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「ちょっと、その体じゃ歩くのは無理よ。医者のいう事は聞きなさい!」
ミルアージュはルービオを支えながら怒鳴る。
「…そのセリフ、そのままミアに返したい。すぐに無理をするくせに。」
2人の後ろでクリストファーがボソッとつぶやく。
ミルアージュが睨むとクリストファーはすぐに目を逸らした。
「私はこんなに無茶はしないわ。」
「いや、ミアは無茶しかしてないぞ。自分を後回しにするところなんかそっくりだ。幸福の力の時だって死にかけてたの黙っていただろう?」
目を逸らしながらもクリストファーは答える。
そう言われると何も言い返せない。
そうか…誰かに似ているのかと思ったら私なのか。
私も人から見たらこんな風に無理をしているのだろうか?
ルービオはクリストファーとミルアージュの会話を無視して先に進もうとする。
ミルアージュはハァーとため息をつき、ルービオに付き合う事に決めた。
「もう、わかった。どこに行くつもりなの?連れていってあげるわ。」
「ありがとうございます…私の家に向かいます。」
ルービオは青ざめた顔でニコリと笑った。
ミルアージュにもたれながらルービオの足はプルプルと震えながら一歩ずつ前に進む。
その瞬間、フワッとルービオの体が持ち上がった。
クリストファーがルービオをお姫様抱っこで抱えたのだ。
「これじゃいつまでも辿り着かない。方向だけ言え。」
クリストファーのイライラした声が響く。
「あっはい、そのまま真っ直ぐお願い致します。」
ルービオはお姫様抱っこをされるのは初めてなのだろう。
男として育てられていれば、そのように抱きかかえられる機会などない。
青白かった顔が今度は真っ赤になり、下を向いた。
ミルアージュがルービオを女性だと言ったとはいえ、クリストファーがルービオをお姫様抱っこという女性の扱いをした事にミルアージュは胸がチクリと痛んだ。
「?」
どうして?
クリストファーはルービオを助けているだけ。
それなのにどうしてこんなにモヤモヤするんだろう。
ミルアージュ自身もその胸の痛みの理由がわからなかった。
「ミア?どうした?」
クリストファーはミルアージュがついてこないことに気づいて足を止めた。
「何でもないわ。ごめんなさい。」
ミルアージュはクリストファー達の元に駆け寄る。
そんなミルアージュをクリストファーは怪訝そうな顔で見つめた。
「体調が悪いのか?」
「ううん、大丈夫。」
そう、体調は悪くない。
なのにこのモヤモヤはなんだろう。
「だから、早く行きましょう。」
ミルアージュはクリストファーの背中を押した。
今のモヤモヤした顔を見られたくはなかったから。
「ここか?」
街の中心部をはずれ、しばらく歩くと貧困層と思われる建物が続くところに出た。
ボロボロに壊れ、雨風を防ぐという家としての機能を果たしていない。
先ほどの市場とそれほど離れていない。
それなのに…
中心部の発展している街と対照に薄気味悪い静けさと活気なく座り込んでいる人々にミルアージュの表情は曇る。
「はい。中に人がいますので呼んでください。」
小さな小屋の前にクリストファーと抱きかかえられたルービオがいる。
ミルアージュはトントンと扉をノックする。
扉がギィと音を立てて開くと中から女性と兵士の格好をした男性が出てきた。
「ルービオ様!!?」
中の2人の声が重なり、ルービオに駆け寄った。
本当に心配しているのがわかる。
知らない男がルービオを抱きかかえているにも関わらず、2人ともルービオだけを見つめてオロオロとしていた。
「大丈夫だ、この方々に助けられた。」
ルービオは2人に言う。
ルービオの堂々とした弱さを出さないその態度。
人の上に立つ事に慣れているんだ…
だけど、正直強がっている場合ではないとミルアージュは思う。
「大丈夫じゃないでしょ?死ぬ事はもうないけど、完全には解毒できてないんだから。」
ミルアージュは呆れ気味に言う。
味方と思われる人たちにも本音を話さない、ルービオに少し苛立ちを感じていた。
「毒??なぜ、そのような事に!!」
「すまないが、ベットに連れて行きたいのだが。」
クリストファーの苛立ちはピークに達していた。
2人がクリストファーとルービオに前に立ちはだかって中に入れず、ルービオをベットに下ろすことができない事に苛立っていたのだ。
ルービオが重いというわけではない。
クリストファーは、ここに来るまでのミルアージュの言動がいつもと違うのが気になっていた。
早くミルアージュのそばに行きたい。
ルービオが邪魔でミルアージュの表情がクリストファーにはよく見えなかったが、声がいつもより低い気がしていた。
「申し訳ありません。こちらにどうぞ。」
クリストファーを小屋の中に入れた。
その後を表情が硬いミルアージュも付いていく。
ミルアージュはルービオを支えながら怒鳴る。
「…そのセリフ、そのままミアに返したい。すぐに無理をするくせに。」
2人の後ろでクリストファーがボソッとつぶやく。
ミルアージュが睨むとクリストファーはすぐに目を逸らした。
「私はこんなに無茶はしないわ。」
「いや、ミアは無茶しかしてないぞ。自分を後回しにするところなんかそっくりだ。幸福の力の時だって死にかけてたの黙っていただろう?」
目を逸らしながらもクリストファーは答える。
そう言われると何も言い返せない。
そうか…誰かに似ているのかと思ったら私なのか。
私も人から見たらこんな風に無理をしているのだろうか?
