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しおりを挟む「‥見捨てられたと思った。軍隊がきたのも制圧にきたのかと…苦しんで死ぬくらいなら苦しまずに死ぬ方が良いだろう?」
領主はミルアージュに向かって弱々しく言う。
「マカラック様、あなたは人々を導くべき存在です。」
ミルアージュは領主の名に敬称をつけているが、言葉はとても冷たかった。
言葉の中に怒りが含まれているのをその場にいた者達に伝わっていた。
「この世の中には、どうしようもないこともあります。しかし、導く者として皆を守るため、最大限の努力をするべきです。あなたは力を使う以外に何かしましたか?この地を守るために。」
ミルアージュは静かに諭すように領主マカラックに向かって言う。
「私には力以外なにもない。皆を守る力もないのに、こんな土地に皆はいてくれる。私のためにな。これ以上私のために苦しめることをしたくないのだ。」
マカラックは首を横に振る。
目には何も映していない。この領の人達と同じ目…将来に何の希望も持てない、そんな目をしていた。
努力もしていないのに皆で死のうなんて。
しかも勘違いとはいえ、交渉や支援に来た第三部隊を巻き添えにしようなんて。
人の上に上に立つべきマカラックの考えの甘さにミルアージュは腹を立てていた。
「‥わかりました。それがあなたの結論なのですね。」
ミルアージュは説得を諦めた。
いくら言っても無駄だ。
今回、アレンベールをどうしていくのかを相談していくつもりだった。
マカラック達にとって有利な条件で交渉結果もまとめるつもりだった。
だが…目の前のマカラックとは交渉など無意味だ。もう全てを諦めてしまっている。
フゥとため息をついた。
「ならば、私はあなたに罰を与えねばなりません。私達を全滅させようとしたあなたの行いは許されるものではありません。」
「わかっている。私が処刑されれば、ここの皆はやっと解き放たれる。自分では死ねないのだ…」
マカラックは、ホッと息をついた。
後ろで控えていた執事やメイドは顔の顔は青ざめている。
「恐れながら、それだけはお許しください!マカラック様は私たちにとって大切なお方です。マカラック様がいなければ生きてはいけません。」
執事が口をはさむ。
こんな場で執事が口をさはさむべきではないが、聞き捨てならない話に進んでいたのだ、命を覚悟して口を開いた。
「では、あなた方が代わりに罰を受けるのですか?」
ミルアージュは執事に聞いた。
「それでマカラック様が許されるならば、私達の命など惜しくはないです。」
執事はチラッと後ろを見た。
側仕え、メイド達は皆うなずいた。
「私の責任など取らなくてもいい!私にそなた達の命をかけるだけの価値はない。」
マカラックは叫んだ。
「あなたは私たちの全てです。存在してくださるだけで私たちは生きていけるのですよ。」
執事はマカラックをなだめるように言う。
「生きていけないから今のこの状況になっているのだろう!私にはもうお前達を守る力はない!」
ジッとその様子を眺めていたミルアージュが言葉を発した。
「マカラック様の行った罪をあなた方、そしてこの領土の皆で償っていただきます。三ヶ月の無償奉仕とします。処刑よりは役立つ使い道でしょう。」
フフフとにこやかに笑うミルアージュ。
「わかりました。皆の説得を致します。」
農耕期までならば、無償奉仕に取られても生活への影響は最小限で済む。
その条件は飲めないほどではないと執事は判断した。
「それと、あなた方は今後、自立しなさい。マカラック様に縋りすぎです。自分たちの主人に心中を覚悟させるくらい追い詰めてどうするのですか?心中を受け入れるのではなく、あなた方がマカラック様を守りなさい。」
ミルアージュの言葉に誰も言葉を発することができなかった。
ミルアージュの下した罰は領民たちに伝えられたが、誰も抵抗するものはいなかった。
それでマカラックの命が助かるなら‥皆の思いは同じだった。
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