【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第3章

リーナは永遠の命を手に入れる

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リーナに有無を言わさず、永久保存にされ、永遠の命を得る事となる。

体調の変化も特にはない。
何も変わらなさすぎて永遠の命があるのだと自分で認識するのには数年先になりそうだ。
ずっと姿が変わらなければ嫌でも認識するだろうから。

そこでフッと考える。

胸をペタペタ触りながらヴォルティス様に聞く。
「もう少し大人の女性が良かったですか?もう数年経てば立派な女性になったと思うのですが‥」

まだまだ成長途中だった私は胸とか顔とか‥数年先ならもっと大人の女性になったはずだ。

「ん?リーナはリーナだろう?今のリーナもかわいらしいと思うぞ。」
ヴォルティス様は私の顔を覗き込んで言う。

「可愛いではなくて美人になってたかもしれないじゃないですか。」
ただでさえ、ヴォルティス様は美しすぎるのだ。もう少し大人の色気みたいなものが出れば私も自信が湧いてくるはずなのに。

「お前が数年経ったって絶世の美女になるわけがないだろう。」
ボソリとルキアが言う。

絶世の美女になるなんて言ってないから。
ルキアは本当に乙女心がわからない。

「リーナは誰よりも美しいよ。」
ヴォルティス様は微笑みながら言ってくれる。
ヴォルティス様の顔を見ると本当にそう思っているのだろうとわかる。
だが、絶世の美を持つヴォルティス様に言われると気持ちは複雑だ。

「リーナとずっといられるのだな。夢のようだ。」
ヴォルティス様はウットリと私を見つめる。
他には何も目に入っていない。

そんなヴォルティス様の様子を苦笑いしながらルキアは見ていた。

「もう私は離れるぞ。これからの維持方法はその女神達に聞け。ヴォルティス、約束は明日からだからな。」

「ああ、わかっている。ルキア、本当に感謝している。」
ヴォルティス様は満面の笑みを浮かべている。

ルキアはそんなヴォルティス様を見て少し微笑んでスッと消えた。



それからのヴォルティス様はそれは誰が見てもわかるくらい上機嫌だった。

「リーナ、明日は何をしようか?」
ヴォルティス様の最近のブームは明日の予定を立てる事だ。

将来に怯えず、明日という日が迎えられるのが嬉しいらしい。

私がいる限りヴォルティス様の役割である裁きはない。つまり、ヴォルティス様は暇をしている。

ヴォルティス様は今までずっと体調がすぐれなかった為、仕事らしい仕事や役割はないのだ。
毎日ルキアに会いに行く事と満月の時の3日間命の泉に行く以外は。
その3日は命の泉から離れられないらしくルキアは喜んでいるらしい。

ヴォルティス様はどんどん私に甘くなり、ずっとついて回るようになった。
そんな日々がずっと続いていて数百年が経った。




ヴォルティス様が私の顔を覗き込んだ。
「リーナ、元気がないな。」
ヴォルティス様はすぐに私の変化に気づいてしまう。

隠し事はできない。
だけど、言いたくない事もあるのだ。

「何もないですよ?」

「何もないはずはないだろう。そんなに苦しそうな顔をしているのに。何があった?」
心配そうに聞いてくる。

満月前後の3日とルキアの所に行く時間以外ヴォルティス様はずっと私の側にいたのだ。
ただでさえ、私の言動には敏感だ。
数百年一緒にいれば、何かがあったとすぐにわかってしまう。

「‥‥」
こんなのはヴォルティス様に相談できない。
だから、そっとして欲しいのに。

「リーナの苦痛は全部取り除きたい。何があったのか教えてくれ。」

「何もないと言っているじゃないですか!」
私の言葉の語尾が強くなる。
ヴォルティス様にあたりたい訳でない。
だけど、触れて欲しくない事もあるのだ。
1人で考えたい。

ヴォルティス様に少し驚いたような悲しそうな顔をさせてしまい、自分の八つ当たりのような態度に申し訳なくなった。

「‥ルキアの所に行ってくる。少し遅くなるかもしれない。」
いつもはルキアの所には顔を出し少し話したら戻って来ていた。
ルキアも私から離れてソワソワしたヴォルティス様を見るのが嫌らしく顔を見たら早く帰れといわれると言っていた。

ヴォルティス様の落ち込みにルキアの嫌な顔をするのが想像できる。
ヴォルティス様には相談相手がいないため、ルキアに頼っているようだ。
ルキアからすれば私との事を相談されるなど苦痛だと思うのだが‥

ヴォルティス様には言うことができない悩み。
私は永遠の時を生きていけるのかという事だった。

時間が経つにつれ、だんだんと自分の置かれた状況が見えてきた。

ヴォルティス様に甘やかされて今、何をする訳でもなく生きている。
ヴォルティス様もみんなもヴォルティス様の浄化さえしていればいいと言ってくれる。
そう、それだけしていれば世界を救っているのだからと。

それだけでいいの?
ヴォルティス様は大切だ。
だが、ただただ甘やかされてヴォルティス様の側にいるだけの私。
これが永遠に続いていくのかと思うと怖くなった。

ヴォルティス様や神様方とラリーン先生はずっといてくれるけど‥
ラリーン先生も年をとらない為、人の社会では生きていけなくなりマークバルダ様と共に神殿を離れている。
家族はもともといないけど、友達も知り合いもみんな老いて死んでいった。

私だけ世界が止まってしまった。そんな絶望感が私の中に広がっている。

永遠を生きているヴォルティス様にそんな事を言えない。
永遠の命を得た事を後悔していると思われるのも今の状況に不安になっているのも絶対に悟られたくない。

ヴォルティス様は絶対に傷ついて悩むから。

だが、私は何のために存在しているのかわからなくなってきていた。そして、これからどうやって生きていけばいいのかも。

その思いはこの何百年かの間に大きくなっていた。最初の頃は年も数えていたが、もう忘れてしまうくらいに時間が過ぎていた‥
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