【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第3章

ヴォルティスの不安(ヴォルティス視点)

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リーナの喜ぶ顔が見たい。笑っていてほしい。私の側にいてほしい。
今までずっと手に入らなくて我慢していた存在が目の前にいる。そう思うだけで私の欲はどんどんと大きくなっていくのがわかる。
愛おしい。そんな言葉では言い尽くせない。

少しでもリーナに近づきたい。
理想だという両親の真似をしようとマークバルダに頼んで口づけも学んだが「まだ早すぎます」と真っ赤な顔で否定された。
何が早くて何なら良いのか私にはわからない。
リーナと私は生きる時の長さが違う。リーナにとっての一生は私にとって一瞬とも思える時間だ。その事が私をあせらせる。
気づいた瞬間にリーナが私の元にいなくなっているかもしれないと‥

どうしたらもっと近づけるのか。
どうしたら喜んでもらえるのか。
今まで人と関わってこなかった罰なのだろう。全くわからない。

私にとってリーナは全てだ。
私が初めて絆を結べた聖女。
あたたかいものに包まれるような幸せを与えてくれる唯一の存在。
リーナが笑ってくれるのなら何を犠牲にしてもいいと考えてしまう。
いや、実際にするだろう。
もう裁きの神でも最高神である資格もない。
といっても、やめることなどできないのだが‥

マークバルダの反応を見ても私はやり過ぎているのがわかるが、止める事はできない。
悪意に晒されてまた命の危機が差し迫ったら?
考え出したら不安の渦に巻き込まれる。
こんな風に人に執着する事は初めてであり、どうしたら良いのかわからない。

命の石でリーナを感じる事ができるようになって少し不安が軽減した。リーナのあたたかさを常に感じる事ができるからだ。
命を脅かすものも排除できるはずだ。私の力を超えるものなど、この世界には少ない事は私が一番知っている。

不安が一つ減ると別の不安がでてくる。
最高神という立場にリーナが従っているだけなのだとしたら‥言いたい事を我慢しているのだとしたら‥
人が神に従うのは当たり前であり、リーナも私に従っているだけなのかもしれない。
不安からリーナに縋り、その執着により嫌われてしまったら‥離れていってしまったら‥そう思うと余計に不安は大きくなっていく。
リーナを囲う方法など力を使えばいくらでもできるが、私が欲しいのはリーナの心だ。笑顔だ。
力に頼ってもそれは手に入れられない。

だが‥
私がいくら守ったところで‥リーナが側にいてくれたところで‥
リーナが人である以上、いつか別れが来る。
私はそれに耐えられるのだろうか。
他の神達のように一緒に死ぬ事を選べない。
キースのように人となり夫婦となる事もできない。

私は結局独りになってしまう。
リーナをいくら抱きしめてもその不安から逃れられない。
だから、怖くてリーナを離すことができない。
皆が自分の前から消えていく。そう、それは今まで当たり前の事だった。
だから、何に対しても興味も関心もなかった。
神々ですら永遠という時を生きていく事はせず、次代に譲っていくのだから。

本当はわかっている。
最高神として世界と繋がる者として人になど執着してはいけないのだ。
だから、私は聖女が持てないようにできていた。
だが、リーナという存在を手に入れてしまった。
一度幸せを知ってしまうときっともう前のように淡々と生きていく事はできない。

私は何故生きなくてはならないのか。
どうして私と世界は繋がっているのか。
どうしてリーナと共に死ぬ事もできないのか。
全てを道連れにして滅ぶそれもいいのかもしれない。

幸せを感じれば感じるほど、独りになる不安と恐怖が今日も私を苦しめる。
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