【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第3章

マークバルダの悩み(マークバルダ視点)

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ヴォルティス様とリーナ様が結ばれた。
これはとてもいい事だとマークバルダだって思っている。
だが、今の現状はいただけない。
どうしたら良いものか‥

リーナ様に浄化されヴォルティス様の体調は絶好調と言っても言い過ぎではないくらい良い。
その分、ヴォルティス様のダダ漏れしている神気に当てられてこちらの体力奪われるのも仕方がない。

だが、ヴォルティス様とリーナ様の間に挟まれて精神力まで奪われるのは正直辛い‥

体調が良くなってからヴォルティス様のリーナ様への想いは爆発してしまった。
元々、溺愛していると思っていたが、体調の悪さもあり抑えられていたなど誰が思う?

「マークバルダ様!何とかしてください!」
目の前でリーナ様に懇願される。落ち着かせるためにお茶を飲みながら話しているが、効果はないようだ。

「神様の事は大好きです。でもずっと一緒にいるのは無理です!」
ずっとというのは比喩かと思って聞いていたが、お風呂やベットの中も一緒に入ろうとすると恥ずかしそうに言った。

思わず、口に含んでいたお茶を吹き出した。
ヴォルティス様が‥人々のような繋がりを欲しているのか?

リーナ様の話を聞き、なだめて部屋を出る。
嫌な予感がしていると今度はヴォルティス様に呼ばれた。

最近ではヴォルティス様はリーナ様のいる為、よく神殿を使うようになっている。
それでもリーナ様とほぼ一緒にいる為、あまり使う事のないヴォルティス様の部屋をノックする。

「入れ。」
中から声がかかりドアをあける。一瞬ドアを閉めようと思ってしまった。入りたくない。気分が悪くなるほど、どんよりとした重い神気が部屋を充満している。

「‥失礼します。」
フーと息を吐き、覚悟を決めて入った。

「マークバルダ、どうしたらよいと思う?」
ヴォルティス様は真っ青な顔をして落ち込んでいる。

「どうしたらとは?」
話を聞いたのは自分だが、聞くんじゃなかったとすぐに後悔する事になる。

「リーナがかわいすぎる。」

「はぁ‥」
何と反応したらいい?
前に肯定したら「私だけの聖女だ。死にたいのか」と殺気ともいえる神気を向けられ、やんわり否定すればリーナの良さがわからないのかとこれまた殺気を向けられた。

何と答えようか悩んでいるとヴォルティス様は悩みを話し出す。私の返答など必要はないようだ。

「もうあんな思いをするのは嫌なのだ。だから、リーナが見えなくなると不安になる。それがリーナにとって苦痛なようだ。」
そりゃ、お風呂やベットの中を覗かれるのは嫌だろう。
人々のような体の繋がりを求めているわけじゃないと知り安心する。その指南を求められても困るからだ。

目を離したすきに闇落ちでリーナ様を手放さなくなった時のヴォルティス様の様子を知っているだけに‥なんとも言えない。

だが、このままヴォルティス様とリーナ様がすれ違い始めたら‥それに巻き込まれる自分を想像するだけで怖くなる。

何とかしなければ‥何とか‥
外を見ると神殿から命の泉が見えた。
それを見てピンとひらめいた。

「そんなに不安ならリーナ様に命の石をもう一度プレゼントしたらどうでしょう?ヴォルティス様の力を有するリーナ様が穢れを持つことがないのなら直接繋いだらよいのでは?」

そうすれば常に側にいなくても石を通じてリーナ様を感じることができる。我ながらいいアイデアだと思う。

パァとヴォルティス様の神気が輝く。
「そうだな!聖女になったお祝いも必要だ。今すぐ、命の石を持ってこい!」
ウキウキとどんな力を込めようか悩んでいるヴォルティス様。よかった。

リーナ様これでしばらくは離れられるぞ、感謝しろよと心の中で思い、いい事をしたつもりだった。

ヴォルティス様の石を見るまでは‥

「ヴォルティス様、リーナ様を何から守りたいのですか?」
顔が引きつるのが自分でもわかる。

「全てのものだ!」
ニコニコしながらヴォルティス様は答える。

穢れが浄化され絶好調のヴォルティス様が作るものだ、この間の石よりすごいものを作るとは思っていたが‥

「この間ので反省した。これはリーナを常に感じるだけではなくて感情の揺れも感知して知らせるようにした。すぐに助けにいけるようにな。石の守りも攻撃も力の全てを込めた‥それから」
その後も石の力について延々の説明が続く。

ヴォルティス様‥

「私だけの聖女だ。死にたいのか」と言ったヴォルティス様は本気だったと今更気づく。

警戒対象に私も入っている。なぜなら、この石、その辺りの神どころかヴォルティス様に次ぐ力を持つと言われている私をしのぐ力があるのだから。

「ヴォルティス様それをリーナ様に渡すなとは言いませんが、ヴォルティス様とリーナ様だけの秘密にしませんか?」
こんなもの人に渡しているとなれば、神々の反発をうむ。人を見下すプライドの高い神々より力がある人が存在するなど認められないだろう。
何故いけないのかわからないヴォルティス様は首を傾げる。良くも悪くもヴォルティス様は神にも人にも興味がない。その上、体調も優れなかったため、神々と深く関わったことがなく現状が把握できていなかった。
これからお教えしていかなければならないが‥

「だが、これはリーナが私だけの聖女だと他の神々への牽制も兼ねている。」
やはりそうか、自分の力を見せつけて手を出せないようにしている。それが一番まずいのだ。

「リーナ様の事は皆に周知されています。ヴォルティス様の聖女に手を出す者などいません。その力はリーナ様しか使えないですが、心の優しいリーナ様が利用されかねません。皆に知られてはいけません。」
人にも神々にも‥
ヴォルティス様も言いたい事はわかっているようだ。

「それはそうだが‥」

もう一押し。
「リーナ様とヴォルティス様だけの思い出としてブレスレットなどにしてはどうでしょう。リーナ様もキース達の事も思い出せますし。」

最後の一押しがきき、渋っていたヴォルティス様が笑顔となる。
「それは良い考えだな。」
今度はウキウキとブレスレットのデザインを考え出す。

こうして執着の結晶‥いや最高神の力の結晶といえるブレスレットはひっそりと完成した。
リーナ様はすごく喜んだし、ヴォルティス様は少し離れられるようになった。
ヴォルティス様とリーナ様しか見えないし感じる事のできないブレスレット。
リーナ様が時々何もない左手を撫でてウットリと見つめている姿は怪しいが、まぁ誰も何も言わないだろう。

ハァと大きなため息がでる。
もうリーナ様とヴォルティス様の相談を受けるのはやめようと思った。
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