【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

文字の大きさ
上 下
76 / 87
第3章

ルキアはヴォルティスを想う2(ルキア視点)

しおりを挟む
封印されただけなら戻ろうと思ったが、思いのほか核が傷つきすぎ回復するまでに時間がかかった。
真っ暗な中で数千年くらいはいただろうか?穢れもいつのまにかなくなっていた。
人の欲望など数千年すら持たない程度の欲だ。私がヴォルティスを想う気持ちに勝てるはずなどない。

ようやく核が回復してヴォルティスの封印を勝手にといた。ヴォルティスに気づかれるかと思ったが、完全に切り離していたらしい。気づかれなかったのは良かったが、それはそれで傷ついた。

もう忘れさられているのだろうか?
ヴォルティスにバレないように気配を消して命の泉に向かった。

そこで見たものは‥ヴォルティスの苦しんでいる姿だった。

命の泉に浮かび、穢れを浄化しているヴォルティスの目は虚ろだった。
体を動かす事も難しいようで、顔はもう生気がない。

どうしてこんな事が‥
穢れなど人を滅ぼせばすぐに消せただろう?
もし、人を消滅させるのが嫌だとしても穢れを浄化する方法などいくらでもあるだろう。

なぜ、穢れを一身に受けている?ヴォルティスだけが‥苦しんでいる?

しばらく様子を見ていると理由はすぐにわかった。他の神のようにヴォルティスは穢れを浄化する聖女を持てない。

大地の穢れの多くもヴォルティスに集まっており、大地の穢れが広がらないようになっている。

「永遠に生き続けろ、その穢れと共に。」

「お前は永遠の孤独がどれだけ辛いのかわからないだろう。それはお前への罰だ。」

私が放ったこの二つの言葉にヴォルティスは命令ととり、自分で自分を縛った。

無意識のうちに呪いを自分にかけた。
穢れとともに孤独に生きなければならないという呪いに‥

私を忘れて欲しくない。ヴォルティスに生きて欲しい。
この二つのわがままによりヴォルティスは数千年苦しみ続けていた。

その頃ちょうどキースという元神の祈りに希望の力は反応していた。
だが、呪いが邪魔をしていた為、私が少し介入した。バレないようにこっそりと希望の力に混ぜ合わせ力を増強させた。

聖女を持てれば穢れが減らせるだろう。
私を思い続けて苦しむのはいいが、体を蝕む穢れをため続けるのは許さない。

ヴォルティスは穢れを減らす事ができたが、その聖女候補の娘に執着していた。
その場は私のものだ。どうして人が私からヴォルティスを奪う?
苛立ちが募る。

そんな時、その娘を闇落ちさせようと動く愚かな人がいた。愚かだ、人のくせにヴォルティスを敵に回すなんて。
だが、うまくいけばあの娘は排除できる。
私はその様子を見ていた。
村人が殺され、その娘は闇落ちする。予想通りだった。
私の力が入った希望の力の強制力が働いてしまったのは想定外だった。あの娘に自我が残ってしまい、ヴォルティスが諦められない状況となる。

結果としては‥良かったのかもしれない。
ヴォルティスはあの娘を失えば、もう生きるのは難しいだろう。
ヴォルティスが死ぬのは許さない。だが、あの娘がそばにいるのも嫌だ。その場は私の為にあるのだから。

あの娘に向けるヴォルティスの眼差しを私に向けてくれたら‥愚かな人をうらやむ日が来るなんて思いもしなかった。

愚かといえば、神々だ。
ヴォルティスによって生かされている存在のくせにヴォルティスに逆らうなどあり得ない。
味方のふりをし近づき、全て消し去ってやろう。あの子の邪魔なものは私が排除する。

それとともにヴォルティスが執着するその娘をヴォルティスから奪う。
その娘に何も言わず、私に名をつけさせた。ヴォルティスより深い絆を得る。それも目的だが、私の主とする事でその娘を殺せなくなった。私がその娘を殺してしまったらヴォルティスは私を絶対に許さない。拒絶されるのだけはどうしても嫌だった。
娘は寿命でさっさと死ねば良い。私がその後ヴォルティスを慰め永遠にそばにいる。ヴォルティスがその娘に向ける眼差しを手に入れる。

その為にヴォルティスの呪いを解いておかなければならない。そして、ヴォルティスを手に入れる為ならその娘と絆を結び、うまくやっていけるはずだ。

全てはうまくいってたのに、ヴォルティスは神をかばい負傷をした。見せしめに殺しておけば他の神も反逆しようとは思わないものを。甘すぎる。

その上、ヴォルティスがその娘を求めて私に土下座をして泣いた。そんなのを求めてはいない。
その娘を主にしておいて良かった。腹立たしさから消滅させそうになったのだから。

ヴォルティスは私に反逆の意を向ける。そう仕向けたのは私だ。呪いを消す為に。いくら私でもヴォルティスのかけた呪いを消す事ができない。自分で消してもらうしかなかった。
だが、ヴォルティスから冷たい眼差しを向けられ絶望感が広がった。無理だ、この眼差しを向けられ拒絶され続けたら私は生きていけない。
ヴォルティスの側にいるためなら何でもする。

ヴォルティスを助ける為の芝居をした。
だから、私はヴォルティスの敵ではない。ヴォルティスとその娘の味方だと証明していかなければならない。
私のヴォルティスへの執着は隠し通していく。ヴォルティスの側にいるために。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。 ――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの? 追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。 その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。 ※序盤1話が短めです(1000字弱) ※複数視点多めです。 ※小説家になろうにも掲載しています。 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

処理中です...