21 / 49
21
しおりを挟む
「あれから聖女様の様子はどうだ?」
大神官はノアから報告を受けていた。
ノルディも同席している。
ノルディは呼び出された日からずっと神殿に泊まり込んでいた。
毎日状況は変わらないが、もしかしたらという期待する気持ちがあった。
ノアが横に首を振る。
「お食事もお取りになりません。治癒師により何とか命を繋いでいる状態です。」
目を覚ましてからもう何日も立つ。
それなのにレピアは反応は全くなく食事も水分も一切取らなかった。
「アールはなんて愚かなことをしたのだ…」
今後魔の扉が開いた時、どれほどの犠牲がでるかわかっているのか…
「アールはレピア様の加護を受け入れていたのだろうか。」
今回、レピア様が死ぬのも構わないと思ったのだろうか。
それとも自分が死ぬのを前提にしていたのか。
前者ならと考えるとノルディの怒りはおさまらなかった。
「もちろんです。その受け入れがなければ護衛にはなれません。ただ、アールは聖騎士です。治癒師ではありません。血の力を知りません。」
「…血の力を知らなかった?」
「そうです。それは最期の力を振り絞す捨て身の聖術です。いわば禁忌的なもので治癒師以外には伝えられません。悪用されれる恐れがありますから。」
治癒師にも救えない命がある。
それを命をかけて救えと強制する者が出るのを避けるために。
「アールはレピア様を犠牲にしても良いと考えていたのだろうか?」
「何と言って聖女様を動かしたのかわかりませんが、そうなる事も考えていたでしょうね。神殿に来て一番最初に教えられる事ですから。それで加護が働き自分が死ぬと思ったのかはわかりません。」
加護は事故や暗殺に向けての守りだった。
魔の扉に手を出す危険が自分に降りかかると考えただろうか。
大神官である自分ですら加護がそんな風に作動した事に驚いた。
アールにどういう意図があったのか本人にしかわからない。
今となってはもう永遠にわからないだろう。
だが、魔の扉に手を出す恐ろしさはしっかりと教えられていたはずだ。
レピアがいくら稀代の聖女であっても魔の扉の力には勝てない。
レピアといえど人間なのだから。
過去に聖女と聖力を使える神官で魔の扉を開く前に破壊するという試みがあった。
理論的にはできるはずだったが、その当時の聖女、神官は全て死んだ。
聖力を持つ聖女、神官の不在は魔の扉の力が消失するまで魔物が流入する結果となり、民の被害も大きなものとなった。
それからは魔の扉が開ききるまでは手出ししないというのが絶対的な決まりとなっていた。
レピアは聖女の限界を超え体が内側から壊れてはしまったが、レピアの聖力とアールの血の力だけで魔の扉が閉められたのは神殿内に大きな衝撃を与えた。
「調べによると今回魔の扉が開くはずだった街はアールの故郷でした。」
「自分の故郷を守るために禁忌を侵してレピア様に魔の扉の場所を教えたのか?」
ノルディは呆然としていた。
レピア様と結婚するはずだった。
アールもレピア様を愛しているように見えた。
「レピア様が死ぬかもしれないとわかっていて故郷の街を優先したのか?」
ノルディの問いに大神官もノアも黙った。
そうだとは信じたくなかった。
だが…
「…他の聖騎士より聖女様の護衛にも関わらず討伐に出ると言って聞かなかったと報告を受けています。」
大神官はノルディの問いに返答をした。
「どうして聖女を最優先にできない奴がそばにいたのだ?レピア様はあんなに奴のことを慕っていたのに…」
ノルディは何もかもが許せなかった。
目の前の大神官やノアによりレピア様から引き離された事。
アールがレピア様よりも故郷を優先した事。
何よりそんな奴と知らずにレピア様を任せた自分に。
全てが間違いだった。
「私がレピア様の側にいる!もう口出しはさせない。」
ノルディは部屋を飛び出し皇城に手紙を出した。
大神官はノアから報告を受けていた。
ノルディも同席している。
ノルディは呼び出された日からずっと神殿に泊まり込んでいた。
毎日状況は変わらないが、もしかしたらという期待する気持ちがあった。
ノアが横に首を振る。
「お食事もお取りになりません。治癒師により何とか命を繋いでいる状態です。」
目を覚ましてからもう何日も立つ。
それなのにレピアは反応は全くなく食事も水分も一切取らなかった。
「アールはなんて愚かなことをしたのだ…」
今後魔の扉が開いた時、どれほどの犠牲がでるかわかっているのか…
「アールはレピア様の加護を受け入れていたのだろうか。」
今回、レピア様が死ぬのも構わないと思ったのだろうか。
それとも自分が死ぬのを前提にしていたのか。
前者ならと考えるとノルディの怒りはおさまらなかった。
「もちろんです。その受け入れがなければ護衛にはなれません。ただ、アールは聖騎士です。治癒師ではありません。血の力を知りません。」
「…血の力を知らなかった?」
「そうです。それは最期の力を振り絞す捨て身の聖術です。いわば禁忌的なもので治癒師以外には伝えられません。悪用されれる恐れがありますから。」
治癒師にも救えない命がある。
それを命をかけて救えと強制する者が出るのを避けるために。
「アールはレピア様を犠牲にしても良いと考えていたのだろうか?」
「何と言って聖女様を動かしたのかわかりませんが、そうなる事も考えていたでしょうね。神殿に来て一番最初に教えられる事ですから。それで加護が働き自分が死ぬと思ったのかはわかりません。」
加護は事故や暗殺に向けての守りだった。
魔の扉に手を出す危険が自分に降りかかると考えただろうか。
大神官である自分ですら加護がそんな風に作動した事に驚いた。
アールにどういう意図があったのか本人にしかわからない。
今となってはもう永遠にわからないだろう。
