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第1章
ヴォルティス様の心配(マークバルダ視点)
しおりを挟むマークバルダはラリーンと話し聖女候補を2人で守る事となり目を光らせていたが、何も起こらず、一年が過ぎていた。
ヴォルティス様の様子をみて不安になっただけで、取り越し苦労だったかとホッとしていたのだが‥
「おかしい」
ヴォルティス様は呟く。
「どうかされたのですか?」
何のことを言っているのかわからず、マークバルダは質問する。
「私のかわいい子がいつもと違う。」
いつものように聖女候補と会った後、ヴォルティス様は浮かない顔をしていた。
??
何が違う?
マークバルダには聖女候補がいつもと違うと言われても何が違うのかわからない。
ニコニコ笑いながら、いつものように今日あったことを話す聖女候補を思い返していた。
「いつもみたいに元気がない。一年も一緒にいればわかる。」
ヴォルティス様は当然というように言う。
私も一年一緒にいますが‥
マークバルダもそう思うが、ヴォルティスの機嫌が悪くなる為、だんまりを決め込む。
「聖女候補に聞いたら良かったのでは?」
マークバルダは基本的にまっすぐな性格だ。
空気を読む、駆け引きをするのが苦手で、わからない事は聞けというポリシーを持っている。
「私が聞いたら言うしかないだろう。かわいい子が話したくない事を聞き出して明日、来てくれなくなったらどうする。」
真剣な表情で睨まれる。
まぁ、確かに心配して聞いた事でも話せという命令になってしまう可能性はある。
なんせ、相手は神なのだから。
だが、ヴォルティス様と聖女候補はこの一年かけて親密さも信頼関係も増していた。
そんな一言でそれらが崩れるとは思えないし、聖女候補の性格を踏まえても大丈夫だとマークバルダ自身は思っているが‥
それなのに、そんな一言が言えないくらいヴォルティス様は嫌われる事を気にして動けないのか。
日に日に聖女候補への思いは強くなっていっているのがわかる。
ヴォルティス様はひたすら聖女候補を見つめ、飽きるどころか執着は強くなっているのだ。
ヴォルティス様は毎日、聖女候補と会う事を何より大切にしていた。
雨が降ってベンチで会うのが中止になるのが嫌で天候の調整や庭の保護までした。
神の加護と神殿側は喜んでいたが、ヴォルティス様はそんな事どうでもいい。
全ては聖女候補との時間のためだ。
ヴォルティス様は少し悩んだのち
「情報の女神ルーマに調べてもらおう。」
とポソリといった。
情報の女神ルーマはヴォルティス様が人を裁く前に人の世界の調査を行う。
穢れの多く生まれているところと少ないところを見極め、効率的に穢れを減らすために。
ルーマはヴォルティス様の目となり世界を見てヴォルティス様に伝える。
そう、それがルーマの役目だ。
「ルーマを付けるのですか?」
ヴォルティス様は頷く。
聖女候補にルーマを付けることにより、ヴォルティス様と会っていない時の様子もわかる。
だが、聖女候補の知らない所で見張られていたと気づけば、不信感につながる可能性も大きいと思うのだが。
元気がない理由を聞くより大きな問題になると言いたかったが、あまりに思いつめた様子のヴォルティス様に何も言う事ができなかった。
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