【完結】聖騎士を死なせた聖女は平民として生きる?

みやちゃん

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ウースは短剣を持ちノルディに近づいた。
短剣を持つ手がプルプルと震える。

「ノルディ様、もうやめましょう…」
ウースは泣きながらノルディを説得した。

「ウース早くしてくれ。意識がなくなる前に詠唱をしなければ。」

もうウースの声もノルディには届かない。
「ノルディ様…」
ウースは短剣を振り上げた。

「おやめください!」
そこでウースの短剣を抑え、大神官が止めた。

「ノルディ様が頑張ってくれたおかげで治癒師達が少し回復しました。もう少し頑張ってくれるようです。」
大神官の後ろの治癒師達は青白い顔で頷いた。

ノルディはとっくに自分達よりも力を奪われている。
本来治癒師として働いていないノルディが死を覚悟してまでレピアを救おうとしている。

治癒師達は大神官を通してノルディを止めた。
せめてノルディの命をかけるのは自分達が倒れてからでなければ。

ノルディの思いは治癒師達の心を動かした。

「…では頼む。少し休ませてもらう。」
ノルディはそういうと治癒師たちにレピアを任せて手を離した。

「どこまでもつのかはわかりません。できる限り交代でいきましょう。レピア様の命をつなぐことだけに力を集中させることで力の流出を抑えられるはずです。」

レピアは痛みのためか意識を失っていた。
治癒師たちも苦しむレピアを見なくてもいい分、力を集中させることができた。

「もう少しだ、もう少しだから頑張ってくれ。」
ノルディは血まみれになっているレピアの顔を袖で拭いた。

レピアが生きていてくれるのなら、もう何も望まない。
お願いだからこのまま死なないでくれ…

ノルディは祈った。
そのノルディの言葉が通じたのだろうか。
治癒班の到着の知らせが来た。

「ここの者たちはもう限界だ!早く代わってくれ!」
大神官は治癒班に大声で叫んだ。

これで何とかなった。
そう皆が安堵した。

治癒班は国でも有数の治癒師たちの集まりだ。
レピアに比べれば力は少ないがそれでも実践力や経験値は高い。

何もどうすれば効率的に治癒させられるかをよく知っている。
国のトップレベルの治癒師たちが集まったことによりレピアは骨折も含め回復する事ができた。

皆は喜んだ。聖女を助ける事ができたことを。
後は目を覚ますだけ。

「よかった、本当によかった。」
ノアは治癒師に怪我の治療をされている間ずっと泣いていた。
自分も大怪我を負っていたはずなのにその事すらどうでもよかった。

皆レピアが生きていてくれること、それだけを望んだ。
だが、そうではなかったとレピアが目を覚まし後に気づく。

レピアが治癒したのは体だけだった。
そう身体面だけ。

目を覚ましたレピアは完全に心を失ってしまっていたのだから。
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