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第2章
神様と共に
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しばらくマークバルダ様とお父さんの子どもの言い争いは続けられたが、お母さんによって止められ終了した。
「リーナ、ごめんね。本当ならゆっくり話をしたいんだけど、ルートとネマを待たせているから行くね。」
お母さんは申し訳なさそうにリーナに謝る。
「私は大丈夫!神様がいるから。」
リーナを抱きしめて離れない神様を見つめて笑う。
「よかった。ヴォルティス様、リーナをよろしくお願いします。」
お母さんは神様に頭を下げた。
「ああ、任せておけ。」
少し離れたところで複雑な顔をしているのはお父さんだ。お父さんは神様と一緒にいるの喜んでくれないのかな‥とリーナは少し悲しくなった。
フフフと笑ったお母さんは私に耳打ちをする。
「もう、お父さんはリーナを嫁に出すよう気分になって拗ねてるのよ。気にしないで。あなたが生まれた時からずっとヴォルティス様にだって娘は渡したくないって言ってたんだから。」
お母さんはお父さんのところに行き、一言二言、言葉を交わすとお父さんは私達の前にやってきた。
「リーナ、幸せになれよ。ヴォルティス様、娘をよろしくお願いします。」
渋々と言った様子で神様に頭を下げた。
「キース、ありがとう。こんなに誰かを愛おしくて幸せだと感じるのは初めてだ。」
神様は満面の笑みをお父さんに向けたが、その後真剣な眼差しでお父さんに誓う。
「リーナは私の全てをかけても必ず守る。今回のような事はもう起こさない。」
神様の神気が私を守るように包む。
お父さんは少し驚いた顔をした。
「ヴォルティス様のそんな笑顔‥初めて見ました。ヴォルティス様が幸せだと言ってくれると俺も嬉しいです。娘をよろしくお願いします。」
お父さんは涙を流して笑った。
お父さんは感情豊かな人だと今回初めて知った。
ミラージュ様がお父さんとお母さんをあの世に連れて行ってくれると挨拶に来た。
神様はミラージュ様の視線から何か感じ取ったようで
「リーナ、ミラージュと話す事があるだろう。少し離れているから気にせず話せ。」
腰に回した手を離して歩き出した。声の聞こえない距離まで離れてくれたようだ。
ミラージュ様と話したい事?
横で一緒に聞いていたら良いのに‥
私の不思議そうな顔を見たミラージュ様は悲しそうに笑う。
「ヴォルティス様はあなたがとても大切なのですね。離したくないのにあなたの選択にさせたいなんて。」
「どういう意味ですか?」
意味深なミラージュ様の言葉は私にはよくわからなかった。
「いえ、こちらの話です。キース様がご家族で過ごせる時間を作ってから、生まれ変わらせます。また、共に家族となるように配慮も致します。」
「そうですか、ありがとうございます。」
お父さんが死んでルート、ネマと一緒に過ごした時間は短い。次の生では家族として一緒に過ごしてほしい。幸せになれますようにと祈りを込めた。
そんな私の様子を見たミラージュ様は言いにくそうに口をあけては閉めを数回繰り返した。少し間をあけてから言葉を発した。
「その中にリーナ様は入らなくてもよろしいですか?今ならまだ間に合います。」
私も一緒に家族と生まれ変わるのかという事?
もう家族として過ごせないのは寂しいけど、私は神様と生きていくと決めた。
寂しいけど、今みんなと行くことはできない。
「はい、今一緒に行ったらお父さんとお母さんに怒られちゃいます。それに‥」
チラッと神様を見た。
私が何をミラージュ様と話しているのか知っているのだろう。
辛そうな顔をして私を見つめている。
「神様を独りにはできません!」
家族の思いは、私の心の中で残る。お父さんの思い出も増えた。
何より神様が大切だ。お父さんもお母さんも私にその選択をさせたくなくて早々に別れを切り出してくれたのだと思う。私に考える時間を与えないように‥神様を選んで家族を捨てたと罪悪感を持たさないように。
ミラージュ様の先ほどの言葉を理解した。その事を聞けと言ったのは神様だ。私の望みを優先させようとしてくれたのは嬉しいけど‥
ミラージュ様はホッとした顔をした。
「わかりました。ご家族の事は私にお任せください。ヴォルティス様の側にいてくださり、ありがとうございます。」
そういうと頭を下げ離れていった。
お父さん達とミラージュ様を見送ってから神様に駆け寄る。
お父さん達が離れていったのを見て、辛そうな顔をしたまま神様は私に聞く。
「いいのか?もう会えないのだぞ。前に家族を恋しがって泣いていただろう?」
「覚えてくれていたんですね‥」
神様が初めて会った時の出来事を覚えてくれているのが嬉しかった。
「いいんです!神様が寂しい時は側にいてくれるといってくれたので。寂しくなったら言いますから。」
神様と初めて会った時、家族が恋しくて泣いていた私にかけてくれた言葉。
「私には家族がいないからどのような感情かはわからないが、寂しいというのなら私が側にいよう。」
神様の孤独を知った。
神様が側にいてくれたように私も神様が寂しくないように側にいよう。
神様が家族を知らないというのなら私が家族になろう。