ルービオはクリストファーとミルアージュの会話を無視して先に進もうとする。
ミルアージュはハァーとため息をつき、ルービオに付き合う事に決めた。
「もう、わかった。どこに行くつもりなの?連れていってあげるわ。」
「ありがとうございます…私の家に向かいます。」
ルービオは青ざめた顔でニコリと笑った。
ミルアージュにもたれながらルービオの足はプルプルと震えながら一歩ずつ前に進む。
その瞬間、フワッとルービオの体が持ち上がった。
クリストファーがルービオをお姫様抱っこで抱えたのだ。
「これじゃいつまでも辿り着かない。方向だけ言え。」
クリストファーのイライラした声が響く。
「あっはい、そのまま真っ直ぐお願い致します。」
ルービオはお姫様抱っこをされるのは初めてなのだろう。
男として育てられていれば、そのように抱きかかえられる機会などない。
青白かった顔が今度は真っ赤になり、下を向いた。
ミルアージュがルービオを女性だと言ったとはいえ、クリストファーがルービオをお姫様抱っこという女性の扱いをした事にミルアージュは胸がチクリと痛んだ。
「?」
どうして?
クリストファーはルービオを助けているだけ。
それなのにどうしてこんなにモヤモヤするんだろう。
ミルアージュ自身もその胸の痛みの理由がわからなかった。
「ミア?どうした?」
クリストファーはミルアージュがついてこないことに気づいて足を止めた。
「何でもないわ。ごめんなさい。」
ミルアージュはクリストファー達の元に駆け寄る。
そんなミルアージュをクリストファーは怪訝そうな顔で見つめた。
「体調が悪いのか?」
「ううん、大丈夫。」
そう、体調は悪くない。
なのにこのモヤモヤはなんだろう。
「だから、早く行きましょう。」
ミルアージュはクリストファーの背中を押した。
今のモヤモヤした顔を見られたくはなかったから。
「ここか?」
街の中心部をはずれ、しばらく歩くと貧困層と思われる建物が続くところに出た。
ボロボロに壊れ、雨風を防ぐという家としての機能を果たしていない。
先ほどの市場とそれほど離れていない。
それなのに…
中心部の発展している街と対照に薄気味悪い静けさと活気なく座り込んでいる人々にミルアージュの表情は曇る。
「はい。中に人がいますので呼んでください。」
小さな小屋の前にクリストファーと抱きかかえられたルービオがいる。
ミルアージュはトントンと扉をノックする。
扉がギィと音を立てて開くと中から女性と兵士の格好をした男性が出てきた。
「ルービオ様!!?」
中の2人の声が重なり、ルービオに駆け寄った。
本当に心配しているのがわかる。
知らない男がルービオを抱きかかえているにも関わらず、2人ともルービオだけを見つめてオロオロとしていた。
「大丈夫だ、この方々に助けられた。」
ルービオは2人に言う。
ルービオの堂々とした弱さを出さないその態度。
人の上に立つ事に慣れているんだ…
だけど、正直強がっている場合ではないとミルアージュは思う。
「大丈夫じゃないでしょ?死ぬ事はもうないけど、完全には解毒できてないんだから。」
ミルアージュは呆れ気味に言う。
味方と思われる人たちにも本音を話さない、ルービオに少し苛立ちを感じていた。
「毒??なぜ、そのような事に!!」
「すまないが、ベットに連れて行きたいのだが。」
クリストファーの苛立ちはピークに達していた。
2人がクリストファーとルービオに前に立ちはだかって中に入れず、ルービオをベットに下ろすことができない事に苛立っていたのだ。
ルービオが重いというわけではない。
クリストファーは、ここに来るまでのミルアージュの言動がいつもと違うのが気になっていた。
早くミルアージュのそばに行きたい。
ルービオが邪魔でミルアージュの表情がクリストファーにはよく見えなかったが、声がいつもより低い気がしていた。
「申し訳ありません。こちらにどうぞ。」
クリストファーを小屋の中に入れた。
その後を表情が硬いミルアージュも付いていく。
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