30 / 49
30
しおりを挟む
ハンバルが帰った後、ノアは片付けをしていた。
「そろそろ寝ようかしら。レピア様が夕食をあまり取られなかったけれど大丈夫かしら…」
ノアは先に寝かせたはずのレピアの様子を少し見て就寝しようと思いレピアの部屋を訪れた。
レピアが寝ているかもしれないため、ノアは静かにドアを開け中の様子を伺う。
暗い月明かりしか無い部屋の中でレピアはベットに座っていた。
何かをしている様子はなく、部屋に入ってきたノアにも気づかないくらいボンヤリしている。
「レピア様、眠れませんか?」
ノアはレピアに近づき話しかけた。
「……」
レピアは声をかけられてもノアの方を見ない。
「レピア様…今日街で何か言われたのですか?」
最近は少なくなっていたが、こんな風にレピアが周りに反応しない日が時々あった。
特に街に行った夜にこのような症状が出ることが多い。
街に行くという行為はレピアにとって苦痛が大きいのだとノアは思っている。
今日はハンバル様とも和やかに話されていたのに…無理をしていたのだろうか。
ベットのそばに膝をつきレピアを見つめながらノアは言った。
「…レピア様、もうこの街は出ましょう。これ以上レピア様が苦しむ必要などありません。」
ノアの目から涙が溢れる。
「……」
レピアの反応はない。
レピア様には笑っていてほしいのに。
私は何の役にも立たない。
今私にできるのはレピア様にゆっくり休んでもらうことだけ…
「失礼します。この体勢は辛いでしょうから横になりましょうね。」
そう声をかけるとノアはレピアの背中を支えベットに横たえた。
レピアの体を支えたノアの腕にレピアの温もりが伝わった。
生きている。
それなのに…生への執着はない。
レピア様はこの先どうやって生きていくのか。
一生このまま罪を背負って生きていくのだろうか。
「もう寝ましょう。横にいますからね。」
ノアはベットに椅子を持ってきて横になったレピアの手を握った。
ノアはノルディから手紙を受け取っていた。
もう少ししたらレピアを迎えにくるという内容だった。
それまでレピア様には無理をさせないように。
そう締めくくられていた手紙。
ノルディがどのような気持ちなのかノアには痛いほどわかる。
ノアだってレピアが街に行くのはやめてほしい。
だが、止めることで贖罪を望むレピア様の精神的な苦痛が強くなったら…そう思うと怖くて止められなかった。
「どうしてあの時ノルディ様ではなくてアールを推してしまったのか…」
レピアから危険を遠ざけるのもノアの仕事。
アールの過去をしっかり調べておけば…
そう思うとノアは悔やんでも悔やみきれない。
アールに惚れたレピアが悪いのではない。
周りが自分たちの有利なようにアールとの関係をお膳立てをしたのだ。
ノルディ様ならレピア様をこんな風に苦しめることなんて絶対にしないのに。
レピアからの愛が得られなくても献身的に支えていたノルディの姿をノアは思い出していた。
早くここからレピア様を連れ出してください。
ノアはそう願うことしかできなかった。
「そろそろ寝ようかしら。レピア様が夕食をあまり取られなかったけれど大丈夫かしら…」
ノアは先に寝かせたはずのレピアの様子を少し見て就寝しようと思いレピアの部屋を訪れた。
レピアが寝ているかもしれないため、ノアは静かにドアを開け中の様子を伺う。
暗い月明かりしか無い部屋の中でレピアはベットに座っていた。
何かをしている様子はなく、部屋に入ってきたノアにも気づかないくらいボンヤリしている。
「レピア様、眠れませんか?」
ノアはレピアに近づき話しかけた。
「……」
レピアは声をかけられてもノアの方を見ない。
「レピア様…今日街で何か言われたのですか?」
最近は少なくなっていたが、こんな風にレピアが周りに反応しない日が時々あった。
特に街に行った夜にこのような症状が出ることが多い。
街に行くという行為はレピアにとって苦痛が大きいのだとノアは思っている。
今日はハンバル様とも和やかに話されていたのに…無理をしていたのだろうか。
ベットのそばに膝をつきレピアを見つめながらノアは言った。
「…レピア様、もうこの街は出ましょう。これ以上レピア様が苦しむ必要などありません。」
ノアの目から涙が溢れる。
「……」
レピアの反応はない。
レピア様には笑っていてほしいのに。
私は何の役にも立たない。
今私にできるのはレピア様にゆっくり休んでもらうことだけ…
「失礼します。この体勢は辛いでしょうから横になりましょうね。」
そう声をかけるとノアはレピアの背中を支えベットに横たえた。
レピアの体を支えたノアの腕にレピアの温もりが伝わった。
生きている。
それなのに…生への執着はない。
レピア様はこの先どうやって生きていくのか。
一生このまま罪を背負って生きていくのだろうか。
「もう寝ましょう。横にいますからね。」
ノアはベットに椅子を持ってきて横になったレピアの手を握った。
ノアはノルディから手紙を受け取っていた。
もう少ししたらレピアを迎えにくるという内容だった。
それまでレピア様には無理をさせないように。
そう締めくくられていた手紙。
ノルディがどのような気持ちなのかノアには痛いほどわかる。
ノアだってレピアが街に行くのはやめてほしい。
だが、止めることで贖罪を望むレピア様の精神的な苦痛が強くなったら…そう思うと怖くて止められなかった。
「どうしてあの時ノルディ様ではなくてアールを推してしまったのか…」
レピアから危険を遠ざけるのもノアの仕事。
アールの過去をしっかり調べておけば…
そう思うとノアは悔やんでも悔やみきれない。
アールに惚れたレピアが悪いのではない。
周りが自分たちの有利なようにアールとの関係をお膳立てをしたのだ。
ノルディ様ならレピア様をこんな風に苦しめることなんて絶対にしないのに。
レピアからの愛が得られなくても献身的に支えていたノルディの姿をノアは思い出していた。
早くここからレピア様を連れ出してください。
ノアはそう願うことしかできなかった。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!
未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます!
会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。
一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、
ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。
このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…?
人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、
魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。
聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、
魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。
魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、
冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく…
聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です!
完結まで書き終わってます。
※他のサイトにも連載してます
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される
沙寺絃
恋愛
女子高生のエリカは異世界に召喚された。聖女と呼ばれるエリカだが、王子の本命は一緒に召喚されたもう一人の女の子だった。「 聖女は二人もいらない」と城を追放され、魔族に命を狙われたエリカを助けたのは、銀髪のイケメン騎士フレイ。 圧倒的な強さで魔王の手下を倒したフレイは言う。
「あなたこそが聖女です」
「あなたは俺の領地で保護します」
「身柄を預かるにあたり、俺の婚約者ということにしましょう」
こうしてエリカの偽装結婚異世界ライフが始まった。
やがてエリカはイケメン騎士に溺愛されながら、秘められていた聖女の力を開花させていく。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる