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第2章
神様のところへ
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「それでは行こうか。」
マークバルダ様が出発の声かけをする。
リーナの為に王家は馬車を用意していた。リーナの体の負担を減らす事は今何より重要だ。広さと座席のシートの柔さかを追求した馬車が提供されたのだ。
「こんな馬車落ち着きません‥」
豪華すぎるその馬車を見てリーナは驚いた。土足で入って汚したら‥傷でもできたらと思うと落ち着かなかった。
「リーナさん、贅沢は言うのはやめなさい。用意してもらっただけありがたいと思いましょう。」
ラハールさんと一緒に歩いてくる美少女が言う。
私と同じ歳くらいのはずなのに、存在感が全く違う。背筋をピンと伸ばし、キチッとまとめられている金髪。
こんな美少女に知り合いなどいないけど‥誰かに似ている。
首から下げているペンダントが目に入ってくる。見覚えがある。
「ラリーン先生?」
恐る恐る聞く。めちゃくちゃ疑問形だ。
「はい、どうかしましたか?」
姿形以外はいつも通りのラリーン先生。
「何でそうなったのですか⁉︎」
昨日部屋に来てくれた時はいつも通りのラリーン先生だったのに。
今目の前にいるのは同じ歳くらいの美少女だ。
「私が聖女に戻るためですよ。」
サラッとラリーン先生は説明してくれるが‥
引退したはずの聖女に戻る決断をするのには相当な勇気が必要だったはずだ。
意志が強いラリーン先生が今までの行いを否定したようなものだから。
「それは私のせいですか?」
ラリーン先生はフワッと笑い、泣きそうな私の頭を撫でてくれる。
「私の為ですよ。今できる最善の事をしようとした結果です。ここで何もしなければ後悔してしまう。とりあえず馬車に乗りましょう。中で話します。」
ラリーン先生は私を豪華な馬車の中に入るよう促す。
うっ‥こんな馬車‥乗りたくないけど。
ラリーン先生をチラッと見ると有無を言わさない微笑みを浮かべている。
「失礼します‥」
頭を下げて中に入る。ラハールさんが先に乗っており、手を差し出してくれた。
すぐにラリーン先生も入ってくる。
最後に安全確認をしたマークバルダ様が入る。今回は護衛という立場に徹すると言う。神様を護衛として使うというのはおかしくないかと私は思うと訴えたが、皆に速攻で却下された。
そのメンバーが乗っても余裕の広さがある馬車中は静まり返っている。
ラリーン先生は私の横に座り、手を握り穢れを浄化してくれていた。
少しだが、体も楽になりラリーン先生にお礼を言おうとするとラリーン先生は目に涙を浮かべていて何もいうことができなくなった。
マークバルダ様が口を開き、これからの予定を確認した。
その後に世界と神様のつながり、穢れがもたらす影響について話し出す。
穢れが神様を蝕めば、世界が破滅に向う。
そうなる前に神様の手で人への裁きが行われる。何度も人は裁かれてきていると‥
神様の穢れを浄化できるのが唯一私だけだとマークバルダ様は言った。
「ヴォルティス様は我々のために穢れを溜めながらも永遠の時を生きなければならない。そんな時、ヴォルティス様の穢れを浄化できる聖女候補と出会った。そなたを聖女とする日を本当に楽しみにされていた。」
普段無表情なマークバルダ様は悲しそうにこちらを見つめている。
涙が溢れてくるのが止められない。
神様‥ごめんなさい。
自分の事ばかり考えて神様の事をちゃんと考えていなかった。
「私が守りきらなければいけなかった。本当に申し訳ない。」
頭を下げるマークバルダ様。神が人に頭を下げるというありえない行為だが、誰も何も言わなかった。
「頭をあげてください。マークバルダ様は悪くありません。神様や浄化の事を知らなかったとはいえ、私が自分で行った事です。私が悪いんです。」
慌ててマークバルダを止める。
ラリーン先生が握る手が強くなる。
「そうですね、リーナさん。自分で闇落ちを選ぶなんて‥バカよ。あなたにきちんと聖女としての教育を行えなかった私の責任ですね。」
ラリーン先生は気づいている。私が何をしたのか。どうして闇落ちしたのか。
頭を横に振りながらラリーン先生の言葉を否定する。
「先生、ごめんなさい。あんなに何度も注意してくれたのに‥私どうしても我慢できなかったんです。先生は悪くないです。」
「どういう事だ?」
マークバルダ様はラリーン先生に問う。
「穢れを浄化してわかりましたが、リーナさんの中にあるのはリーナさん自身の穢れではありません。全て別の人の穢れです。」
マークバルダ様とラハールさんの顔色が変わる。
「どうして、そんな事を‥」
マークバルダ様は呟く。闇落ちの原因はわかったが、理解ができないようだった。
「みんなを助けたかった‥もちろんその思いもありました。だけど、それ以上にもう私は神様の聖女になれないって思いました。みんなを不幸にした私が神様と幸せな時間を過ごすなんて許されない。それならみんなを助けて死んでもいいと思ったんです。」
みんなを助けたい。そう純粋に思ったわけじゃない。自分への罪悪感を減らす為にみんなを助けようとした自分の為の行いだ。
その結果、神様は穢れを浄化できなくなった‥
その事実を知っていたら私はどうしていただろう。
家族や村の人達と神様どっちを選んだのだろうか‥
馬車の車輪の音や鳥の鳴き声が聞こえる。
