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第3章
ラリーンの想い(マークバルダ視点)
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私は女神とラリーンを先に出し、ヴォルティス様にどう切り出すのかルキア様と打ち合わせた。
リーナ様が永久の命をいらないといえば終わってしまう話だからだ。
ルキア様との話が終わり、廊下には先に退室させたラリーンが立っていた。話が終わるのを待っていたようだ。
「マークバルダ様、少しお時間をいただけますか?」
「ああ、構わない。ラリーンに聞きたい事もあったしな。」
ラリーンと向かい合って話すのは辛そうだった為、庭を歩きながら話す事になった。
そうすれば、目を合わせなくてもすむ。
庭を無言で歩く。普段なら気にならないラリーンとの沈黙も今は苦痛なものだった。
「黙っていて申し訳ありませんでした。」
ラリーンから話を切り出した。
「私も先ほど怒鳴ったりして申し訳なかった。ラリーンに怒った訳ではない。」
女神に向かって怒りがこみ上げたが、近くにいたラリーンも被害を受けた。
メビールをキャッチしたラリーンだったが、そのまま倒れ込んだのだ。
「わかっています。私の為に怒ってくれたのですよね?」
ラリーンの申し訳なさそう声が聞こえる。
「でもあの3神は責めないでください。そうしてほしいと望んだのは私です。」
「‥どうしてそんな危険な賭けをした?うまくいかなかったら死んでいたかもしれないのだぞ。」
「リーナさんを助けたかった‥でも、それだけではありません。」
「マークバルダ様の力をもっても私は老化するほど生命力が吸われていました。他の神の力が少しプラスされても同じだった可能性があります。何より‥」
「女神のみを集めてくれたマークバルダ様の想いを嬉しく感じたので、その想いに応えたかったのです。」
「あれは‥私の嫉妬みたいなものだ。そんな綺麗な想いではない。」
「嫉妬が嬉しかったんです。私はもともと若返りもせず、死ぬつもりだったのでもし失敗しても良かったんです。私はマークバルダ様とだけ結ばれていた。そうやって死にたかったので。」
横を歩くラリーンがどのような表情をしているのか。
向かい合って話せば見ることができたのにと庭に連れ出した事を後悔した。
ラリーンは前に私への想いはもうないと言った。それが事実でないのかもしれない思うと嬉しくなる自分がいる。
ルキア様に指摘されたラリーンへの執着。自分自身が一番よくわかっている。
ヴォルティス様は主ではあるが、ラリーンとヴォルティス様を天秤にかければ迷う事なくラリーンを選ぶだろう。
キースが神を捨てる選択をしたのか今ならわかる。そして、ヴォルティス様がリーナ様と眠りたいというその想いも。
「永久保存は維持がいるのだな?」
「はい。」
ラリーンの永久保存は神気を使い続ける。物の場合は持ち主の神気を少しずつ使って維持をするのだ。ラリーンは人である為、自分では維持ができない。だから、女神達は少しずつ力を与え続けたのだ。
確かにラリーンから女神達の神気を常に感じてはいたが、絆以外でもこうやって神気を与え続けることは珍しい事ではなかった。
聖女への好意をそうやって表し、神殿の中での地位を確立させる。神に愛されている聖女として。
神々へは自分はどれだけこの聖女を想っているのかを見せる意味もある。誰と結ばれるのも自由だが、自分よりこの聖女を想えるのかというマーキングのような役割もしている。
そう、女神達が神気を与え続けていたのに苛立ち、自分が一番強い繋がりだとラリーンへの神気で主張していたが、女神達の思惑はそこではなかったのだ。
私の想いが空回りし、周囲にダダ漏れだった事に恥ずかしくなる。
「女神達の神気を使わなくも私のを使えばよかっただろう?」
「マークバルダ様の神気を使えば、何に使ったのかわかってしまうので‥」
その返答に苛立ちが増した。
自分が事実を知らなかっただけではなく、ずっとラリーンから隠されていたという悔しさ。何でも話し合えると絆があると思っていたのは私だけだったのか?
