3 / 87
第1章
リーナの旅立ち
しおりを挟む
リーナの旅立ちの日。
「リーナ、あなたならできるわ。私の大切な自慢の娘だもの。みんなを助けてあげて。」
大好きなお母さんは目に少し涙を浮かべているが、笑いながら頭を撫でてくれた。
もう頭を撫でられる歳でもないんだけどなと思いながらも嬉しくて、目を閉じる。
「お姉ちゃん!行かないで!」
7歳のルートと5歳のネマの弟2人は泣いて抱きついてくる。
こんな風に2人が泣くのは珍しい。
ここを離れたら次いつ戻ってこれるのかもわからない。
行かないって言ってあげたいけど‥
そう言う代わりに2人をギューと抱きしめる。
「ごめんね、お姉ちゃんは行かなくちゃいけないの。ルート、ネマ、2人とも大好きだよ。」
彼らに泣かれるのは辛い。
「ほら、2人とも笑って送り出してあげて。リーナはみんなを助ける凄い人になる為にここを出るんだから。応援してあげなくちゃ。泣き顔で別れるのは嫌でしょう?笑って。」
お母さんが弟2人に声をかける。
お母さんに言われて無理に笑おうとしている2人を見ると心が痛んだ。
お母さんが働いている間は私がこの年の離れた2人の面倒を見ていたのだ。
姉というより、親のような感じが近いかもしれない。
私も2人にニコッと笑った。
そうやって笑顔で送り出してくれたお母さんや弟達、そして村の人たち。
「お母さん、みんな。私立派な聖女になるからね!みんなを助けられるように頑張るから!」
今日、リーナは村を出る。
聖女になる為に王都にある神殿に向かうのだ。
泣きたくない。
せっかくみんなが笑って送り出してくれたのに。
私が聖女になるって決めたのをみんなが応援してくれたのに。
目に溜まった涙を手でゴシゴシとふく。
「皆、素敵な方々ですね。」
歩きながら神官は私に話しかけてきた。
「はい、私の自慢の家族と村です。早くみんなに恩返しがしたいです。」
リーナはニッコリ笑う。
聖女になれば世界を救う‥
リーナは自分がそんな大それた存在だとは思えず、最初は断った。
聖女になればお金がたくさんもらえるようになると神官は言った。
この村に仕送りができる。
その事が嬉しくて、何も考えず、聖女になると言ってしまった。
仕送りができるだけではなくて、聖女として穢れを浄化できれば穢れの森に怯えなくて良くなるらしい。
私がみんなの幸せを守るんだから。
自分がみんなの役に立てることが嬉しかった。
「そうですか。きっとリーナ様の望みは叶いますよ。」
神官は微笑む。
神官は村でリーナの母と話したのを思い出していた。
リーナを聖女候補として王都に連れていきたいと伝えるとリーナの母は驚いていた。
そんな母親にお金を渡し、許可を取ろうとした。
働いているリーナを連れて行くのだ、その分の保証のつもりだったが‥
母親は拒否をした。
貧しくても娘を売り渡すようなマネはできないと。
母親はリーナの意思を尊重するといい、リーナと話し合う時間をくれた。
リーナを説得できれば構わないと約束してくれた。
あの母だからこそ、この子ありか‥
心がとても澄んでいる。
自分の為ではなく、人の幸せを考えられる人だ。
神は穢れを嫌う。
聖女は神と結ばれる必要があるため、一番大切な条件だ。
神官はリーナの浄化を体感しており、他の聖女と違うと感じていた。
この方が聖女様になれば、きっと世界は救われる。
神官はそんな期待をしていた。
これから待ち受ける悲劇も知らずにリーナ達は期待を胸に歩き始めていた。
「リーナ、あなたならできるわ。私の大切な自慢の娘だもの。みんなを助けてあげて。」
大好きなお母さんは目に少し涙を浮かべているが、笑いながら頭を撫でてくれた。
もう頭を撫でられる歳でもないんだけどなと思いながらも嬉しくて、目を閉じる。
「お姉ちゃん!行かないで!」
7歳のルートと5歳のネマの弟2人は泣いて抱きついてくる。
こんな風に2人が泣くのは珍しい。
ここを離れたら次いつ戻ってこれるのかもわからない。
行かないって言ってあげたいけど‥
そう言う代わりに2人をギューと抱きしめる。
「ごめんね、お姉ちゃんは行かなくちゃいけないの。ルート、ネマ、2人とも大好きだよ。」
彼らに泣かれるのは辛い。
「ほら、2人とも笑って送り出してあげて。リーナはみんなを助ける凄い人になる為にここを出るんだから。応援してあげなくちゃ。泣き顔で別れるのは嫌でしょう?笑って。」
お母さんが弟2人に声をかける。
お母さんに言われて無理に笑おうとしている2人を見ると心が痛んだ。
お母さんが働いている間は私がこの年の離れた2人の面倒を見ていたのだ。
姉というより、親のような感じが近いかもしれない。
私も2人にニコッと笑った。
そうやって笑顔で送り出してくれたお母さんや弟達、そして村の人たち。
「お母さん、みんな。私立派な聖女になるからね!みんなを助けられるように頑張るから!」
今日、リーナは村を出る。
聖女になる為に王都にある神殿に向かうのだ。
泣きたくない。
せっかくみんなが笑って送り出してくれたのに。
私が聖女になるって決めたのをみんなが応援してくれたのに。
目に溜まった涙を手でゴシゴシとふく。
「皆、素敵な方々ですね。」
歩きながら神官は私に話しかけてきた。
「はい、私の自慢の家族と村です。早くみんなに恩返しがしたいです。」
リーナはニッコリ笑う。
聖女になれば世界を救う‥
リーナは自分がそんな大それた存在だとは思えず、最初は断った。
聖女になればお金がたくさんもらえるようになると神官は言った。
この村に仕送りができる。
その事が嬉しくて、何も考えず、聖女になると言ってしまった。
仕送りができるだけではなくて、聖女として穢れを浄化できれば穢れの森に怯えなくて良くなるらしい。
私がみんなの幸せを守るんだから。
自分がみんなの役に立てることが嬉しかった。
「そうですか。きっとリーナ様の望みは叶いますよ。」
神官は微笑む。
神官は村でリーナの母と話したのを思い出していた。
リーナを聖女候補として王都に連れていきたいと伝えるとリーナの母は驚いていた。
そんな母親にお金を渡し、許可を取ろうとした。
働いているリーナを連れて行くのだ、その分の保証のつもりだったが‥
母親は拒否をした。
貧しくても娘を売り渡すようなマネはできないと。
母親はリーナの意思を尊重するといい、リーナと話し合う時間をくれた。
リーナを説得できれば構わないと約束してくれた。
あの母だからこそ、この子ありか‥
心がとても澄んでいる。
自分の為ではなく、人の幸せを考えられる人だ。
神は穢れを嫌う。
聖女は神と結ばれる必要があるため、一番大切な条件だ。
神官はリーナの浄化を体感しており、他の聖女と違うと感じていた。
この方が聖女様になれば、きっと世界は救われる。
神官はそんな期待をしていた。
これから待ち受ける悲劇も知らずにリーナ達は期待を胸に歩き始めていた。
0
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。
――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?
追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※序盤1話が短めです(1000字弱)
※複数視点多めです。
※小説家になろうにも掲載しています。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる