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狐のお屋敷
豊の変化
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「昨日ぶり……ですね。」
「うむ。確かに気迫が変わっている。」
お互い、変化をした状態で社の中にある道場っぽい場所に揃ったのだが。纏っている気と言うか構えと言うか、本人から発せられる気迫のようなものが昨日とは段違いになっていた。
「私も力を……ここまで宿すつもりはなかったのですが……。
小梅からの協力を無碍には出来ませんからね。」
「僕から説明すると、小梅っていうのは豊に憑いている狐のことね。
今の正宗みたいに、狐が人に力を授けたと思ってくれればいいかな。」
「豊は……今までずっと後継ぎとして小梅と育てられてきた。
急に変える事など……そう簡単には受け入れられない。」
豊さんの言葉に雷蔵爺さんが説明して、更に小梅と思わしき狐の霊が喋っている。
「それでも豊に憑いている霊は今は儀礼向け……と言うか、ここは農業都市だから。
農業の儀礼向けの霊なんだけど力が無いわけじゃないから甘く見ない方がいいよ。正宗。」
「爺さん。見る気はないし、俺が戦う理由は……理由だってない。」
「うん……まあそうなんだけどさ。力を見せてくれないと……今後の事があるからね。」
「ああ。力を出して、戦えって事だろう?」
「そういう事。じゃあ、始めて貰おうか。」
爺さんが言うと稽古場のような場所の真ん中に立ち、俺たちを向かい合わせようとするため、その通りに移動していく。
「練習試合では受けられましたが……今度はどうでしょう。」
山桜桃さんが憑いた状態で俺に話しかける。
「山桜桃さん。どのくらい変化したんだ?」
「まだ分かりませんが……あの狐も、土着神ぐらいの力は持っていそうです。」
「互角と思った方がいいのか。」
「はい……昨日と今日と、正宗さんと私、胡桃にどれだけ力が増したかですね。」
「うむ……段々、自体がオオゴトになってきているのだが。」
「私もです。とりあえず、技を出していきましょう。」
「うむ。それはそっちに任せたぞ。」
俺と山桜桃さんの話が終わると雷蔵爺さんも確認したようだ。
「話はこのくらいでいいかな。では両者、構え! ……始め!」
「正宗、まずはこっちから仕掛けるぞ!」
爺さんが声を出すと胡桃が自然発火で狐火を起こす!
「狐火!」
ドウンッ!
胡桃が豊さんの回りに炎柱を上げたのだが……。そのまま大きな渦になって辺りに炎が渦巻いていく!
ゴオオオオオ……っ!
「やったのか?」
「違う、私はこんなに力を出していない! これは……。」
「これは……なんだ?」
「私の力を利用して……相手の力になっている!」
「うん?」
胡桃の言葉が一瞬、捉えきれないと思っていると。
「百花……繚乱!」
豊さんの声が聞こえたと思ったら、火柱の中に渦巻く風と……大量の花が見える。
「炎は風と空気の力で外側に出し、花で燃やせば……こうなります。」
触媒が景気よく燃えているのか。風と炎が増しながらじりじりと近づき、豊さんの声が聞こえてくる。
「胡桃、このままだとヤバそうな気がするぞ!」
「ああ。だが、どうすればいいんだ?」
「どうすればって……山桜桃さん?」
「いえ、これは……消そうと思っても氷や水を出したらもっと大変なことに。」
「ああ。嵐になって帰ってくるのか。もしくは氷のつぶてに。」
「そういう事です。しかしどうしましょう。あとは地震ぐらいしか。」
「うむ。それも泥か土粒か何かになりそうで、厭な予感がするからやめておこう。」
「完全にカウンターですね。一体どうすれば。」
俺と胡桃と山桜桃さんでオロオロしながら話していると。
「話はそこまでですか。では遠慮なく!」
「!」
豊さんは攻撃目標を胡桃にして向かって行く!
「悪くは思わないでください。あなたを先に仕留めれば、この戦いは終わりだ!」
「う……っ。」
炎に囲まれた状態で豊さんが胡桃に炎の柱を当てようとする!
「ま、待て、止めろ!」
「正宗さん!? あなたまでそっちに行ったら!」
俺は胡桃の方へ無我夢中で走って行き……。
「胡桃に手を触れるな! 俺は、胡桃を……好きにさせるって言ったんだ!」
「「うっ!?」」
その場にいた豊さん、爺さん、山桜桃さん(憑依していたから多分だが)が口の中に砂糖の塊を投げ込まれたような表情と声になる。
「こ、殺しはしません、戦闘不能にするだけ……。」
「それも許さんと言っているだろう!」
胡桃に向かって手を伸ばそうとしたとき……。
グオオオオオッ!
