【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第3章

幸せの行方

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真剣な顔をしたルティから人になろうと提案があった。

「穢れの対処などがあるからすぐとはいかないが‥リーナと夫婦になりたい。いつか子どもと一緒に家族で過ごそう。」

「ルティ!前に書いたあんなのただの冗談ですから。」
リーナは思ってもいなかった提案に焦っていた。

「冗談ではないだろう?叶えられない望みを書いて私を困らせたいと考えるリーナでない事は私もわかっている。」

ルティも私もお互いの事がよくわかっている。それだけ一緒にいてお互いの事を考えてきたのだから。

だからこそ、こんな顔をしたルティはもう決めてしまっているのがわかる。
いつもは私に甘くて優先させてくれるルティだが、私がなんと言おうと譲らない時がある。その時の顔だ。

「ルキアの所に一緒に行こう。勝手に人になるわけにはいかないからな。」
ルティの日課であるルキアの訪問に私も一緒に行く事になった。




「そろそろ来ると思っていたよ。」
ルキアはどのような用件で来たのもわかっているようだった。

「ルキア、私は人となりリーナと生きていく。許してくれるか?」
前回人になるというのは反対されていた為、ルティの顔が強張っている。

「結論から言うぞ。お前が人になるのは反対しない。だが、お前一人だけ人として死ね。リーナの永久保存は解いてやることはできない。」

「なぜだ!」
ルキアの返答は私達が想像していたものではなかった。
ルティではなくて私を死なせられない?
ルキアに私の永久保存は解けないと言われ、ルティからブワッと神気が溢れた。

「お前、リーナ以外の事をちゃんと見ておけよ。一応最高神だろう。」
ルキアはため息をつく。

「裁きの神だが、最年長で力もあるから最高神と言われているだけだ。」
ルティが口を尖らせて拗ねている。こんなルティは滅多に見る事はない。ルティはルキアの前だととても幼く感じるのは私だけではないはずだ。

「リーナがお前を通して世界の穢れの浄化をしていた為に穢れがなくなった。その結果、この世界から聖女が消えた。神殿も聖女も必要なくなってからだいぶ経っているぞ。」

最近はリーナの望みを叶える事に使命感を持っていたヴォルティスは確かにそのあたりの話には疎かった。
まぁ、そもそも人に興味がなかったのだから余計だ。

「リーナが人になり死んでみろ。この世界の穢れをラリーンが一人で浄化できる訳がないだろう。また世界を滅ぼしかけるのか?」

「それは‥」

「元神のお前には核が残る。表面上は人になれてもお前をリーナのように永久保存にもできないのだぞ。」
ルキアが言っている事は正しいのだろう。ルティは眉間にしわを寄せ、何とか答えを返そうとする。

「なら今から聖女を育てていこう!育つまで待つ。」

何を言っているのかと言わんばかりにルキアはルティを睨む。
「この世界に穢れもないのにか?どうやって育てるのだ?大体穢れも知らず生きている人々にいきなり穢れをみせてもパニックになるだけだろうが。そんな面倒な事をしてまで誰が育てるんだ。」
ルキアのルティを見る目はとても冷たかった。

ルキアは何だかんだと言ってもルティの事も人の事もよく見ている。

「ルティの気持ちだけで嬉しい。ルキアの言う通りです。ここは諦めましょう?」

「リーナ‥」
ルティは悲しそうな顔をして私を見た。

ルティの性格を知っていたはずなのにそんなルティが叶える事もできない望みを書いた私が悪いのだ。
ルティにこんな顔をさせている自分に腹が立つ。

確かにルティとの子はほしい。
私の両親のように仲がよくてルートやネマのような兄弟がいてみんなで笑いあえる家庭を作るのが夢だった。

だが、ルティが先に死んで残されるのは嫌だ。その後もずっとルティを思い、浄化し続けるなんて考えただけでも辛い。

これがずっとルティが怖がっていた感情だ。
今なら残されるルティの気持ちもよくわかる。
ルティをギュっと抱きしめる。

「お前ら、ちょっとは成長をしろ。まだ話は終わっていないのに自分たちだけの世界を作るな。」
またルキアからため息が出る。

「お前達がその用件で来るのはわかっていたからな、こちらも準備済みだ。なんせ、私はリーナと深く結ばれているからな。」
ルティが嫌がるセリフをわざとにいい、ニヤッと意地悪そうにルキアが笑った。

「半神をリーナが産むのはどうだ?リーナが子を成せる時期にヴォルティスの創生の神力を注ぐ。神や人を創ったお前ならできるだろう。」

「ああ、だが‥リーナは人だ。そんな事すれば傷つけてしまう。」

「大丈夫だ。希望の力と私の力はリーナの中にあるからな。リーナを守るだろう。なんせ、お前を孤独にさせない事に関しては半端ない強制力を生む。リーナを死なせる事はない。」

やはり怖い希望の力の強制力だとリーナは思った。

「それでもリーナにはかなりこたえるから少しずつ入れろ。子は人だとお前の神力に耐えられないからお前達の子は半神にしろよ。」
こうなる事を想定してからルキアは情報収集と分析を完璧に行なっていた。

「ルキア‥ありがとう。」

つい憎まれ口をたたいたが‥
ヴォルティスを死なせない。
ルキアのその想いは今でも変わっていない。
その為に必要な事なら何でもする。それがルキアなのだ。

その影に情報を集め、検証し、確信を得るまで情報の神ルーマは過労死するかと思うくらいルキアに働かされたのをヴォルティス達は知らない。




ルキアに言われた通り、リーナは子が産むまでの十ヶ月の間、苦しみ続けた。

ヴォルティスはオロオロしながらもリーナを励まし神力を注ぎ続けた。
数百年より長く感じた十ヶ月‥創生の力はリーナの中で暴れているように力を発揮していた。苦しくて辛かったが、子が生まれた瞬間、我が子を見て全ての辛さをリーナは忘れ去った。

それはそれは可愛い女の子だった。
客観的に見れば美しい娘になるだろう。
大きな瞳とサラサラの銀髪‥半神ながら輝く神気があふれていた。
だが、ここにいる皆は容姿を気にしているわけではない。
この子が愛おしすぎて可愛いのだ。

「リーナとの子だ。」とヴォルティスは泣き続けている。
ノルアは「妹ができた。私が守らないといけないな。幸せになれ。」と嬉しそうに笑って希望を与えた。
ルキアは「ヴォルティスの子なら私の子でもあるな。」そう言いながら、大地の祝福を与えた。

「まずい。与えすぎた‥」
ルキアからボソッと聞こえてきた。普段の冷静なルキアから考えられない。力加減を間違うくらい舞い上がっていたようだ。


そうやって生まれたリリアは皆に愛されてスクスクと大きくなった。
といっても半神であるリリアは人よりも成長がかなり遅い。
永遠の時が生きられなくてもこのままなら長い年月をヴォルティスとリーナと生きていくだろう。
ヴォルティスの力が強い為、成長も止まり永遠の時を生きられるかもしれない。
どちらになるのかは誰にもわからない。



「ルキア様!大好きです。お父さん達のような夫婦になってください!」
リーナがなれなかった絶世の美女となったリリアがルキアを追いかけ回し、最終的にルキアがリリアを受け入れたのはまた別のお話‥



FIN

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