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ハンバルが帰った後、ノアは片付けをしていた。

「そろそろ寝ようかしら。レピア様が夕食をあまり取られなかったけれど大丈夫かしら…」

ノアは先に寝かせたはずのレピアの様子を少し見て就寝しようと思いレピアの部屋を訪れた。
レピアが寝ているかもしれないため、ノアは静かにドアを開け中の様子を伺う。

暗い月明かりしか無い部屋の中でレピアはベットに座っていた。
何かをしている様子はなく、部屋に入ってきたノアにも気づかないくらいボンヤリしている。
「レピア様、眠れませんか?」
ノアはレピアに近づき話しかけた。

「……」
レピアは声をかけられてもノアの方を見ない。

「レピア様…今日街で何か言われたのですか?」
最近は少なくなっていたが、こんな風にレピアが周りに反応しない日が時々あった。
特に街に行った夜にこのような症状が出ることが多い。

街に行くという行為はレピアにとって苦痛が大きいのだとノアは思っている。

今日はハンバル様とも和やかに話されていたのに…無理をしていたのだろうか。

ベットのそばに膝をつきレピアを見つめながらノアは言った。

「…レピア様、もうこの街は出ましょう。これ以上レピア様が苦しむ必要などありません。」
ノアの目から涙が溢れる。

「……」
レピアの反応はない。

レピア様には笑っていてほしいのに。
私は何の役にも立たない。
今私にできるのはレピア様にゆっくり休んでもらうことだけ…

「失礼します。この体勢は辛いでしょうから横になりましょうね。」
そう声をかけるとノアはレピアの背中を支えベットに横たえた。

レピアの体を支えたノアの腕にレピアの温もりが伝わった。

生きている。
それなのに…生への執着はない。

レピア様はこの先どうやって生きていくのか。
一生このまま罪を背負って生きていくのだろうか。

「もう寝ましょう。横にいますからね。」
ノアはベットに椅子を持ってきて横になったレピアの手を握った。

ノアはノルディから手紙を受け取っていた。
もう少ししたらレピアを迎えにくるという内容だった。

それまでレピア様には無理をさせないように。

そう締めくくられていた手紙。
ノルディがどのような気持ちなのかノアには痛いほどわかる。

ノアだってレピアが街に行くのはやめてほしい。
だが、止めることで贖罪を望むレピア様の精神的な苦痛が強くなったら…そう思うと怖くて止められなかった。

「どうしてあの時ノルディ様ではなくてアールを推してしまったのか…」

レピアから危険を遠ざけるのもノアの仕事。
アールの過去をしっかり調べておけば…
そう思うとノアは悔やんでも悔やみきれない。

アールに惚れたレピアが悪いのではない。
周りが自分たちの有利なようにアールとの関係をお膳立てをしたのだ。

ノルディ様ならレピア様をこんな風に苦しめることなんて絶対にしないのに。
レピアからの愛が得られなくても献身的に支えていたノルディの姿をノアは思い出していた。

早くここからレピア様を連れ出してください。
ノアはそう願うことしかできなかった。

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