誰も言葉を発しない。
沈黙が続く中、神様のところに向けて馬車は進んでいく。
マークバルダ様が出発の声かけをする。
リーナの為に王家は馬車を用意していた。リーナの体の負担を減らす事は今何より重要だ。広さと座席のシートの柔さかを追求した馬車が提供されたのだ。
「こんな馬車落ち着きません‥」
豪華すぎるその馬車を見てリーナは驚いた。土足で入って汚したら‥傷でもできたらと思うと落ち着かなかった。
「リーナさん、贅沢は言うのはやめなさい。用意してもらっただけありがたいと思いましょう。」
ラハールさんと一緒に歩いてくる美少女が言う。
私と同じ歳くらいのはずなのに、存在感が全く違う。背筋をピンと伸ばし、キチッとまとめられている金髪。
こんな美少女に知り合いなどいないけど‥誰かに似ている。
首から下げているペンダントが目に入ってくる。見覚えがある。
「ラリーン先生?」
恐る恐る聞く。めちゃくちゃ疑問形だ。
「はい、どうかしましたか?」
姿形以外はいつも通りのラリーン先生。
「何でそうなったのですか⁉︎」
昨日部屋に来てくれた時はいつも通りのラリーン先生だったのに。
今目の前にいるのは同じ歳くらいの美少女だ。
「私が聖女に戻るためですよ。」
サラッとラリーン先生は説明してくれるが‥
引退したはずの聖女に戻る決断をするのには相当な勇気が必要だったはずだ。
意志が強いラリーン先生が今までの行いを否定したようなものだから。
「それは私のせいですか?」
ラリーン先生はフワッと笑い、泣きそうな私の頭を撫でてくれる。
「私の為ですよ。今できる最善の事をしようとした結果です。ここで何もしなければ後悔してしまう。とりあえず馬車に乗りましょう。中で話します。」
ラリーン先生は私を豪華な馬車の中に入るよう促す。
うっ‥こんな馬車‥乗りたくないけど。
ラリーン先生をチラッと見ると有無を言わさない微笑みを浮かべている。
「失礼します‥」
頭を下げて中に入る。ラハールさんが先に乗っており、手を差し出してくれた。
すぐにラリーン先生も入ってくる。
最後に安全確認をしたマークバルダ様が入る。今回は護衛という立場に徹すると言う。神様を護衛として使うというのはおかしくないかと私は思うと訴えたが、皆に速攻で却下された。
そのメンバーが乗っても余裕の広さがある馬車中は静まり返っている。
ラリーン先生は私の横に座り、手を握り穢れを浄化してくれていた。
少しだが、体も楽になりラリーン先生にお礼を言おうとするとラリーン先生は目に涙を浮かべていて何もいうことができなくなった。
マークバルダ様が口を開き、これからの予定を確認した。
その後に世界と神様のつながり、穢れがもたらす影響について話し出す。
穢れが神様を蝕めば、世界が破滅に向う。
そうなる前に神様の手で人への裁きが行われる。何度も人は裁かれてきていると‥
神様の穢れを浄化できるのが唯一私だけだとマークバルダ様は言った。
「ヴォルティス様は我々のために穢れを溜めながらも永遠の時を生きなければならない。そんな時、ヴォルティス様の穢れを浄化できる聖女候補と出会った。そなたを聖女とする日を本当に楽しみにされていた。」
普段無表情なマークバルダ様は悲しそうにこちらを見つめている。
涙が溢れてくるのが止められない。
神様‥ごめんなさい。
自分の事ばかり考えて神様の事をちゃんと考えていなかった。
「私が守りきらなければいけなかった。本当に申し訳ない。」
頭を下げるマークバルダ様。神が人に頭を下げるというありえない行為だが、誰も何も言わなかった。
「頭をあげてください。マークバルダ様は悪くありません。神様や浄化の事を知らなかったとはいえ、私が自分で行った事です。私が悪いんです。」
慌ててマークバルダを止める。
ラリーン先生が握る手が強くなる。
「そうですね、リーナさん。自分で闇落ちを選ぶなんて‥バカよ。あなたにきちんと聖女としての教育を行えなかった私の責任ですね。」
ラリーン先生は気づいている。私が何をしたのか。どうして闇落ちしたのか。
頭を横に振りながらラリーン先生の言葉を否定する。
「先生、ごめんなさい。あんなに何度も注意してくれたのに‥私どうしても我慢できなかったんです。先生は悪くないです。」
「どういう事だ?」
マークバルダ様はラリーン先生に問う。
「穢れを浄化してわかりましたが、リーナさんの中にあるのはリーナさん自身の穢れではありません。全て別の人の穢れです。」
マークバルダ様とラハールさんの顔色が変わる。
「どうして、そんな事を‥」
マークバルダ様は呟く。闇落ちの原因はわかったが、理解ができないようだった。
「みんなを助けたかった‥もちろんその思いもありました。だけど、それ以上にもう私は神様の聖女になれないって思いました。みんなを不幸にした私が神様と幸せな時間を過ごすなんて許されない。それならみんなを助けて死んでもいいと思ったんです。」
みんなを助けたい。そう純粋に思ったわけじゃない。自分への罪悪感を減らす為にみんなを助けようとした自分の為の行いだ。
その結果、神様は穢れを浄化できなくなった‥
その事実を知っていたら私はどうしていただろう。
家族や村の人達と神様どっちを選んだのだろうか‥
馬車の車輪の音や鳥の鳴き声が聞こえる。
誰も言葉を発しない。
沈黙が続く中、神様のところに向けて馬車は進んでいく。
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