【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

文字の大きさ
上 下
27 / 87
第1章

ヴォルティスの暴走

しおりを挟む
アリーティナが穢れをうんだ事、そしてその穢れを聖女候補でしかないリーナが浄化した事は神殿内で瞬く間に広がった。
ルーマが知った情報をヴォルティスに伝えるとすぐにリーナの元に駆けつけた。

ラリーンがリーナについていたが、焦って飛び込んできたこの神が最高神である事はすぐにわかった。
リーナのペンダントと同じ神気を出しているのだから。
焦りの中に怒りも含んでおり、神気の圧がすごい。

「私のかわいい子は無事か⁉︎」
リーナの部屋には医師、神官もいるのに、全く周りが見えていない。
マークバルダ様といい、神とは考えて動くという事をしないのかと思ってしまう。

「人払いをしてくれ、ラリーン。」
まだ、マークバルダ様の方がマシなようだ。

「承知しました‥」

今更遅いでしょうと思ってはいたが、その後どんどんと神が増えた。
人払いは必要だったのはこのためか‥

なぜ、そんなに神がいるのかといえば、最高神の心配の表れらしい。

治癒の神に薬草の神、挙句に安らぎの神までいる。それらの神はリーナさんの回復のために呼ばれ、守りの神であるマークバルダ様が護衛となるそうだ。

頭痛しかしない。
この最高神は何を考えているのか。

そこから丸一日経っても二人の意識は戻っていない。

アリーティナ嬢はまた、穢れをうむ可能性があり、見張りがつけられている。

リーナさんの部屋はまだ、人払い継続中だ。
「マークバルダ様‥」

「言いたい事はわかるが、言うな。」
マークバルダ様も眉間にしわを寄せている。

マークバルダ様の疲れ具合を見るだけで、この最高神の行動に巻き込まれ続けたのがわかってしまう。

「マークバルダ様、いつまでも人払いをしては不審に思われます。」
ラリーンはコソコソとマークバルダに耳打ちをする。

「わかってはいるが‥聖女候補が目覚めるまでヴォルティス様は離れないぞ。」

マークバルダもラリーンも困っていた。

神々がリーナさんの部屋に集まっている。
今、そんな噂が広まるとアリーティナ嬢を刺激しかねない。
その矛先がリーナさんに向かうのは目に見えている。
その事を最高神に言えば、アリーティナ嬢を裁く可能性が大きいとマークバルダ様は言った。
そんな事はさせられないが、この状況が続くのも困る‥



リーナはそんなマークバルダとラリーンの苦悩を感じてか目覚めてくれた。

「あれっ?神様?なんでここにいるんですか?」

リーナは最高神がベッドサイドで手を握っている今の状況がよく把握できていなかった。

「あぁ、私のかわいい子、良かった。倒れたと聞いて本当に焦ったぞ。辛いところはないか?怖くはなかったか?よく頑張ったな。もう大丈夫だから安心するといい。」

今まで一言も喋らず、怒りの圧を出し続けていた最高神の神気が一気に柔らかいものに変わり、リーナを抱きしめた。

「神様、苦しい‥」
抱きしめられたリーナが小さく声を出す。

「あぁ、すまない。」
すぐにリーナを離した。
目覚めたばかりのリーナへの配慮がなかったとわかりやすく最高神は落ち込んでいるのがみえる。

ラリーンはもちろん、神々もヴォルティスの様子に呆気にとられている。
この場で驚かなかったのはマークバルダだけだった。

特にヴォルティスの怖いまでの威厳と神気しか知らない神々は今のヴォルティスの様子と表情に戸惑うしかなかった。

「はい、大丈夫です!心配をかけてごめんなさい。」
しゅんとしたリーナをみてヴォルティスは震えている。

「ルーマはいるか?」

「はーい、いますよ。」

「では、後で頼む。これは絶対に残しておきたい。」

マークバルダはため息をつく。
ヴォルティス様は真面目な顔で真剣な話をしているように見せかけて、今の場面の映像を出せって言っている。
シュンとしたかわいい聖女候補を残しておきたかったのだろうとわかってしまう自分に苦笑する。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。 ――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの? 追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。 その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。 ※序盤1話が短めです(1000字弱) ※複数視点多めです。 ※小説家になろうにも掲載しています。 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

処理中です...