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引き続き、クリスマスを満喫する二人
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「ありがとうございました。」
それから。チーズ入りプチフランスパンをお土産に買って、カフェから出て行った俺たちは再び周辺を散策することにした。
「あと回るのは、丘の中にある、お土産屋さんか美術館か、食べ物屋さんかな。」
俺たちが向かっているのは丘が公園になっていて、広い土地の中に美術館やレストラン、お土産売り場などがある場所だった。
「他に見るところってないんですか?」
「あとは……公園の外をぐるっと回ると、パン屋さんに、陶器のお店に。
個人経営のガラスとか民芸品とかのギャラリーがあるぐらいかな。」
「ほうほう。公園とパン屋さんと……。」
「そうだ。ミズキもクリスマスプレゼントって欲しくない?」
「さっき正さんにごちそうになりましたが。」
「そうじゃなくて。形に残る、プレゼント。ギャラリーや民芸品もあるからそこで。」
「……。」
ミズキはそわそわしている。
「やっぱりクリスマス飾りとか見たくなっちゃうんだ。
今年はクリスマスに間に合ったから見に行こうよ。」
「は、はいっ。」
まずは公園の中の土産物売り場から行ってみることにした。
「おお……クリスマスと、奥はお正月ですね。」
入ってすぐにある市内の有名店が作ったお菓子に、土産物がサンタやクリスマスツリーの置物の他に、煙突や鈴の形をした焼き物が置いてある。その奥には小さな部屋、一室と下階半分の吹き抜けのホールになっていて、らせん状のスロープに設置してある小さな台に正月用の置物がポンポンと置かれていた。
俺の市の特産品である焼物の稲里焼(いなりやき)だな。特に明確な基準や釉薬などはなく。ここ(稲里市)で焼き物を作れば、どんなものでも稲里焼きと認められる自由さと気軽さと、作るものは主に日用品という庶民的な受けの良さであっという間に広まった焼物だ。市内の食べ物屋やカフェなどにも稲里焼きは用いられ、市内で料理を出す際の見ものにもなっている。
「お正月飾りも買っていこうか。」
「正月……。」
ミズキは正月にも興味があるようだ。
「せっかくですからこの、狐のサンタクロース帽をかぶったブローチとか。」
「あ、かわいいね。この市ならではって感じ。」
「はい。狐のモチーフは私もよく見かけていたから。
まさか自分も手に取れる日が来るとは。」
ミズキは感慨深そうにしていた。ミズキって本当に今まで眺めるだけだったんだ。
「せっかくだからお弁当も見ていく?」
ここのお弁当はクルミ入りの稲荷寿司だった。もともとの伝承がクルミの森の中にある稲荷神社だったのが、この町の中心にある稲荷神社の元だったらしく、別名は胡桃稲荷神社と呼ばれ、胡桃入りの稲荷寿司があちこちにお土産として売られている。
「はいっ。」
ミズキはキリっとした表情で返事をした。
・・・・・・。
「吊るし雛のクリスマス版。」
「頭がクリスマスツリーになっていますね。」
小さな縫いぐるみが紐で何個も結って吊るされ、吊るし雛のような形でクリスマス人形が吊るされていた。
「これはクリスマスに吊るすとかわいいかな。」
「正さん。白いお皿に小さなサンタとトナカイのワンポイントが。」
「それもかわいいよね。こっちの箸置きは? 片方がサンタで、もう片方がトナカイ。」
「それもいいと思います。」
別のギャラリーでもサンタにちなんだ焼物が置いてあった。さすが日用品で、どんなものでも稲里焼きと扱うだけあって、置いてある焼物も種類が豊富である。中にはガラスの器や小物もあって、そちらにも工芸士がいるようだ。古民家の蔵のようなギャラリーと棚に現代的な器や置物が置いてあるのはモダンだった。
「じゃあ、ミズキ。大体見たいものは見た?」
「はい、どうされますか?」
「うん。この先は民芸品と陶器屋さんだけど、その先にパン屋さんもあるんだ。」
「パンって、パンですよね?」
「だけど野菜サンドとか、七面鳥のスモークとか。おかずやサラダ代わりになるのもあるよ。
クリスマスにちなんだイチゴのカスタードデニッシュとか。」
「イチゴ!」
ミズキはイチゴも反応するようだ。イチゴが食べられるのも限られる期間だし、ケーキで食べると美味しい。
「買ってく? イチゴ。」
「その前にパンと聞いて。まさかまた美味しい店では。」
「とにかく行こうか、ミズキ。」
「ああ……っ。」
ミズキの予感は的中して、まさにその通りだったのだが、もちろんミズキは選べなくて目移りしていた。
「ま、正さん。サンドイッチだけで何種類もありますよ。」
「菓子パンや総菜パンもあるよ。」
「おおお……何という。」
ちょっと前まで暮らしていたからか、ミズキがここまで反応してくれるとは思わなかったため、俺は浮かれていたような気もする。