私の思っている事が伝わったのかラリーンは口を開く。
「私に永遠の命があるとマークバルダ様が知ったらどうしましたか?」
「‥‥」
「私はマークバルダ様が他の聖女と結ばれなくてもいい、マークバルダ様の側にずっといられると思ってしまいました。」
「‥‥」
「神であるマークバルダ様から同じ想いを返してもらおうなど望むべきではないのに‥」
聖女は神を独占してはいけない。神殿でずっと生きてきたラリーンに当然な考え方なのだろう。
隣のラリーンの動きが硬くなっているのがわかる。今まで自分が信じてきた聖女の教えを否定しているのだから。
「次からは私の神気を使え。女神達からはもう神気はもらうな。」
ラリーンがバッと私の方に体を向けて見つめてきた。
「人になったキースの気持ちを今ならわかる。ラリーン以外聖女は持たないと誓おう。」
私もラリーンを見つめる。
やっとラリーンの表情を見ることができた。
目に涙を浮かべ嬉しそうに笑うラリーンは誰よりも美しかった。
リーナ様が永久の命をいらないといえば終わってしまう話だからだ。
ルキア様との話が終わり、廊下には先に退室させたラリーンが立っていた。話が終わるのを待っていたようだ。
「マークバルダ様、少しお時間をいただけますか?」
「ああ、構わない。ラリーンに聞きたい事もあったしな。」
ラリーンと向かい合って話すのは辛そうだった為、庭を歩きながら話す事になった。
そうすれば、目を合わせなくてもすむ。
庭を無言で歩く。普段なら気にならないラリーンとの沈黙も今は苦痛なものだった。
「黙っていて申し訳ありませんでした。」
ラリーンから話を切り出した。
「私も先ほど怒鳴ったりして申し訳なかった。ラリーンに怒った訳ではない。」
女神に向かって怒りがこみ上げたが、近くにいたラリーンも被害を受けた。
メビールをキャッチしたラリーンだったが、そのまま倒れ込んだのだ。
「わかっています。私の為に怒ってくれたのですよね?」
ラリーンの申し訳なさそう声が聞こえる。
「でもあの3神は責めないでください。そうしてほしいと望んだのは私です。」
「‥どうしてそんな危険な賭けをした?うまくいかなかったら死んでいたかもしれないのだぞ。」
「リーナさんを助けたかった‥でも、それだけではありません。」
「マークバルダ様の力をもっても私は老化するほど生命力が吸われていました。他の神の力が少しプラスされても同じだった可能性があります。何より‥」
「女神のみを集めてくれたマークバルダ様の想いを嬉しく感じたので、その想いに応えたかったのです。」
「あれは‥私の嫉妬みたいなものだ。そんな綺麗な想いではない。」
「嫉妬が嬉しかったんです。私はもともと若返りもせず、死ぬつもりだったのでもし失敗しても良かったんです。私はマークバルダ様とだけ結ばれていた。そうやって死にたかったので。」
横を歩くラリーンがどのような表情をしているのか。
向かい合って話せば見ることができたのにと庭に連れ出した事を後悔した。
ラリーンは前に私への想いはもうないと言った。それが事実でないのかもしれない思うと嬉しくなる自分がいる。
ルキア様に指摘されたラリーンへの執着。自分自身が一番よくわかっている。
ヴォルティス様は主ではあるが、ラリーンとヴォルティス様を天秤にかければ迷う事なくラリーンを選ぶだろう。
キースが神を捨てる選択をしたのか今ならわかる。そして、ヴォルティス様がリーナ様と眠りたいというその想いも。
「永久保存は維持がいるのだな?」
「はい。」
ラリーンの永久保存は神気を使い続ける。物の場合は持ち主の神気を少しずつ使って維持をするのだ。ラリーンは人である為、自分では維持ができない。だから、女神達は少しずつ力を与え続けたのだ。
確かにラリーンから女神達の神気を常に感じてはいたが、絆以外でもこうやって神気を与え続けることは珍しい事ではなかった。
聖女への好意をそうやって表し、神殿の中での地位を確立させる。神に愛されている聖女として。
神々へは自分はどれだけこの聖女を想っているのかを見せる意味もある。誰と結ばれるのも自由だが、自分よりこの聖女を想えるのかというマーキングのような役割もしている。
そう、女神達が神気を与え続けていたのに苛立ち、自分が一番強い繋がりだとラリーンへの神気で主張していたが、女神達の思惑はそこではなかったのだ。
私の想いが空回りし、周囲にダダ漏れだった事に恥ずかしくなる。
「女神達の神気を使わなくも私のを使えばよかっただろう?」
「マークバルダ様の神気を使えば、何に使ったのかわかってしまうので‥」
その返答に苛立ちが増した。
自分が事実を知らなかっただけではなく、ずっとラリーンから隠されていたという悔しさ。何でも話し合えると絆があると思っていたのは私だけだったのか?
私の思っている事が伝わったのかラリーンは口を開く。
「私に永遠の命があるとマークバルダ様が知ったらどうしましたか?」
「‥‥」
「私はマークバルダ様が他の聖女と結ばれなくてもいい、マークバルダ様の側にずっといられると思ってしまいました。」
「‥‥」
「神であるマークバルダ様から同じ想いを返してもらおうなど望むべきではないのに‥」
聖女は神を独占してはいけない。神殿でずっと生きてきたラリーンに当然な考え方なのだろう。
隣のラリーンの動きが硬くなっているのがわかる。今まで自分が信じてきた聖女の教えを否定しているのだから。
「次からは私の神気を使え。女神達からはもう神気はもらうな。」
ラリーンがバッと私の方に体を向けて見つめてきた。
「人になったキースの気持ちを今ならわかる。ラリーン以外聖女は持たないと誓おう。」
私もラリーンを見つめる。
やっとラリーンの表情を見ることができた。
目に涙を浮かべ嬉しそうに笑うラリーンは誰よりも美しかった。
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