【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第3章

希望の神に会う

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リーナが穢れの森で遊んでいた事がばれてから育った環境について根掘り葉掘り聞かれていた。
他にも何かしているかもと疑われているのは鈍感と言われるリーナですらわかった。
だけど、神様は上機嫌だし、こんな風に普通の話ができるのは嬉しい。
今まで神様は心配と不安でピリピリしていたのはリーナにも伝わっていたが、そうさせているのが自分であるだけに何も言えなかったのだ。

その流れで神々はどうやって育つのかという話になり普段聞く事のない神についての話でリーナも興味津々だった。

「えっ、神々はお腹から生まれないのですか?」
リーナはびっくりして聞き返す。

「そうだな。基本死ぬことはないが、永い時の中で役割を譲ると決めれば、次代をつくり数百年かけて育てる。神としての役割が引き継げれば眠るのだ。」

「へぇ、そうなんですね。」

自分で次の神を作るのにも驚くが、育てるのに数百年かぁ。
神様の仕事大変そうだもんね‥

「そもそも男女が繋がらなければ子が成せない人とは違う。夫婦という言葉もキースの時に初めて知ったくらいだ。精神面での繋がりも特には必要としない。」
神々は自由だ、どんな聖女を選ぼうともまた、絆を切ろうとも神の御意思だと習った。
自分は特別だと思うなという戒めだが、お父さん達はかなり珍しいケースだったのだとわかる。

「神様も精神面での繋がりは必要ないのですか?」
少し寂しくなり思わず聞いてしまった。

「いや、一般の神の話をしたまでだ。私はずっと聖女も持てず独りだったからな、今ならキースの気持ちもわかる。リーナにそばにいてもらえて幸せだ。」
神様は優しく微笑む。
思わず聞いてしまった自分の心の狭さに少し恥ずかしくなるが、神様の言葉に安心したのも事実だ。
恥ずかしくて顔が赤くなって優しい眼差しから目を逸らしてしまった。

うつむいていると神様に抱きしめられた。
「リーナ、私のかわいい子。生まれてきてくれてありがとう。」
神様にそう言われるだけで涙が出そうになる。

「お父さん、神を捨ててもお母さんを選んだんですね。」
しばらく抱きしめられた後、照れ隠しに話をそらして離れた。
神様は少し寂しそうな顔をしたが、そのまま話は続けてくれるようだ。

「キースは神らしくない神だったからな。真面目なマークバルダとは対照的でいつも口論をしていた。」
昔を懐かしむように神様は笑う。
ずっと繰り返し続けているのなら神様が慣れているのもわかる。

「神様も前の裁きの神から生まれたんですか?」

「いや、私は少し違うが‥」
その後の話が続かず、悲しそうな神様を見ると触れて欲しくない話題だとわかった。
リーナは慌てて話を切り替える。

「お父さんが人になったという事は希望の神はどうなったのですか?」
お父さんはお母さんと出会って人になると決めたはずだ。
数百年かけて育てていたとは思えない。

「ああ‥」
神様はフッと止まって言いにくそうに口を開く。

「キースは急に人になったからな、次代を育てられなくて私が育てているのだが‥なんというか‥そもそも私は希望の神ではないし、体調も良くなかったのもあるが‥」

「?」
神様の言いたい事がわからない。

「リーナが会ってみるか?キースの子ならあの者も受け入れるかもしれない。」

受け入れる?
そんなに難しい神なのだろうか?

確かに数十年前まで希望の神と守りの神は人々を照らす神としての崇められてきた。
希望の神の話を聞かなくなった。
新しい希望の神は人々の前にまだ出てきていないのだろう。

まぁ、数百年かかるなら私の生きているうちに人の世界には出てこない。
お父さんの後を引き継いだ希望の神様に会ってみたい。
希望の力で神様を浄化できるのだからその力にも感謝していた。

「会えるのなら会ってみたいです。」
この後は神様が何故口ごもったのかすぐにわかった。



「この者が希望の神ノルアだ。こちらは私の聖女リーナだ。」
神様は私と希望の神を紹介した。
赤みがかった髪をしたまだ少年のような神だった。
プイっと横を向いて親しみやすさは全くない。

「ノルアはまだ神の力を使いこなせていないからまだ正確には神ではないがな。」
そう神様が付け足すとキッと神様を睨むノルア。
人以上に縦社会が厳しいと言われている神社会で不敬にも当たる。
見た目はともかく、まだ誕生して間もない神だ。人で言えば幼い子なのかもしれない。

「ノルア、リーナに挨拶をしなさい。」
神様も注意をしているが、聞く耳を持たない。
横を向いたままで動かないノルアをみて神様もため息をついた。

「リーナはキースの子だ。お前の欲しがっている答えを知っているかもしれない。」
ん?欲しがっている答え?

ノルアがその言葉に反応した。
少し驚いたようにわたしの顔を見てから近づいてきて手を伸ばした。
「キースの子なのか?あぁ、確かに希望の力を感じるな。」
少し嬉しそうに私の顔をプニプニと確かめるように触る。

しばらくされるままになっていたが、一向に止める気配がなく、ヴォルティスが止めた。

「‥元気だったか?」
神様は話かけたが、ノルアは聞こえなかったように無視をした。
目の前にいるのだ、本当に聞こえていないわけではない。

「リーナと話をしたい。離れていてくれ。」
ノルアが急に切り出し、ヴォルティスはため息をつき了承する。

ノルアの面倒が見れていないのか負い目なのか、幼い子だから許しているのか。
それでも、言葉は繋がるのだ。ヴォルティスはノルアに甘いようにリーナは感じた。 
親としては子が間違いをすれば、教えなければならない。その子の未来を考えれば、例えきつい事でも言わないといけない。

後で神様と話をしてしないと‥ノルアの為にならない。

ヴォルティスが話の聞こえない位置に移動する。
「それで、話って何ですか?」

「お前はキースの事を知っているだろう。どんな者だったのか教えてほしい。」
ノルアは真剣な表情でそう言った。

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