【完結】猫になったら怖い上司の愛に気付きました

みやちゃん

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二人の生活について

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ナーバン様は私に話があると言ってディナーの後、誘われた。

久しぶりに猫の時一緒に過ごしたナーバン様の私室に入った。
ナーバン様の匂いがする。
少し前の事なのにすごく安心できる。
ホッと息をはく。
こんなに安らいだ気持ちになるのは久しぶりかもしれない。
猫の頃に戻りたい。
あんな1週間だけの生活だったのに。
涙がこぼれる。

「あなたの苦しみに気づかず申し訳なかった。これからの事を一緒に考えていこう。サーチェ嬢の思いを知りたい。」
優しい目でまっすぐ見つめられ、涙を拭われる。

その優しい眼差しと言葉に声を出して泣いた。
なかなか話し出すことができなかったが、ナーバン様は背中をさすりながら待ってくれた。

私は仕事を続けたい。
私は作ったご飯を食べたり、部屋の掃除をしたり洗濯したり自分の事は自分でしたい。
メイドや護衛など誰かがそばにいる生活が辛い。
宝石もドレスも好きじゃない。
思っている事をすべてはき出した。

「ごめんなさい、私‥この生活を続けてはいけないと思う。本当にごめんなさい。」

恐る恐るナーバン様に言った。

「そうか。」
ポツリと呟くように言った。
ナーバン様はショックを受けているようだ。
そうだろう。
ナーバン様は私のためにしてくれていたのに、それを私は全否定した‥

私はずっと考えていた。
こんなに価値観の違う者同士は結婚できないのではないかと‥
私よりナーバン様にお似合いの人などいくらでもいる。

私の中で答えは出ていた。
「ナーバン様、私達‥」
「サーチェ嬢の言いたい事はわかった。」
ナーバン様は私が言おうとしている事がわかっているのだろう。
言わせないように言葉を重ねた。

「だが、結論を出すのには早すぎる。私に改善案を出させてくれ。」

改善案‥仕事の時のようですよ‥
涙を流しながらも、ちょっと笑ってしまった。

ナーバン様はちょっと考える。
「安全上、外で住むのは無理だが、敷地内に小さな家を建てよう。そこに住むのはどうだろうか?」
公爵家ともなると誘拐や命を狙われる事もあるらしい。
特に女子どもは危ないので私の護衛は外せないし、外に住むのも難しいと言った。

「家の中は二人きりだ。一緒に色々と買いそろえていこう。そこにはメイド達は入れない。あなたの好きにしたらいい。」

「そんな事‥私覚えないといけないマナーとかがいっぱいあるのに。ご両親やメイドさん達にも悪い‥」

嫁が屋敷に住みたくないっていうのは良くない事だと私でもわかる。
メイドさん達は、私達が別で住む事によって彼らがやるべき仕事がなくなってしまう。

「マナーは私がフォローする。両親もメイド達の心配もいらないが、気になるなら半分ほどは屋敷で過ごそうか?平日なら仕事から帰るだけだから。週末はその家でゆっくり過ごそう。サーチェ嬢のご飯も食べてみたい。」
ナーバン様は笑っている。

少し真顔になり
「ただ、公爵家の行事などは最低限は出て欲しい。特に母はあなたに会うのを楽しみにしている。」
ナーバン様はこちらの様子をうかがっているのがわかる。

拒否する事もできるだろう。
だけど、ここまで私の希望を聞いてくれているのに、さすがにそんな事はできない。
それに、お義母様が楽しみにしてくれているのは正直うれしい。
平民との結婚に許してくれたご両親のためにも恥をかかせる事だけはやりたくない。

「ナーバン様はそれでいいの?私が耐えられないようにナーバン様もきっと耐えられないですよ?」

「あなたの思い浮かべる生活をした事がないからイメージはできないが、サーチェ嬢がいるだけで私は幸せだ。半分ずつならお互いにフェアだろう。」

ナーバン様は恐る恐る手を伸ばし、私を抱きしめる。

「だから、私から離れるような発言はしないでくれ。お願いだ。それ以外の事なら一緒に考えていくから。」

耳元でささやれる。
顔は見えないが、声が震えている。

ナーバン様‥

私も手をナーバン様の背中に回した。
しばらく沈黙の状態が続いた‥

いや、続きすぎだ。
いつまでこうやって抱き合っているの?
ゆうに10分は過ぎようとしており、私の限界がきた。

「ナーバン様?」
見てみるとナーバン様は固まっていた。

私の視線に気づいたナーバン様は顔を赤くしてブツブツ言いだした。
「サーチェ嬢と抱き合っているなんて‥夢ではないだろうか。いや、これ以上はダメだ。」
必死で何かを我慢していた。

「可愛い‥」
身分も歳も学歴も経験値も全て上のナーバン様を可愛いなんていうのは失礼だとわかっている。
だが、今目の前にいるナーバン様はとても可愛らしくて仕方がない。

私の可愛いという声が聞こえたようだ。
顔をさらに真っ赤にしてうつむいてしまった。
そんな所が可愛いですよ。
いたずら心がムクムクと出てきた。

「ナーバン様、少ししゃがんで目を閉じてください。」

「何故だ?」

「猫の時、許可なくキスした事のお返しを今します。私のファーストキスでした。」

「それはすまなかったな。だが、私が初めてでうれしい。」
ナーバンは目を閉じて少ししゃがんだ。

本当に綺麗な顔立ちをしている。
まつげが長い、髪もサラサラ。
世の中の女性達が騒ぐのがわかる。

私に髪や頬を触られピクリとナーバン様は反応する。
「サーチェ嬢‥」と小さな声で呼ぶ。

あぁ、可愛らしい。
指で唇をなぞる。

そして私も目を閉じ、右頬に手を添えて唇と唇を重ねた。

ナーバン様は驚いて目を開けた。

「サーチェ嬢!」

「サーチェとお呼びください。妻となるのですから。ファーストキスのお返しです。」
いたずらっ子のような笑顔を向ける。

ナーバン様の目が潤んでいる。
この人はこんなに感情豊かな人なんだ。

ナーバン様はギュと抱きついてきた。
「あぁ、なんて幸せなんだ。サーチェがそばにいるなんて‥」

ナーバン様からも口づけされる。
これ以上は理性がもたないとまたブツブツ聞こえてきた。
そういう割にはその行為を止めようとしない。
私もだんだん歯がゆくなってきた。

「ナーバン様ならいいですよ。」

「‥‥」

ナーバン様から返答がない。
私の言ってしまった事に恥ずかしくなった。
顔が赤くなっているのが自分でもわかる。

「すいません、忘れてください!」

離れようとすると無言でギュッと抱きしめられ、熱いキスに変わっていった。





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