だが、魔の扉に手を出す恐ろしさはしっかりと教えられていたはずだ。
レピアがいくら稀代の聖女であっても魔の扉の力には勝てない。
レピアといえど人間なのだから。
過去に聖女と聖力を使える神官で魔の扉を開く前に破壊するという試みがあった。
理論的にはできるはずだったが、その当時の聖女、神官は全て死んだ。
聖力を持つ聖女、神官の不在は魔の扉の力が消失するまで魔物が流入する結果となり、民の被害も大きなものとなった。
それからは魔の扉が開ききるまでは手出ししないというのが絶対的な決まりとなっていた。
レピアは聖女の限界を超え体が内側から壊れてはしまったが、レピアの聖力とアールの血の力だけで魔の扉が閉められたのは神殿内に大きな衝撃を与えた。
「調べによると今回魔の扉が開くはずだった街はアールの故郷でした。」
「自分の故郷を守るために禁忌を侵してレピア様に魔の扉の場所を教えたのか?」
ノルディは呆然としていた。
レピア様と結婚するはずだった。
アールもレピア様を愛しているように見えた。
「レピア様が死ぬかもしれないとわかっていて故郷の街を優先したのか?」
ノルディの問いに大神官もノアも黙った。
そうだとは信じたくなかった。
だが…
「…他の聖騎士より聖女様の護衛にも関わらず討伐に出ると言って聞かなかったと報告を受けています。」
大神官はノルディの問いに返答をした。
「どうして聖女を最優先にできない奴がそばにいたのだ?レピア様はあんなに奴のことを慕っていたのに…」
ノルディは何もかもが許せなかった。
目の前の大神官やノアによりレピア様から引き離された事。
アールがレピア様よりも故郷を優先した事。
何よりそんな奴と知らずにレピア様を任せた自分に。
全てが間違いだった。
「私がレピア様の側にいる!もう口出しはさせない。」
ノルディは部屋を飛び出し皇城に手紙を出した。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
この魔法はいつか解ける
石原こま
恋愛
「魔法が解けたのですね。」
幼い頃、王太子に魅了魔法をかけてしまい婚約者に選ばれたリリアーナ。
ついに真実の愛により、王子にかけた魔法が解ける時が訪れて・・・。
虐げられて育った少女が、魅了魔法の力を借りて幸せになるまでの物語です。
※小説家になろうのサイトでも公開しています。
アルファポリスさんにもアカウント作成してみました。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
婚約破棄された真の聖女は隠しキャラのオッドアイ竜大王の運命の番でした!~ヒロイン様、あなたは王子様とお幸せに!~
白樫アオニ(卯月ミント)
恋愛
「私、竜の運命の番だったみたいなのでこのまま去ります! あなたは私に構わず聖女の物語を始めてください!」
……聖女候補として長年修行してきたティターニアは王子に婚約破棄された。
しかしティターニアにとっては願ったり叶ったり。
何故なら王子が新しく婚約したのは、『乙女ゲームの世界に異世界転移したヒロインの私』を自称する異世界から来た少女ユリカだったから……。
少女ユリカが語るキラキラした物語――異世界から来た少女が聖女に選ばれてイケメン貴公子たちと絆を育みつつ魔王を倒す――(乙女ゲーム)そんな物語のファンになっていたティターニア。
つまりは異世界から来たユリカが聖女になることこそ至高! そのためには喜んで婚約破棄されるし追放もされます! わーい!!
しかし選定の儀式で選ばれたのはユリカではなくティターニアだった。
これじゃあ素敵な物語が始まらない! 焦る彼女の前に、青赤瞳のオッドアイ白竜が現れる。
運命の番としてティターニアを迎えに来たという竜。
これは……使える!
だが実はこの竜、ユリカが真に狙っていた隠しキャラの竜大王で……
・完結しました。これから先は、エピソードを足したり、続きのエピソードをいくつか更新していこうと思っています。
・お気に入り登録、ありがとうございます!
・もし面白いと思っていただけましたら、やる気が超絶跳ね上がりますので、是非お気に入り登録お願いします!
・hotランキング10位!!!本当にありがとうございます!!!
・hotランキング、2位!?!?!?これは…とんでもないことです、ありがとうございます!!!
・お気に入り数が1700超え!物凄いことが起こってます。読者様のおかげです。ありがとうございます!
・お気に入り数が3000超えました!凄いとしかいえない。ほんとに、読者様のおかげです。ありがとうございます!!!
・感想も何かございましたらお気軽にどうぞ。感想いただけますと、やる気が宇宙クラスになります。
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
失敗作の愛し方 〜上司の尻拭いでモテない皇太子の婚約者になりました〜
荒瀬ヤヒロ
恋愛
神だって時には失敗する。
とある世界の皇太子に間違って「絶対に女子にモテない魂」を入れてしまったと言い出した神は弟子の少女に命じた。
「このままでは皇太子がモテないせいで世界が滅びる!皇太子に近づいて「モテない魂」を回収してこい!」
「くたばれクソ上司」
ちょっと口の悪い少女リートは、ろくでなし上司のせいで苦しむ皇太子を救うため、その世界の伯爵令嬢となって近づくが……
「俺は皇太子だぞ?何故、地位や金目当ての女性すら寄ってこないんだ……?」
(うちのろくでなしが本当にごめん)
果たしてリートは有り得ないほどモテない皇太子を救うことができるのか?
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる