【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第3章

ヴォルティスは死を覚悟する(ヴォルティス視点)

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「はははっ!お前、本当に変わったな。」
創生主は高らかに笑う。
こんな風に笑うこの方を初めて見た私は驚きを隠せない。

「だが、リーナはもう返せない。何故なら私に名前をつけ呼んだからな。私の名はルキアだそうだ。」
楽しそうに創生主いや、ルキアはいう。

「ルキア‥そんな事‥」

私は血の気が引き体の力が抜けたのを自覚した。立っている事もできず膝から崩れる。

「ヴォルティス様!」
マークバルダが私に駆け寄る。

創生主に名をつける。この方はリーナにそれを許したのか?
聖女と結ぶ際にも名は重要だ。力を与えるために名による絆を結ぶ。
それ以上に強い絆は名付けだ。名をつける事により強い絆と力の譲渡が可能になる。

私がこの方から半分の力をもらえたのはヴォルティスという名を与えられたから。
そして、主従関係が生まれる。名をつける事により主となるのだ。

神々の中にも動揺が広がる。
人が創生主に名をつける。

創生主の主人にリーナが位置付けられた。つまり、この世の最高位にリーナが持ち上げられたのだ。

「どうしてそんな事をした?」
ギリギリと歯を食いしばる。ありえない‥
そんな事をされれば私からはもう手が出せない。

「お前とリーナは名の絆を結んだからな。それより強い絆を結ぶにはそれしかないだろう?」
ニヤニヤと笑っているルキアを見ると苛立ちが込み上げてくる。

そう、私の絆も結ばれてはいるが、強さでいうとリーナとルキアの方が強い。
私の存在などかき消されるレベルだ。

リーナ、リーナ、リーナ‥

「リーナを返してくれ‥頼む。」
膝をついたまま、うまれて初めて土下座をした。
情けない姿だろうと、神々が見ていようと関係なかった。こんな事をしてもルキアがリーナを返してくれないのもわかっている。

だが‥リーナを失ったら‥私は‥

涙がこみ上げてくるのがわかる。地面にポタポタと涙が落ちる。

「お前のそんな姿を見るとは思わなかった。本当におもしろい。そんなに必要なら私から奪ってみるか?」
クククッと笑うルキアの声が響く。

そのルキアの声にプツンと私の中で何かが切れた。
もうどうなったっていい。リーナを失うなら死んだ方がマシだ。
ルキアが力を持ち、存在している時点で世界の滅亡はなくなった。なら私が死んでも誰も困らないだろう。

立ち上がりルキアに反逆の意を向ける。
確実に私は死ぬ事になるが、怖さなど全くなかった。
リーナに会えない事だけが心残りだが‥リーナの事はルキアが守っていくだろう。
この創生主は他者に冷淡ではあるが、一度気に入れば大切に扱う事はわかっている。
昔私に向けてくれていた優しい眼差しをリーナに向けると思うと腹は立つが、考えてもどうしようもない。

「はっ、お前から反逆されるとは思わなかった。本当にお前を創ったのは私の汚点だな。」
ルキアは大きくため息をつきながら、手に光の玉を作る。先ほどの何倍もある光の大きさだ、耐え切れる訳がない。

「ヴォルティス様!」
マークバルダは叫んで私の前に出ようとする。

「やめろ、マークバルダ。命令だ、離れていろ。止め切れるものではない。」
私は自分が思っていたより冷静なようだ。クスリと自虐的な笑いがでる。

そう、私にも受け止めきれないルキアの攻撃に恐怖はない。リーナを諦められない気持ちは絶対に譲れない。例え死ぬ事になっても最期まで戦いたい。

私も集中し力の全てを出す。ルキアの半分の力を与えられたが、神々をうむ際に力を与えだいぶ減っている。明らかに力の差はある。

「マークバルダ、今までありがとう。」
マークバルダを振り返り笑う。

マークバルダが傷ついた顔をしているのが見えた。守りの神として何もできず、見ているだけなのは辛いだろう。最期まですまない。
ノルアは私の意図を汲んでマークバルダを止めてくれている。さすが、私の自慢の息子だ。
思い返すと私は孤独などではなかった。こんなに思ってくれる者たちがいる。

リーナという存在が私に見せた希望。
ありがとう‥リーナ。

同時にお互いの光がぶつかった瞬間、私は大きな光に包み込まれた。

リーナ、最期にもう一度会いたかった‥
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