(明日は、稲荷神社周辺か……。)
また前回みたいにクリスマス飾りは取られていると思うけど、回れるところは案内してあげようと思った。
それから。チーズ入りプチフランスパンをお土産に買って、カフェから出て行った俺たちは再び周辺を散策することにした。
「あと回るのは、丘の中にある、お土産屋さんか美術館か、食べ物屋さんかな。」
俺たちが向かっているのは丘が公園になっていて、広い土地の中に美術館やレストラン、お土産売り場などがある場所だった。
「他に見るところってないんですか?」
「あとは……公園の外をぐるっと回ると、パン屋さんに、陶器のお店に。
個人経営のガラスとか民芸品とかのギャラリーがあるぐらいかな。」
「ほうほう。公園とパン屋さんと……。」
「そうだ。ミズキもクリスマスプレゼントって欲しくない?」
「さっき正さんにごちそうになりましたが。」
「そうじゃなくて。形に残る、プレゼント。ギャラリーや民芸品もあるからそこで。」
「……。」
ミズキはそわそわしている。
「やっぱりクリスマス飾りとか見たくなっちゃうんだ。
今年はクリスマスに間に合ったから見に行こうよ。」
「は、はいっ。」
まずは公園の中の土産物売り場から行ってみることにした。
「おお……クリスマスと、奥はお正月ですね。」
入ってすぐにある市内の有名店が作ったお菓子に、土産物がサンタやクリスマスツリーの置物の他に、煙突や鈴の形をした焼き物が置いてある。その奥には小さな部屋、一室と下階半分の吹き抜けのホールになっていて、らせん状のスロープに設置してある小さな台に正月用の置物がポンポンと置かれていた。
俺の市の特産品である焼物の稲里焼(いなりやき)だな。特に明確な基準や釉薬などはなく。ここ(稲里市)で焼き物を作れば、どんなものでも稲里焼きと認められる自由さと気軽さと、作るものは主に日用品という庶民的な受けの良さであっという間に広まった焼物だ。市内の食べ物屋やカフェなどにも稲里焼きは用いられ、市内で料理を出す際の見ものにもなっている。
「お正月飾りも買っていこうか。」
「正月……。」
ミズキは正月にも興味があるようだ。
「せっかくですからこの、狐のサンタクロース帽をかぶったブローチとか。」
「あ、かわいいね。この市ならではって感じ。」
「はい。狐のモチーフは私もよく見かけていたから。
まさか自分も手に取れる日が来るとは。」
ミズキは感慨深そうにしていた。ミズキって本当に今まで眺めるだけだったんだ。
「せっかくだからお弁当も見ていく?」
ここのお弁当はクルミ入りの稲荷寿司だった。もともとの伝承がクルミの森の中にある稲荷神社だったのが、この町の中心にある稲荷神社の元だったらしく、別名は胡桃稲荷神社と呼ばれ、胡桃入りの稲荷寿司があちこちにお土産として売られている。
「はいっ。」
ミズキはキリっとした表情で返事をした。
・・・・・・。
「吊るし雛のクリスマス版。」
「頭がクリスマスツリーになっていますね。」
小さな縫いぐるみが紐で何個も結って吊るされ、吊るし雛のような形でクリスマス人形が吊るされていた。
「これはクリスマスに吊るすとかわいいかな。」
「正さん。白いお皿に小さなサンタとトナカイのワンポイントが。」
「それもかわいいよね。こっちの箸置きは? 片方がサンタで、もう片方がトナカイ。」
「それもいいと思います。」
別のギャラリーでもサンタにちなんだ焼物が置いてあった。さすが日用品で、どんなものでも稲里焼きと扱うだけあって、置いてある焼物も種類が豊富である。中にはガラスの器や小物もあって、そちらにも工芸士がいるようだ。古民家の蔵のようなギャラリーと棚に現代的な器や置物が置いてあるのはモダンだった。
「じゃあ、ミズキ。大体見たいものは見た?」
「はい、どうされますか?」
「うん。この先は民芸品と陶器屋さんだけど、その先にパン屋さんもあるんだ。」
「パンって、パンですよね?」
「だけど野菜サンドとか、七面鳥のスモークとか。おかずやサラダ代わりになるのもあるよ。
クリスマスにちなんだイチゴのカスタードデニッシュとか。」
「イチゴ!」
ミズキはイチゴも反応するようだ。イチゴが食べられるのも限られる期間だし、ケーキで食べると美味しい。
「買ってく? イチゴ。」
「その前にパンと聞いて。まさかまた美味しい店では。」
「とにかく行こうか、ミズキ。」
「ああ……っ。」
ミズキの予感は的中して、まさにその通りだったのだが、もちろんミズキは選べなくて目移りしていた。
「ま、正さん。サンドイッチだけで何種類もありますよ。」
「菓子パンや総菜パンもあるよ。」
「おおお……何という。」
ちょっと前まで暮らしていたからか、ミズキがここまで反応してくれるとは思わなかったため、俺は浮かれていたような気もする。
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