「えっ!?」
俺は唖然とする。そのまま……俺の手とは違う……黒い、鋭い爪のような、獣のような手が伸びていき……豊さんに直撃する。
ズドオオオンッ!
「ぐあああっ!」
そのまま場外まで吹っ飛んでいき、豊さんは倒れてしまう。
「どうやら……正宗の力は。そっちの可能性も出ちゃったか。土着神だとバランスがね……。」
「う。うう……っ。」
確認したように俺に向かって行く爺さんと、その場から倒れたまま動けなくなっている豊さん。
「じ、爺さん。俺は一体、どうなったんだ……。」
俺は一体、何が起こったのかサッパリだった。
「見ての通り、ここで修行して貰わないとまつろわぬ神になる可能性があるって事だよ。」
爺さんはそれだけ言うと、豊さんを介抱するために向かった。
・・・・・・。
「この都市、全体がまつろわぬ神を封印した場所になっているだと?」
「そういう事。だからね、ここにはスサノオやツクヨミ、三日月神……。
あと他の神の力を借りて。都市全体を霊場にすることで、力を分散させているんだ。」
「調伏させられなかったのか?」
「大きすぎちゃったんだね、力が。」
「そんな簡単に。」
「ああ。仕方ないだろう。だから、漏れ出た力や霊場の影響で。
ここの人間に悪い影響が出ないか監視対象になっているんだよ。」
「何でそれを先に言わない。」
「この目で確認するまではむやみやたらに人に言う事じゃないからさ。」
「ふうん……。」
豊さんを社務所らしきところに連れて行ったあと、再び神社の中で俺と爺さんが話していた。
「豊さんは大丈夫なのか?」
「ああ、それは治癒させておくから気にしないように。それとだね。
さっきも言ったように、正宗は修行を受けて貰わないとまつろわぬ神になる。」
「それはまた難儀な。」
「狐と結婚するんだろう? じゃあしないと。」
「そうだな。それでは致し方ない。」
俺は雷蔵爺さんの言葉に大きく頷いた。
「そっちがどうするつもりなのかは好きにすればいいけど修行はしてね。」
「ああ。しかし。ますます豊さんが不憫じゃないか?」
「う~ん……そうなんだけどさ、どうせなら、暫く二人で修行していなよ。」
「えっ。」
「もちろん、家の事とかガイドの事とか、やっていていいからさ。」
「切羽詰まっているのか呑気なのか、はっきりしてくれ爺さん。」
「修行に来てくれればいいんだってば。」
何のかんので、俺と豊さんはお互いに切磋琢磨する関係になってしまった。
「うむ。確かに気迫が変わっている。」
お互い、変化をした状態で社の中にある道場っぽい場所に揃ったのだが。纏っている気と言うか構えと言うか、本人から発せられる気迫のようなものが昨日とは段違いになっていた。
「私も力を……ここまで宿すつもりはなかったのですが……。
小梅からの協力を無碍には出来ませんからね。」
「僕から説明すると、小梅っていうのは豊に憑いている狐のことね。
今の正宗みたいに、狐が人に力を授けたと思ってくれればいいかな。」
「豊は……今までずっと後継ぎとして小梅と育てられてきた。
急に変える事など……そう簡単には受け入れられない。」
豊さんの言葉に雷蔵爺さんが説明して、更に小梅と思わしき狐の霊が喋っている。
「それでも豊に憑いている霊は今は儀礼向け……と言うか、ここは農業都市だから。
農業の儀礼向けの霊なんだけど力が無いわけじゃないから甘く見ない方がいいよ。正宗。」
「爺さん。見る気はないし、俺が戦う理由は……理由だってない。」
「うん……まあそうなんだけどさ。力を見せてくれないと……今後の事があるからね。」
「ああ。力を出して、戦えって事だろう?」
「そういう事。じゃあ、始めて貰おうか。」
爺さんが言うと稽古場のような場所の真ん中に立ち、俺たちを向かい合わせようとするため、その通りに移動していく。
「練習試合では受けられましたが……今度はどうでしょう。」
山桜桃さんが憑いた状態で俺に話しかける。
「山桜桃さん。どのくらい変化したんだ?」
「まだ分かりませんが……あの狐も、土着神ぐらいの力は持っていそうです。」
「互角と思った方がいいのか。」
「はい……昨日と今日と、正宗さんと私、胡桃にどれだけ力が増したかですね。」
「うむ……段々、自体がオオゴトになってきているのだが。」
「私もです。とりあえず、技を出していきましょう。」
「うむ。それはそっちに任せたぞ。」
俺と山桜桃さんの話が終わると雷蔵爺さんも確認したようだ。
「話はこのくらいでいいかな。では両者、構え! ……始め!」
「正宗、まずはこっちから仕掛けるぞ!」
爺さんが声を出すと胡桃が自然発火で狐火を起こす!
