桜の散る頃に

白石華

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青葉の茂る頃に

山さん藤さんの解説

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「よし。じゃあまず一つ一つ説明していくか。」

「最初からそうしてください。」

 山の神様の言葉に珍しくホノカちゃんが厳しい口調で言う。

「ゴメンね、ホノカ。先走った。」

 藤さんも謝っている。本当に神様と妖精なんだろうか。とても庶民的である。

「まずホノカが人間になれることについて。」

「はい。サラッと言っちゃっていますけど重要事項ですよね。
 私、全・然、聞いていないですよ。」

「どうどうホノカ。山さんの話を聞こう。」

 藤さんって山の神様と親しげだな。

「えーっとだ。単刀直入に言うと、人間の住む世界に住んで、人間の食べる物を
 食べれば人間になれる。」

「え。」

 余りに単純な説明でホノカちゃんがポカンとなった。

「ただし、これには問題があってだな。」

「何ですか。教えてください。」

 山の神様の含むような言い方にホノカちゃんが食い付く。

「ホノカが人間になれても人間として振る舞えて、人間のしきたりを知らないと、
 完全に頭のおかしい人だと思われる。」

「……。」

 ホノカちゃんの目が点になった。

「ホノカは山で暮らしていたし、人間と全く関わらなかっただろ?
 フォローは茂さんだけじゃ無理だ。」

 いつの間にか俺も愛称で呼ばれている。

「ビスケットを貰ったぐらいじゃ妖精から人間にはならなかったみたいだし、
 もしなりたかったら暫くは茂さんの所に通って、
 人間の社会生活について学びつつ、できるかどうか様子を見るんだな。それから決めなさい。」

「……はい……。」

 ホノカちゃんが力なく頷く。確かに今のホノカちゃんって……まあいいや。

・・・・・・。

「次に茂さんに霊威を与えて神や妖精に近い存在になって貰うことについて。」

「……あの。」

 俺が重苦しそうに口を開く。

「よし、質問は何だい?」

「どうして、こういう話をする場所が温泉なんでしょうか。」

 場所は神様のいた社から変わって今、俺たちは神様たちと温泉に浸かっていた。

「いや、だって。お礼に温泉の場所を教えるって。
 これからの説明にも丁度いいし。」

「丁度いいって何がですか?」

「うん。ホノカと同じ事をすればいいだけさ。」

「はい?」

「だから、神や妖精が住むところに来て、
 神や妖精が食べているのを食べるっていう。
 ホノカと付き合っているんだから、詳しく説明しなくても大丈夫だろ?」

「へ?」

 ニヤニヤとこっちを見る神様と。

「ホノカに教えたのは私。」

 いつの間にか俺の隣に来た藤さん。

「茂樹さん、前にも言ったじゃないですか。」

 そんな俺の状況を見ても、何の動揺も見せないホノカちゃん。

「子作りだよ。今は行為だけ、だけどな。」

 山の神様がニカッと笑って言って俺に近寄る。

「え……ええーっ。あ、ああ”ーっ!?」

 驚く間もなく俺の絶叫が山に響いた。
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