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第3章
リーナが浄化できるわけ
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「どういう事だ‥」
リーナの前で神様が頭を抱えている。
神殿に構えられた神様の部屋は豪華だ。
その部屋にはリーナと神様だけではなく、マークバルダ、ラリーン、ラハール、ルーマもいた。
なぜ、リーナは穢れに近づくだけで浄化できてしまうのか‥
聖女は浄化するのに体力も気力もいる。
聖女への負担をかければ穢れにのまれるため、浄化できる数の調整がどうしても必要だった。
リーナは近づいているだけで浄化など意識してしていない。つまり、体力も気力も必要ない。
ラリーンは実験的に大きな穢れの浄化でリーナの力を試した。ヴォルティスは嫌がったが、ラリーンが守りきるというと渋々了承した。
リーナの力の規模を知らなければ、対応が取れないと言われヴォルティスもうなずくしかなかったのだ。
大きな穢れへの浄化をリーナ、ラリーンで対応すると神殿には報告しリーナだけで浄化させた。
結果は‥
それまでと変わらず、近づくだけで穢れが浄化された。一人では難しいと思われた穢れを一瞬で消したのだ。
で、今に至る。
「どういう事だと言われても私にもわかりません‥」
リーナ自身、どうしてなのかさっぱりわからない。
ルーマもリーナの力の検証に呼ばれていた。情報分析にたけているためだ。
ラハールは出会った時の出来事を皆に話す。
「神殿に来る前の事ですが、穢れの森でリーナ様に触ってもらっただけで浄化されて体が楽になった事があります。それで聖女様になれると思い、神殿に来てもらいました。」
「元々浄化の力は強いのか。触れるだけで他者の穢れを浄化するなんて。」
そもそも神と結ばれてない聖女がそんな事をできるなんて‥考えられない。
「そもそも何故穢れの森へなど行ったのですか?死にに行くようなものではないですか。」
ラリーンはラハールの話を聞いて真っ青になっている。
「それはリーナ様が入ったので止めようとして踏み込んでしまったのです。」
ラハールだって神官だ。穢れの森の怖さくらいわかっている。
皆がパッとリーナを見る。
「えっと‥入ったらいけないとはいわれてたんですけど、なんともなかったから。」
お母さんからも村の人達からもずっと言われてはいたが、そんなにいけない事だったのか‥と今更気付く。
「いつから入っていたのだ?」
神様が眉間にしわを寄せる。その表情を見るだけで、怒っているのを我慢して静かに聞いているのがわかってしまう。
「えっと‥小さい頃からなのではっきりとはわかりませんが‥昔は誰も入って来ないので秘密基地を作って遊んでいました。大きくなると家計を助けるために花を取りに毎日入ってました。人が入らない分、珍しい花とか多くて高く売れたので‥」
ゴミョゴミョ言い訳がましくなるのは許してほしい。
皆の視線が怖すぎるのだから。
「子どもの頃から秘密基地‥大きくなってからは毎日‥よく生き残れたわ‥」
ラリーン先生とラハールさんは倒れるのではないかと思われる程真っ青な顔をしている。
ルーマが口を開く。
「穢れの森はヴォルティス様の穢れを具現化したものです。リーナ様はヴォルティス様の聖女として生まれたのだとしたら、ヴォルティス様の穢れに耐性を持っていたのではないでしょうか。」
神様は穢れを溜め続けて、のまれれば世界は滅ぶ。
そんな弱みを人々へ出すことなどできないため、穢れの森ができたそうだ。
穢れの森が広がれば世界は滅ぶ、そうやって人々に穢れを溜めないよう‥また穢れの浄化を自らするよう働きかけたとマークバルダ様は言った。
ここに来てまた、希望の力の怖さを知る。
ヴォルティスの抱える穢れは世界の穢れのほとんど全てと言っていい。
それを具現化した穢れの森。その森で子どもが遊べるなんて、どんな力を授けたんだ。
リーナの力の秘密がわかった。
元々その森に入れるだけの穢れへの耐性があり、また無意識に自分や周りの者を浄化する事で浄化の力も上げていた。
そこにヴォルティスと結ばれて力は爆発的に伸びたのだろう。
「ヴォルティス様の穢れを毎日浄化しているだけでも浄化の力は増していると思われます。」
ルーマは付け加える。
浄化の力は行うほどに力は増す。
昔に力が欲しい聖女達が身の丈以上の穢れに手を出し、闇落ちする事態にもなったため、神官がつけられたと歴史で習った。
世界の穢れを集めるヴォルティスの穢れを浄化しているのなら‥確かにその辺りの穢れなど塵レベルのものだろうと皆が思った。
「歩く浄化器‥」
ボソリとルーマが言う。
リーナは世界最強の聖女であることがわかり、ヴォルティス、マークバルダは安心した。リーナがその辺りの穢れにのまれることはもうないとわかったのだから。
ラリーンとラハールは浮かない顔をしている。この事が神殿にバレれば最高神がついついるとはいえ、リーナの人の良さにつけこんで悪用されかねない。
人々の思惑など神々には理解しにくいだろう。ラリーンとラハールは目を合わせ、うなずき合い決意を新たにした。