「神様も寂しくなったらいつでも言ってくださいね。」
そういうと神様は泣きそうに顔を歪めて力強く私を抱きしめた。
「リーナ、ごめんね。本当ならゆっくり話をしたいんだけど、ルートとネマを待たせているから行くね。」
お母さんは申し訳なさそうにリーナに謝る。
「私は大丈夫!神様がいるから。」
リーナを抱きしめて離れない神様を見つめて笑う。
「よかった。ヴォルティス様、リーナをよろしくお願いします。」
お母さんは神様に頭を下げた。
「ああ、任せておけ。」
少し離れたところで複雑な顔をしているのはお父さんだ。お父さんは神様と一緒にいるの喜んでくれないのかな‥とリーナは少し悲しくなった。
フフフと笑ったお母さんは私に耳打ちをする。
「もう、お父さんはリーナを嫁に出すよう気分になって拗ねてるのよ。気にしないで。あなたが生まれた時からずっとヴォルティス様にだって娘は渡したくないって言ってたんだから。」
お母さんはお父さんのところに行き、一言二言、言葉を交わすとお父さんは私達の前にやってきた。
「リーナ、幸せになれよ。ヴォルティス様、娘をよろしくお願いします。」
渋々と言った様子で神様に頭を下げた。
「キース、ありがとう。こんなに誰かを愛おしくて幸せだと感じるのは初めてだ。」
神様は満面の笑みをお父さんに向けたが、その後真剣な眼差しでお父さんに誓う。
「リーナは私の全てをかけても必ず守る。今回のような事はもう起こさない。」
神様の神気が私を守るように包む。
お父さんは少し驚いた顔をした。
「ヴォルティス様のそんな笑顔‥初めて見ました。ヴォルティス様が幸せだと言ってくれると俺も嬉しいです。娘をよろしくお願いします。」
お父さんは涙を流して笑った。
お父さんは感情豊かな人だと今回初めて知った。
ミラージュ様がお父さんとお母さんをあの世に連れて行ってくれると挨拶に来た。
神様はミラージュ様の視線から何か感じ取ったようで
「リーナ、ミラージュと話す事があるだろう。少し離れているから気にせず話せ。」
腰に回した手を離して歩き出した。声の聞こえない距離まで離れてくれたようだ。
ミラージュ様と話したい事?
横で一緒に聞いていたら良いのに‥
私の不思議そうな顔を見たミラージュ様は悲しそうに笑う。
「ヴォルティス様はあなたがとても大切なのですね。離したくないのにあなたの選択にさせたいなんて。」
「どういう意味ですか?」
意味深なミラージュ様の言葉は私にはよくわからなかった。
「いえ、こちらの話です。キース様がご家族で過ごせる時間を作ってから、生まれ変わらせます。また、共に家族となるように配慮も致します。」
「そうですか、ありがとうございます。」
お父さんが死んでルート、ネマと一緒に過ごした時間は短い。次の生では家族として一緒に過ごしてほしい。幸せになれますようにと祈りを込めた。
そんな私の様子を見たミラージュ様は言いにくそうに口をあけては閉めを数回繰り返した。少し間をあけてから言葉を発した。
「その中にリーナ様は入らなくてもよろしいですか?今ならまだ間に合います。」
私も一緒に家族と生まれ変わるのかという事?
もう家族として過ごせないのは寂しいけど、私は神様と生きていくと決めた。
寂しいけど、今みんなと行くことはできない。
「はい、今一緒に行ったらお父さんとお母さんに怒られちゃいます。それに‥」
チラッと神様を見た。
私が何をミラージュ様と話しているのか知っているのだろう。
辛そうな顔をして私を見つめている。
「神様を独りにはできません!」
家族の思いは、私の心の中で残る。お父さんの思い出も増えた。
何より神様が大切だ。お父さんもお母さんも私にその選択をさせたくなくて早々に別れを切り出してくれたのだと思う。私に考える時間を与えないように‥神様を選んで家族を捨てたと罪悪感を持たさないように。
ミラージュ様の先ほどの言葉を理解した。その事を聞けと言ったのは神様だ。私の望みを優先させようとしてくれたのは嬉しいけど‥
ミラージュ様はホッとした顔をした。
「わかりました。ご家族の事は私にお任せください。ヴォルティス様の側にいてくださり、ありがとうございます。」
そういうと頭を下げ離れていった。
お父さん達とミラージュ様を見送ってから神様に駆け寄る。
お父さん達が離れていったのを見て、辛そうな顔をしたまま神様は私に聞く。
「いいのか?もう会えないのだぞ。前に家族を恋しがって泣いていただろう?」
「覚えてくれていたんですね‥」
神様が初めて会った時の出来事を覚えてくれているのが嬉しかった。
「いいんです!神様が寂しい時は側にいてくれるといってくれたので。寂しくなったら言いますから。」
神様と初めて会った時、家族が恋しくて泣いていた私にかけてくれた言葉。
「私には家族がいないからどのような感情かはわからないが、寂しいというのなら私が側にいよう。」
神様の孤独を知った。
神様が側にいてくれたように私も神様が寂しくないように側にいよう。
神様が家族を知らないというのなら私が家族になろう。
「神様も寂しくなったらいつでも言ってくださいね。」
そういうと神様は泣きそうに顔を歪めて力強く私を抱きしめた。
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