【完結】聖騎士を死なせた聖女は平民として生きる?

みやちゃん

文字の大きさ
上 下
37 / 49

37

しおりを挟む
ノルディはレピアを強く抱きしめたまま動かない。
「レピア様、後からいくらでも罰は受ける。だが、今はこのままでいてくれ。もうこれ以上自分を責めるな。幸せになる権利は民だけではなく、レピア様にだってあるのだから。」

抱きしめながらノルディはレピアの耳元で囁いた。
その言葉にもレピアは首を横に振る。

「結局、私達の言葉はレピア様に届かないのだな…」
抱きしめられて顔は見れないが、ノルディの悲しそうな声が聞こえる。

「だが、もうあなたを一人にはできない。私の妃とし見張らせてもらう。これは命令だ。アールを罪人にしたくはないだろう?真実が皆に知られるとこの街にいる幼馴染はどうなるだろうな。」
レピアは抱きしめられながらも無理やり上を向いてノルディを見た。

「やっと目があった。私の妃になる?アールを罪人にする?好きな方を選んでいい。」
ノルディはレピアの涙を指で拭った。
その時のノルディの悪魔のような笑みにレピアはゾクリとした。

「どうしてそんな事を言うの?ノルディ…様はいつだって優しくて…」

「レピア様に危険がないならいくらでも優しくしよう。だが、今のレピア様は自分を傷つけたがっている。あなたを失うわけにはいかない。今の私ならあなたを全てのものから守れる。」

「聖女だからそんなに必要としているの?」

「どう思われてもいい。どうせ私の言葉などレピア様には届かないのだから。で、どうする?私の妃になる?あなたを絶対に守るよ。ちなみに自分で傷付けるのもなしだから。」

レピアの目からハラハラと涙がこぼれる。

「あなたの妃になれば、このままアールを静かに眠らせてくれるの?」
アールの遺骨は神殿からこの地の家族の元に返されている。

だが、罪人となれば別だ。
死んでいる本人だけではなく家族も罰を受ける。幼馴染もアールの行いの原因となったのだから罰は避けられない。
アールの名は聖女に害を加えた大罪人として永遠に受け継がれてしまう。
それほどの大きな罪。

「ああ、約束しよう。この街と私達だけの秘密でいい。」
ノルディはできる限り優しくレピアに微笑む。

「わかった…あなたの妃になり、聖女としてこの国を支えていくわ。だけど私が愛しているのはアールだけだから。」
レピアはノルディを真の夫とする事を拒んだ。

聖女や神殿の権威を地に落としたレピアの後ろ盾が必要な事はレピア自身痛いほどわかっていた。
皇室の後ろ盾が必要。
そして皇室も聖女が必要。
持ちつ持たれつの関係ではあるが、妃という立場はレピアのプラスになるだろう。

心はアールに捧げる。
レピアはそれだけは譲れなかった。

「…そんな事はわかっている。あなたに私の妃としての義務は求めない。聖女でいてくれさえすればそれでいい。」
ノルディはレピアから否定されるのは想定済みだった。

だが、もしかしたら、万が一…
いつか自分の気持ちに応えてくれるかもしれない。
そんな期待が粉々に砕け散った瞬間だった。

レピア様が生きていてくれればいい。
いつか笑ってくれればそれでいい。
その為に自分の全てをかけて守る。

ノルディは自分の想いに蓋をしてそう自分に言い聞かせた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。

下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。 小説家になろう様でも投稿しています。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

ゲームと現実の区別が出来ないヒドインがざまぁされるのはお約束である(仮)

白雪の雫
恋愛
「このエピソードが、あたしが妖魔の王達に溺愛される全ての始まりなのよね~」 ゲームの画面を目にしているピンク色の髪の少女が呟く。 少女の名前は篠原 真莉愛(16) 【ローズマリア~妖魔の王は月の下で愛を請う~】という乙女ゲームのヒロインだ。 そのゲームのヒロインとして転生した、前世はゲームに課金していた元社会人な女は狂喜乱舞した。 何故ならトリップした異世界でチートを得た真莉愛は聖女と呼ばれ、神かかったイケメンの妖魔の王達に溺愛されるからだ。 「複雑な家庭環境と育児放棄が原因で、ファザコンとマザコンを拗らせたアーデルヴェルトもいいけどさ、あたしの推しは隠しキャラにして彼の父親であるグレンヴァルトなのよね~。けどさ~、アラブのシークっぽい感じなラクシャーサ族の王であるブラッドフォードに、何かポセイドンっぽい感じな水妖族の王であるヴェルナーも捨て難いし~・・・」 そうよ! だったら逆ハーをすればいいじゃない! 逆ハーは達成が難しい。だが遣り甲斐と達成感は半端ない。 その後にあるのは彼等による溺愛ルートだからだ。 これは乙女ゲームに似た現実の異世界にトリップしてしまった一人の女がゲームと現実の区別がつかない事で痛い目に遭う話である。 思い付きで書いたのでガバガバ設定+設定に矛盾がある+ご都合主義です。 いいタイトルが浮かばなかったので(仮)をつけています。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

処理中です...