リーナを守ると。
始めの頃はギクシャクしていた二人の関係はいつしか目だけで語り合える最高のコンビとなっていた。
リーナの前で神様が頭を抱えている。
神殿に構えられた神様の部屋は豪華だ。
その部屋にはリーナと神様だけではなく、マークバルダ、ラリーン、ラハール、ルーマもいた。
なぜ、リーナは穢れに近づくだけで浄化できてしまうのか‥
聖女は浄化するのに体力も気力もいる。
聖女への負担をかければ穢れにのまれるため、浄化できる数の調整がどうしても必要だった。
リーナは近づいているだけで浄化など意識してしていない。つまり、体力も気力も必要ない。
ラリーンは実験的に大きな穢れの浄化でリーナの力を試した。ヴォルティスは嫌がったが、ラリーンが守りきるというと渋々了承した。
リーナの力の規模を知らなければ、対応が取れないと言われヴォルティスもうなずくしかなかったのだ。
大きな穢れへの浄化をリーナ、ラリーンで対応すると神殿には報告しリーナだけで浄化させた。
結果は‥
それまでと変わらず、近づくだけで穢れが浄化された。一人では難しいと思われた穢れを一瞬で消したのだ。
で、今に至る。
「どういう事だと言われても私にもわかりません‥」
リーナ自身、どうしてなのかさっぱりわからない。
ルーマもリーナの力の検証に呼ばれていた。情報分析にたけているためだ。
ラハールは出会った時の出来事を皆に話す。
「神殿に来る前の事ですが、穢れの森でリーナ様に触ってもらっただけで浄化されて体が楽になった事があります。それで聖女様になれると思い、神殿に来てもらいました。」
「元々浄化の力は強いのか。触れるだけで他者の穢れを浄化するなんて。」
そもそも神と結ばれてない聖女がそんな事をできるなんて‥考えられない。
「そもそも何故穢れの森へなど行ったのですか?死にに行くようなものではないですか。」
ラリーンはラハールの話を聞いて真っ青になっている。
「それはリーナ様が入ったので止めようとして踏み込んでしまったのです。」
ラハールだって神官だ。穢れの森の怖さくらいわかっている。
皆がパッとリーナを見る。
「えっと‥入ったらいけないとはいわれてたんですけど、なんともなかったから。」
お母さんからも村の人達からもずっと言われてはいたが、そんなにいけない事だったのか‥と今更気付く。
「いつから入っていたのだ?」
神様が眉間にしわを寄せる。その表情を見るだけで、怒っているのを我慢して静かに聞いているのがわかってしまう。
「えっと‥小さい頃からなのではっきりとはわかりませんが‥昔は誰も入って来ないので秘密基地を作って遊んでいました。大きくなると家計を助けるために花を取りに毎日入ってました。人が入らない分、珍しい花とか多くて高く売れたので‥」
ゴミョゴミョ言い訳がましくなるのは許してほしい。
皆の視線が怖すぎるのだから。
「子どもの頃から秘密基地‥大きくなってからは毎日‥よく生き残れたわ‥」
ラリーン先生とラハールさんは倒れるのではないかと思われる程真っ青な顔をしている。
ルーマが口を開く。
「穢れの森はヴォルティス様の穢れを具現化したものです。リーナ様はヴォルティス様の聖女として生まれたのだとしたら、ヴォルティス様の穢れに耐性を持っていたのではないでしょうか。」
神様は穢れを溜め続けて、のまれれば世界は滅ぶ。
そんな弱みを人々へ出すことなどできないため、穢れの森ができたそうだ。
穢れの森が広がれば世界は滅ぶ、そうやって人々に穢れを溜めないよう‥また穢れの浄化を自らするよう働きかけたとマークバルダ様は言った。
ここに来てまた、希望の力の怖さを知る。
ヴォルティスの抱える穢れは世界の穢れのほとんど全てと言っていい。
それを具現化した穢れの森。その森で子どもが遊べるなんて、どんな力を授けたんだ。
リーナの力の秘密がわかった。
元々その森に入れるだけの穢れへの耐性があり、また無意識に自分や周りの者を浄化する事で浄化の力も上げていた。
そこにヴォルティスと結ばれて力は爆発的に伸びたのだろう。
「ヴォルティス様の穢れを毎日浄化しているだけでも浄化の力は増していると思われます。」
ルーマは付け加える。
浄化の力は行うほどに力は増す。
昔に力が欲しい聖女達が身の丈以上の穢れに手を出し、闇落ちする事態にもなったため、神官がつけられたと歴史で習った。
世界の穢れを集めるヴォルティスの穢れを浄化しているのなら‥確かにその辺りの穢れなど塵レベルのものだろうと皆が思った。
「歩く浄化器‥」
ボソリとルーマが言う。
リーナは世界最強の聖女であることがわかり、ヴォルティス、マークバルダは安心した。リーナがその辺りの穢れにのまれることはもうないとわかったのだから。
ラリーンとラハールは浮かない顔をしている。この事が神殿にバレれば最高神がついついるとはいえ、リーナの人の良さにつけこんで悪用されかねない。
人々の思惑など神々には理解しにくいだろう。ラリーンとラハールは目を合わせ、うなずき合い決意を新たにした。
リーナを守ると。
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