魔導兵器マギアーム

白石華

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魔導兵器マギアーム

ステラとアイテム屋

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「おう、ステラ、仕事貰えたのか?」
「ああ。お陰さんでな。アイテム見せてくれよ。」
「いいぜ、見てけよ。お前の仕事はここなら魔導士のサポートとして溢れるぐらいありそうだもんな。」
「へー。ここで装備を買い揃えるのね。」
「ええ。ここなら十分だと思いますよ。」
「ふーん?」

 ここは『アルバビリディ王国』。魔法を中心にして発展した国だ。王国なのだから勿論、ここは王が国を治めている。近くに山岳地帯の中でも火山地帯があって降り積もる火山灰で土も町並みもすべて青と白で覆い尽くされた所だ。
 そう。ここは空も大地も町並みも雪と空が交じり合ったように青と白がマーブルになって広がっている。遠くから見たらどこまでが空で大地か見分けがつかないぐらいだ。ここの火山灰と溶岩はそういう色をしている。火山地帯を越えたところに魔軍の居城があるのだが、今回の仕事とはそれは関係ない。はずだ。街には魔軍の進行を防ぐために防壁と結界が作られ、マジックアイテムの生産も盛んである。
 街にはびこる植物、この土地にちなんだ名前の『マーブルスノウ』は見た目は白と水色の不思議な模様になったガーベラだがサボテンを魔法植物として加工したものである。ここの国の主食だ。おやつ代わりに軽く摘まんで食べるのも可能だ。それを加工して保存食にしたのを携帯して持ち歩くことだって可能である。そのほかにも砂漠じゃ見られないような植物もあるが、それもみんなサボテンを魔法植物として加工したものだ。
 街の建物も火山灰を加工して作った模様が刻まれた魔法ブロックを積んで固めたドームやら四角い建物やらが連なっている。ここはモンスターの巣が多く、その中でも山岳地帯を牛耳る『魔物』と呼ばれる厄介な強さと知能を持った連中が統率して街を襲ってくることがある。今のところは王家の召喚魔法での召喚が異国の地からも人を呼んで防衛と反撃を兼ねた討伐もしているが、それもいつまで持つかは分からない。
 その代わり、魔法が発展して、強い冒険者も集まってくるし、俺みたいなのにも魔導士や錬金術師、軽戦士、探検家などといった体力の弱い冒険者のサポートという形で食い扶持はある。
 今いるのは冒険者向けのアイテムと装備を扱っている店だ。今回の仕事ならモンスター退治で終わる仕事だし、報酬を思ったら初期装備はこのくらいでいいだろう。持ち込める食料の量にも限度はあるし、それも確認してある程度アイテムや素材が集まったら一旦引き返して、また整え直せばいいからな。

「いや。随分な美人さんと冒険するんだな。」
「だからだろ。」
「そりゃそうだ。こんな綺麗な見た目で一人で街やモンスターの巣なんてうろついたら危ないもんな。」
「ありがとう。ええと。ここで一番いい武器と防具を頂戴。特殊加工がある奴もあったら教えてほしいな。」
「へっ?」
「い、いやあ。そんなでけえ仕事なのかお前?」
「い、いや。中にうろついているモンスターとかの類だと。そういうことはなさそうなんだが……。」
「あとマジックアイテムでブースター系を全部見せて。」

 マジックアイテムの中でも威力を倍増させるものはブースターと呼ばれている。威力を倍増させるものだがそれは戦闘用から軍事用まで幅広い。

「ステラお前、まさか魔族とやり合うっていうんじゃ……。」
「い、いや魔族なんて無理だって! この人と俺一人で、ガードなんてしたらハチの巣にされる。」

 相手は徒党を組んでこちらを襲撃してくる魔族だ。俺みたいなレベルの人間が相手になるはずはない。

「ええとね。ここの国はマジックアイテムと装備が充実しているから買い揃えておきたいの。これは協力報酬と前払い分の装備費用とは関係なくて。私のコレクションね。」
「ああ。」
「よその国から来た人か。」
「私、錬金術もしているって言ったでしょ? アイテムを見るとどうしてもね。」
「なるほどな! それなら見ていってくれよ。」

 俺と武器屋の親父で納得する。アイテムにはコレクターという人種がいて。装備を買って自分のコレクションにしておくのはそう珍しいことじゃなかった。

「ええと。どういうのがある?」
「ああ、そうだな。
 いざって時に魔力を貯めておけるのと。そいつが付けているのとはずいぶん違うがな。
 あとは特定属性の威力増幅。複数の属性に対応しているのもあるがこっちはその分値段は張る。
 あとは軍事用のハイスペックのがあるが、お姉さんが欲しいのはこういうのかな?」
「そうね。なるべくいいのが欲しいかな。」
「金払いが随分といいな! いいぜ。買ってってくれよ。」
「はーい。」
「え、ええと。俺たちが行くのって、魔軍とかそういうのじゃないですよね?」

 先ほどからの買いっぷりの良さに不安になった俺は確認した。

「うーん。君でも大丈夫なはずだよ? じゃなきゃ雇わないもん。」
「で。ですよね……。」
「どこなんです? 行くところは。」
「この先にある四角いピラミッドのところ。
 観光地としてお客さんを集めていたらしいんだけどモンスターが出てくるようになったから。
 巣にされる前に駆除してくださいって言う。そういう依頼だったはずだけど。」
「ああ。軍に依頼するまでもない仕事か。」

 モンスター。野生生物だが人に襲い掛かるのは俺たちはそう呼んでいる。そういう簡単な駆除の類なら仕事を貰える訳だ。

「おやじ、あとは食料とキャンプセットだ。」
「ああ。水ならその辺から溢れるぐらいにあるからな。」

 アルバビリディ王国は街中にまで水路と川、泉があるほど水資源は豊富である。見た目の美しさも相まっているのはそれだけじゃなく、空と溶け込んだような青と白の広がる景色に映えるようにオアシスや温泉もあるから、観光客がガイド兼ボディガードを雇って来るぐらいだ。

「よし、買い物はこのくらいにして。宿屋にでも行こうか。その後がご飯ね。」
「はい。」

 宿屋。恐らくそこで買い込んだアイテムの整理をして、それから飯になるのだろう。

「じゃあな、おやじ。」
「ああ。いい客、見つけたじゃねえか。また来て貰えるようにしろよ。」
「あはは。ありがとー。」

 上機嫌なおやじに手を振られ、その場を後にした。
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