【完結】猫になったら怖い上司の愛に気付きました

みやちゃん

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ナーバンは気づかない(ナーバン視点)

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どうしたのだろう。
日に日にサーチェ嬢の元気が無くなっていく。
護衛からの報告も問題がありそうなものはない。
嫌がらせも、もうないはずだが‥

私が気づかない間にまた何かしたのかもしれない。
最近浮かれていた自覚がある。
私との結婚がそんなに嫌なのだろうか?
どうしたら喜んでもらえる?
一度、やらかしている私は混乱するばかり。
きっと何か不満があるのだろう。

彼女の笑顔が見たいのに。
前は怯えてはいたが、それでも表情はあった。
今はもう表情がないと言っても過言ではないくらい憔悴しているように見える。
話を聞こうとしても何もないとしか答えない。
改善案が見出せないまま、時間だけが過ぎていく。

私には相談できる人が‥いない。
今までは仕事以外の人間関係など必要ないと思っていたが、間違いだと気づいた。




アミルダはハァと大きなため息をつく。
「バカですね、ナーバン様」

サーチェ嬢に聞いてもはぐらかされる為、アミルダ嬢に恥をしのんで相談した。
サーチェ嬢が親友だと言っていたし、何か相談しているかもとの下心もあった。

事の経過を一通りアミルダ嬢に説明した。
私の主観でしか話せていなかったが、アミルダ嬢は原因に行き当たったようだ。

「バカ?」
生まれて初めて言われた言葉にショックを受ける。

「王城で平民が採用される倍率は貴族と比べてどのくらいか知っていますか?」

「?平等ではないのか?仕事のできに貴族も平民もないだろう。」

「いえ、平民は基本的に採用されません。勉強ができる環境になく学力が少ないのが大きな理由ですが、同点数なら確実に貴族が採用されますし、例え貴族より良い点でも有力貴族がいれば、そちらが採用されます。」
アミルダ嬢は思う所があるらしく苦笑いをする。

「あぁ、あなたはジールベル侯爵令嬢だったか。」
縁故採用なのだろうか。
魔導師として優秀だと聞いていたが‥。

「特に令嬢が王城で働くのは出会いを求めてです。王城はエリートと出会える場ですから、どの家も使えるコネを使いまくります。」

知らなかった。
だから、あんなにギラギラした令嬢ばかりいたのか。
仕事もできないと思っていたが、すぐに辞めることが前提にあれば、仕事を真剣にするつもりはないのだろう。

「サーチェは20年ぶりに平民から採用されたのですよ。一人だけ試験結果が飛び抜けていたと聞いています。貴族の反感も多かったので、ナーバン様の所に配属されました。あなたは身分で差別などしないでしょう。」

アミルダ嬢は王城内の情報を多く持っており、現状を教えてくれた。

仕事ができれば身分など気にする必要はない。
派閥争いも足の引っ張り合いも煩わしく、どうでもよかった。
公爵家という身分もあり、皆ほっといてくれたので楽だったし、自分から情報を得る事もしなかった‥
その手の話から完全に離れていた事に気づいた。

「サーチェは人以上の努力をして今の立場にいます。自立して生きています。ナーバン様の圧には負けていましたが、ナーバン様も優秀すぎてサーチェに求めすぎたでしょう?ナーバン様の求める事に応えられないと悩んでましたが、新人が受け持てる以上の内容で驚きました。」

サーチェ嬢は確かに優秀だ。
こちらが期待した以上のものを返してくる。
だからこそ、報告してもらうのが楽しみで色々と無理も言った。
新人教育など無視して頼っていた。
アミルダ嬢には全てお見通しのようだ。

「そもそも、ドレスや宝石を与えればいいと思ってません?ナーバン様がサーチェに良かれと思ってしている事は、あなたの嫌いな令嬢が喜ぶ事ですよ。サーチェはそんな物が欲しくてあなたの求婚に応えた訳ではないはずです。平民であるサーチェに貴族の考え方を強制しますか?」

アミルダ嬢に返答する事ができなかった。
サーチェ嬢には仕事を辞めてもらおうと思っていたからだ。
無理して働く必要はないし、何より他の男達と関わって欲しくない。
私には守ってやれるだけの力と財力もある。
いくらでも望む物はあげられる。
仕事などしなくても良いと‥
その考えはどれだけ傲慢だったのだろう。

それはサーチェ嬢が望んだことなのか?
浮かれまくって用意したドレスや宝石をサーチェ嬢はどんな目で見ていた?
食事の際、どんな顔をして食べていた?

私は対応を間違ったのか‥

「サーチェ嬢は何を望んでいるのだろうか。」
私はうなだれた。

「それは私に聞くことではないですね。二人で何を望んでいるのか、どうやって生きていきたいのかを話し合ってはどうですか?二人で折り合いをつけていかないといけません。元々ナーバン様とサーチェは住む世界が全く違うのですから。」
ニッコリと笑うアミルダ嬢。

そうだ、私が向き合わなければならないのはサーチェ嬢だ。
押し付けるのではなく、これからどんな風に生きていきたいのか一緒に話し合わなければならない。
そうでないと私は幸せになれてもサーチェ嬢を幸せにはできない。

王城内の噂話に疎い私ですら、アミルダ嬢の事は耳に入っていた。
確かに素敵な女性だ。
こんな人がサーチェ嬢の味方である事に感謝した。
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