「狐火!」
ドウンッ!
胡桃が豊さんの回りに炎柱を上げたのだが……。そのまま大きな渦になって辺りに炎が渦巻いていく!
ゴオオオオオ……っ!
「やったのか?」
「違う、私はこんなに力を出していない! これは……。」
「これは……なんだ?」
「私の力を利用して……相手の力になっている!」
「うん?」
胡桃の言葉が一瞬、捉えきれないと思っていると。
「百花……繚乱!」
豊さんの声が聞こえたと思ったら、火柱の中に渦巻く風と……大量の花が見える。
「炎は風と空気の力で外側に出し、花で燃やせば……こうなります。」
触媒が景気よく燃えているのか。風と炎が増しながらじりじりと近づき、豊さんの声が聞こえてくる。
「胡桃、このままだとヤバそうな気がするぞ!」
「ああ。だが、どうすればいいんだ?」
「どうすればって……山桜桃さん?」
「いえ、これは……消そうと思っても氷や水を出したらもっと大変なことに。」
「ああ。嵐になって帰ってくるのか。もしくは氷のつぶてに。」
「そういう事です。しかしどうしましょう。あとは地震ぐらいしか。」
「うむ。それも泥か土粒か何かになりそうで、厭な予感がするからやめておこう。」
「完全にカウンターですね。一体どうすれば。」
俺と胡桃と山桜桃さんでオロオロしながら話していると。
「話はそこまでですか。では遠慮なく!」
「!」
豊さんは攻撃目標を胡桃にして向かって行く!
「悪くは思わないでください。あなたを先に仕留めれば、この戦いは終わりだ!」
「う……っ。」
炎に囲まれた状態で豊さんが胡桃に炎の柱を当てようとする!
「ま、待て、止めろ!」
「正宗さん!? あなたまでそっちに行ったら!」
俺は胡桃の方へ無我夢中で走って行き……。
「胡桃に手を触れるな! 俺は、胡桃を……好きにさせるって言ったんだ!」
「「うっ!?」」
その場にいた豊さん、爺さん、山桜桃さん(憑依していたから多分だが)が口の中に砂糖の塊を投げ込まれたような表情と声になる。
「こ、殺しはしません、戦闘不能にするだけ……。」
「それも許さんと言っているだろう!」
胡桃に向かって手を伸ばそうとしたとき……。
グオオオオオッ!
「えっ!?」
俺は唖然とする。そのまま……俺の手とは違う……黒い、鋭い爪のような、獣のような手が伸びていき……豊さんに直撃する。
ズドオオオンッ!
「ぐあああっ!」
そのまま場外まで吹っ飛んでいき、豊さんは倒れてしまう。
「どうやら……正宗の力は。そっちの可能性も出ちゃったか。土着神だとバランスがね……。」
「う。うう……っ。」
確認したように俺に向かって行く爺さんと、その場から倒れたまま動けなくなっている豊さん。
「じ、爺さん。俺は一体、どうなったんだ……。」
俺は一体、何が起こったのかサッパリだった。
「見ての通り、ここで修行して貰わないとまつろわぬ神になる可能性があるって事だよ。」
爺さんはそれだけ言うと、豊さんを介抱するために向かった。
・・・・・・。
「この都市、全体がまつろわぬ神を封印した場所になっているだと?」
「そういう事。だからね、ここにはスサノオやツクヨミ、三日月神……。
あと他の神の力を借りて。都市全体を霊場にすることで、力を分散させているんだ。」
「調伏させられなかったのか?」
「大きすぎちゃったんだね、力が。」
「そんな簡単に。」
「ああ。仕方ないだろう。だから、漏れ出た力や霊場の影響で。
ここの人間に悪い影響が出ないか監視対象になっているんだよ。」
「何でそれを先に言わない。」
「この目で確認するまではむやみやたらに人に言う事じゃないからさ。」
「ふうん……。」
豊さんを社務所らしきところに連れて行ったあと、再び神社の中で俺と爺さんが話していた。
「豊さんは大丈夫なのか?」
「ああ、それは治癒させておくから気にしないように。それとだね。
さっきも言ったように、正宗は修行を受けて貰わないとまつろわぬ神になる。」
「それはまた難儀な。」
「狐と結婚するんだろう? じゃあしないと。」
「そうだな。それでは致し方ない。」
俺は雷蔵爺さんの言葉に大きく頷いた。
「そっちがどうするつもりなのかは好きにすればいいけど修行はしてね。」
「ああ。しかし。ますます豊さんが不憫じゃないか?」
「う~ん……そうなんだけどさ、どうせなら、暫く二人で修行していなよ。」
「えっ。」
「もちろん、家の事とかガイドの事とか、やっていていいからさ。」
「切羽詰まっているのか呑気なのか、はっきりしてくれ爺さん。」
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