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ナーバン様のお部屋で (2)

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うん、最初からナーバン様の弱みを握る事なんか無理だったんだ。
私の方の精神的ダメージが大きい。

もう引きあげようかな。
うん、もうこれ以上は無理‥
精神的に限界を迎えていた。
もう残り6日間はストレスなく過ごそう。

美味しいものを食べてのんびり公園でも行こう。
うん、そうしよう。
そして、来週からまた、頑張ろう。

そう決めた私は、ナーバン様の胸から地面に跳び下りる。

猫の体から見たら結構な高さがあったが、衝撃もなく着地。
猫ってこの高さなんともないんだ。

トコトコと入ってきた入り口に向かう。

「ニャー」
鳴いて扉をカリカリと引っ掻く。
開けてとお願いしているのは伝わるだろう。

「‥出て行きたいのか?」
ナーバン様は私に聞く。
うん、普通に猫と会話しようとしてますね。

「ニャー」
出たいというのを肯定するように鳴く。
もうここにいるのは限界です‥

「‥‥」
ナーバン様は無言で私を見つめる。

「ニャー」
もういいから早く出して。
早くここを離れたいのに。
またカリカリと扉を引っ掻く。
傷つけないように加減して引っ掻くのなかなか難しいんだよ?
傷をつくる前に早く出して。

無言でナーバンが近づいてくる。
しゃがみこんで私をまた抱きおこす。

「まだここにいてくれ。お願いだ。貴方にそばにいてほしい。」
ギュッと抱きしめられる。

えっ?
お願い?ナーバン様が猫にお願い?
おかしくない、猫相手に。
恋人にいうようなセリフまで言ってるし。
この人本当に猫に惚れているの?

私は今からアミルダの所に行って元に戻してもらうんです。
もう限界です。

「ニャー」
放して。

ナーバン様は抱きしめて放そうとしない。

「ニャーニャー」
放してって言ってるのに!

ナーバン様の胸の中で暴れる。
その拍子に私の爪がナーバン様の手を引っ掻いてしまった。

血は出てないけど、引っ掻かれた所がミミズ腫れになっている。

怪我させた!

そんなつもりなかったの!
あぁ、言葉が伝わらない!

ナーバン様は手を見つめて悲しそうにしている。

ごめんなさい‥

そんな言葉も猫では言えない。

ミミズ腫れの部分をペロッと舐めた。
ナーバン様は許してくれるだろうかとゆっくり頭をあげる。

「‥」
ナーバン様は無言だ。
だが、目は見開き、顔を真っ赤にしていた。
私の視線に気づいたからか顔を横に背け、私から見えないように顔を隠した。

何?
ナーバン様が真っ赤?
猫に手を舐められてどうして、そんなに照れているの?

この人、本当に大丈夫?
猫に惚れたなんて言わないでしょうね?

初めてみるナーバン様の様子に私の混乱は大きくなっていく。
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