【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第1章

神様との出会い

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「私が側にいる」と言った彼はその言葉の通り黙ったまま側にいてくれた。
たったままも悪いと思い、近くにあったベンチに座ってもらった。

彼が座ると
「こちらに来なさい。」
ベンチをポンポンと叩き、隣に座るよう言ってくれる。

「はい」
私も素直に従ったが、内心ドキドキしている。
こんな綺麗で上品な人は平民じゃない。
貴族のマナーや話し方など知らないし、幻滅はされたくない。
隣にそのまま、座っても大丈夫だろうか‥
アリーティナから「みすぼらしい」と言われた事や貴族達からコソコソ話されていたのを思い出していた。

緊張しながら「失礼します」と小声で言いながら、座るとクスリと笑う彼と目があった。

「緊張しなくていい。普段通りで構わない。」

 そう言われても‥
ニッコリ笑う彼は眩しくて、直視できない。
そのキラキラオーラを何とかしてくれたらまだ大丈夫なのに‥
ドキドキして落ち着かない。

「私は話す事が得意ではないし、隣にいるのは苦痛か?」
ソワソワする私を見て早くここを離れたいと思われたのか、彼はシュンと悲しそうな顔をする。

「違います!」
慌てて顔を横にブンブン振る。
何か話をしなくちゃ。

私は家族や村の事、聖女候補になった事を話した。
思いついた事を話していたが、「そうか」と言いながらニコニコと聞いてくれていた。

どのくらいその場にいたのだろう。
私が一方的にしゃべっているだけだったけど、ホームシックはどっかに飛んでいた。
誰かに聞いてもらって気持ちが楽になった。
単純だなと自分でも思う。

「ヴォルティス様」という男性の声で中断される。
また綺麗な人が出てきた。
中性的なヴォルティスと呼ばれた彼とはまた違った男らしい感じの人だった。
赤い髪と意志の強そうな茶色の瞳が印象的だ。

「マークバルダか‥」
嫌そうに答える。

「お楽しみ中、申し訳ありませんが、もうそろそろお時間かと。」
申し訳なさそうに頭を下げる。

ヴォルティスさんはチラッとこちらを見る。
無理してここにいてくれたのだと気づいた。

「私はもう大丈夫ですから。ありがとうございます!」
私は慌てて頭を下げる。

「そうか、よかった。また、私の話し相手になってくれるか?」

話し相手?
どちらか言うと私の話を聞いてもらっただけのような‥

「はい、いつでも!」

「最後に触れてもいいか?」
触れる?

「えっ?いいですけど。」
私がそういうとヴォルティスさんは手を握ってきた。
あたたかい優しいものに包まれる感じがする。
この感覚は‥前にもあった。

ヴォルティスさんと私の手が繋がった瞬間、パァと握られた手から光が漏れる。

「あぁ、やっぱり‥」
ヴォルティスさんは嬉しそうに手を見ている。

ヴォルティスさんはマークバルダという男性を見て頷き、こちらを向いて笑う。

何が起こっているの?
きっとこの中で状況がわかっていないのは私だけなのだろう。

「また、ゆっくりと話そう。私のかわいい子‥」

えっ?
私のかわいい子?

風が吹いた。
その瞬間に今までそこにいたヴォルティスさんとマークバルダさんは消えていた。

「えぇぇぇぇ!!!」
私の驚きか悲鳴かわからないような声が響き渡った。

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