【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第2章

リーナの処刑2

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「公開処刑はなくなったはずでしょ!どうしてこんな事に!」
ラリーンはリーナのいない牢獄で叫んでいる。
神殿も王家からも公開処刑はなくす事で合意を得ていた。
マークバルダ様の名前を出しても逆らう者がいるなんて‥

「わかりません。状況が変わったといきなり連れていかれました。」
看守も状況がわかっていないようだ。

ラリーンがリーナの処刑前の祈りに訪れた時にはもうリーナは公開処刑の場に連れていかれた後だった。

なぜ、彼女がこんな目に合うの?
リーナさんは何も悪い事はしていない‥
マークバルダから闇落ちの真相を聞かされていたラリーンは涙が止まらない。

公開処刑の場までは民衆の前を通っていく。
闇落ちした聖女候補など、民衆にどのような扱いを受けるかなんてわかりきっている。

それに‥最高神もマークバルダ様も現状を把握されているはずだ。
こんな事をして許されるはずがない。
もう全て終わってしまった‥
リーナと最高神の関係を知っているラリーンは、最高神が人を許すはずなどないとわかっている。

ラリーンはその場を飛び出した。





突然決まった公開処刑にも関わらず、多くの民衆がリーナの処刑を見に来ていた。
闇落ちした聖女を人々は冷たい目で見ている。
自分達を救ってくれるはずが自分達を脅かす存在になるなんて許せるはずもなかった。

「闇落ちの聖女だ!早く殺せ!」
人々は叫ぶ。リーナに向かい石を投げる者もおり、頭にあたり血が流れる。
リーナはそれらの悪意をボンヤリと見ていた。

その民衆の様子に刺激をされたのかリーナの中の穢れがまた強く暴れリーナは胸を押さえ苦しむ。

その様子を公爵は笑いながら見ている。
「いい気味だ。自分の立場もわきまえず、調子にのるからこういう事になるのだ。さっさと殺されてしまえ、クズが!」

「お前の方がよほどクズだ‥」
公爵の独り言に答える者がいた。

「誰だ⁉︎」
公爵の後ろにこの世のものとは思えない整った顔の青年が睨みつけるように立っている。その表情には人間らしさなど全くなく、澄み透る青い目は冷ややかに公爵を見下ろしていた。
「‥人とは本当に愚かだ。」
青年の呟く。

「はっ?なんだとっ‥
公爵が怒鳴ろうとした瞬間、急に景色が変わった。

リーナの処刑台の上に青年と公爵が共に立っている。

「何故、こんなところに!」
公爵はパニックになってキョロキョロと辺りを見渡した。
民衆もいきなり現れた公爵と美しい青年をみて唖然としている。

「神様‥」

処刑台で服もボロボロで石をぶつけられ血まみれになっていたリーナは呟く。

処刑台の周りにはたくさんの人が集まっていたにも関わらず誰一人言葉を発しない。
あまりに神様と呼ばれた青年の威圧感が強すぎた。立っているだけで空気がピリピリと揺れている。

静寂の中、神様とリーナは見つめ合う。

処刑台の周りは強風が吹き荒れる。
まるで神の怒りに同調するように‥

神様は冷たい視線をリーナに向けた。神様から初めて向けられたその視線を見て、今までのように優しい眼差しはもう向けてもらえない事がわかってしまう。

失望された‥

神様に会う前に処刑されたかった。リーナは死ぬ恐怖より神様に失望させる恐怖の方が大きかったから。

私は闇落ちした‥もう神様と結ばれることはない。そばにいることもできない。
あんなに幸せだったのに。ずっと一緒にいると約束したのに。

「神様の手で私を処刑してください。」

せめて神様の手にかかって死にたい。
闇落ちした私がそんな事を望む事は許されないだろうか。

「私のかわいい子‥お前の名を呼びたかった。」
顔を歪める神様の声は冷たかった。だが、その声はとても苦しそうに震えていた。


しばらく、時が止まったように静まり返った。
リーナはポロポロと涙を流している。

「もう、かわいい子には触れる事も許されない‥」

神様は石を投げ込まれ顔も傷だらけになっているリーナに近づき、手をかざした。決して触れることのない距離。
その瞬間、リーナの傷は消えたが、いつもより遠い距離に心の痛みは増した。

「遅くなったな、すまなかった。」
神様が言うと処刑台が壊れ、リーナを縛っていた縄が切れた。
リーナはまだ呆然としている。

神様は周囲を見渡し、冷たい声で笑う。
「私のかわいい子に手を出した報いをしようか。」

その顔はいつもの優しい神様ではなかった。


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