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第1章

リーナを護りたい

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リーナの部屋のドアがノックされる。
神を出すわけには行かず、ラリーンがそれらの全てに対応していた。
今回も動いたのはラリーンだ。

「私はもう大丈夫ですから!」
リーナはそう言っているが、まだベットの中から動く事も許されていない。

皆の心配はわからないでもない。
聖女でもない者が穢れを浄化し、倒れたのだ。
ヴォルティスの心配が強く、聞く耳を持たないのが一番大きな原因だが。

扉を向こうでラリーンの話し声がボソボソと聞こえてくる。
相手は男性のようだ。

「ん?」
聞き覚えのある声にリーナは反応した。
あの声ってラハールさん?

リーナはベットを抜け出し、扉を開けた。

「リーナさん?」
「リーナ様!」
ラリーンとラハールの声がハモった。

「ラハールさん、久しぶりですね!その節はお世話になりました。」

ラハールは「いえいえ」とにっこり笑う。

「知り合いですか?」
ラリーンはリーナに不審げに聞く。

「はい!私を神殿に連れてきてくれた神官さんです。その時にお世話になりました。」

「お世話なんてしていないですよ。大変な事に巻き込まれましたね。お体の方は大丈夫ですか?」

「はい。もう大丈夫です。心配をかけてすみません。」

二人が打ち解けて話している様子をラリーンは見つめていたが、ラハールに向かい話しかける。

「先ほどの話ですが、あなたがリーナさんの担当神官になるのですか?」

担当神官?
聖女になったら補佐につく神官の事?
まだ、聖女にもなっていないのになぜ?

「そうです。私ならリーナ様はお許しになるだろうと志願しました。今日からお願い致します。」
リーナに向かいラハールは深々と頭を下げる。

「いえ、まだ聖女候補でしかない彼女には必要ありません。」
ラリーン先生は反対する。

もちろん、私もそう思う。
だいたい、担当神官とは聖女の体調管理や仕事調整をしているはずだ。
仕事もしていない私には必要ないものだ。

「穢れが浄化できる時点で十分に聖女としての役割を果たせているというのが神官長の考えです。」

神官長という言葉にラリーンは反応する。
神殿のトップの命令とも言える考えを拒否はできないからだ。
ラハールという神官を受け入れるしかない。

「私に担当神官なんて必要ないと思うのですが、ラハールさんが近くにいてくれるのは嬉しいです!」
リーナはラハールの手を握る。

「リーナ様は一年前から全く変わっていませんね。嬉しくなります。この世界に染まっていない。」
ラハールは嬉しそうに目を細める。

ラハールはリーナの担当神官にはなったが、ラリーンも神々もいきなり現れたラハールを警戒していた。
神殿が送り込んだ神官だから。

ラハールもラリーンがどのような人物なのかわからないため、本音は出さず表面上の対応としていた。

皆、リーナを護りたいという気持ちは変わらない‥
それなのに連携が全く取れていない状態だった。

お互いに警戒していた為、相手の人となりを知り、本音を話し合う関係になるまで時間がかかってしまっていた。
公爵、神殿という大きな権力からリーナを護るためには隙など作ってはいけなかった。
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