも検討していてね。
 お礼に月にまつわる占星術のアイテムを貰えればそれでいいと。」
「コリスさん……。」

 本当に俺のお目付け役なのか? と思ってしまう行動だが。コリスさんも精霊以外にも気になるよな、そりゃ。しかし、昨日からずっと、行動が早いというか先回りを目指しているというか。結局、自分が見つけた惨状の芽を、早めに摘んでしまいたいのだろうと思うことにした。それしか理由はないもんな。

「コリスさん。気の早い行動かもしれませんが。俺だって何もしたくない訳じゃないです。」
「ああ、うん。」
「コリスさんと仲違いしたいわけでもないです。今の俺にもやれることはしたい。
 王都だって見捨てたい訳じゃない。
 俺が気になっているのはこの件については関わらないはずだったのに。
 随分深いところまで関わる気でいることです。」
「ああ……それは、そうなんだけど。勇者と関わってしまい。この国で手柄になると。
 褒美に占星術のアイテムを景気よく貰えそうだと知ってしまい。
 なおかつ目の前には魔軍の侵略路だ。
 それに私たちの目の前には次々と褒美がもらえそうな可能性が浮かんでだね。」
「俺もそれには釣られそうになりましたけど。」

 今のところ、用心深く行動しようと思っているのは俺で。コリスさんは派手に動く気はないが、この国で貰えるものを貰っておくのと、精霊の悪だくみは国と関わってでも阻止したいってところか。この場合の派手、というのは勇者と連携して魔軍と直接戦うとか、国と関わって召されるところまで暗躍するとかだな。それは完全アウトだろう。

「まずは王宮に向かって、やれそうなことはそれからにするよ。」
「はい。」

 俺たちはギルドに王宮への連絡のために向かうことにした。
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