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「ヴゥゥ…」
意識が戻った時、激しい全身の痛みがレピアを襲った。
手足を自分で動かすこともできず、意識をなくすこともできず苦しみ続けた。
誰でもいい、殺して。
気絶させて。
そう言いたいが舌を噛まないように口に布を噛まされておりレピアは言葉を発することもできなかった。
その場にいた治癒師は治癒力をほぼ使い切っていた。
ノルディは交代せず、ずっとレピアの手を握り励ましていた。
「レピア様、治療班が戻ればその痛みも何とかする!それまでの辛抱だ!耐えてくれ!私の力じゃ命しか繋げない…すまない…」
ノルディは目の前でレピアが苦しむ姿など見たくない。
目をそらしたくなるような苦しみ方だった。
私以上にレピア様が辛いはずだ、しっかりしろ!
だが、どうして彼女がこんな目に合う?
もうすぐ結婚するはずだった。
誰よりも幸せな笑顔で微笑むはずだった。
それなのに…なぜ…
「ノルディ様もう限界です!このままではノルディ様がもちません。」
側近のウースはノルディを止めるがノルディは聞く耳を持たなかった。
「レピア様の代わりに死んだっていい!ここにいる皆が証人だ、私がそう言っているのだから皇室からの責められることもない。だから口を挟むな!今私が手を離せばレピア様の心臓は止まる。」
そう言われるとウースも何もいえなくなった。
神官達はノルディとウースから目をそらす。
誰もノルディを止めようとはしなかった。
この場にノルディの代わりとなる治癒師はいない。
止めればレピアが死ぬのがわかっていたから。
それからどのくらい経ったのか…
静まり返った部屋の中でレピアの唸り声だけが響いている。
ノルディは冷や汗を流し意識が朦朧としていた。床にはポタポタと汗が落ちた。
「ノルディ様、もうやめてください。本当に死んでしまいます。」
ウースにとってノルディが誰よりも大切だった。
このままではレピアだけではなくノルディも死んでしまう。
「ウース、すまないが私の足を刺してくれ。もう意識が飛びそうなんだ…血を使う。」
ノルディはもう限界だった。
それはそばで見ていたウースにはわかっている。
「そんなこと私にはできません。命令違反で罰せられても構いません。」
ウースは涙を流しながら首を横に振った。
「では、親友として頼む。お前にしか頼めない。私は流れる血しか使えないんだ。」
ノルディはもう目の前すらかすんでいてウースの顔すら認識できなくなっていた。
「嫌です…あなたに最期のとどめを刺してしまうとわかっていてどうしてそんな事が言えるのですか…」
「レピア様が私の全てだから。レピア様が助かるなら何だってする。お前はそれをよく知っているだろう?だから、お願いだ。今私は手を離せない。」
ノルディはもう治癒班が戻るまで自分が保たないと判断した。
意識を失うとその瞬間にレピア様は死ぬ。
それならば自分の命とひきかけにレピア様を助ける。
血を使い力を底上げする。
そう考えた瞬間ノルディは血まみれのこの部屋で何があったのかが想像できた。
レピア様も血の力を使ったのだ…
自分のためではないだろう。
誰かのために自分を犠牲にしようとした…
ノルディは遠のきそうな意識の中でアールに優しく微笑むレピアを思い出し、誰のためだったのかわかってしまった…
意識が戻った時、激しい全身の痛みがレピアを襲った。
手足を自分で動かすこともできず、意識をなくすこともできず苦しみ続けた。
誰でもいい、殺して。
気絶させて。
そう言いたいが舌を噛まないように口に布を噛まされておりレピアは言葉を発することもできなかった。
その場にいた治癒師は治癒力をほぼ使い切っていた。
ノルディは交代せず、ずっとレピアの手を握り励ましていた。
「レピア様、治療班が戻ればその痛みも何とかする!それまでの辛抱だ!耐えてくれ!私の力じゃ命しか繋げない…すまない…」
ノルディは目の前でレピアが苦しむ姿など見たくない。
目をそらしたくなるような苦しみ方だった。
私以上にレピア様が辛いはずだ、しっかりしろ!
だが、どうして彼女がこんな目に合う?
もうすぐ結婚するはずだった。
誰よりも幸せな笑顔で微笑むはずだった。
それなのに…なぜ…
「ノルディ様もう限界です!このままではノルディ様がもちません。」
側近のウースはノルディを止めるがノルディは聞く耳を持たなかった。
「レピア様の代わりに死んだっていい!ここにいる皆が証人だ、私がそう言っているのだから皇室からの責められることもない。だから口を挟むな!今私が手を離せばレピア様の心臓は止まる。」
そう言われるとウースも何もいえなくなった。
神官達はノルディとウースから目をそらす。
誰もノルディを止めようとはしなかった。
この場にノルディの代わりとなる治癒師はいない。
止めればレピアが死ぬのがわかっていたから。
それからどのくらい経ったのか…
静まり返った部屋の中でレピアの唸り声だけが響いている。
ノルディは冷や汗を流し意識が朦朧としていた。床にはポタポタと汗が落ちた。
「ノルディ様、もうやめてください。本当に死んでしまいます。」
ウースにとってノルディが誰よりも大切だった。
このままではレピアだけではなくノルディも死んでしまう。
「ウース、すまないが私の足を刺してくれ。もう意識が飛びそうなんだ…血を使う。」
ノルディはもう限界だった。
それはそばで見ていたウースにはわかっている。
「そんなこと私にはできません。命令違反で罰せられても構いません。」
ウースは涙を流しながら首を横に振った。
「では、親友として頼む。お前にしか頼めない。私は流れる血しか使えないんだ。」
ノルディはもう目の前すらかすんでいてウースの顔すら認識できなくなっていた。
「嫌です…あなたに最期のとどめを刺してしまうとわかっていてどうしてそんな事が言えるのですか…」
「レピア様が私の全てだから。レピア様が助かるなら何だってする。お前はそれをよく知っているだろう?だから、お願いだ。今私は手を離せない。」
ノルディはもう治癒班が戻るまで自分が保たないと判断した。
意識を失うとその瞬間にレピア様は死ぬ。
それならば自分の命とひきかけにレピア様を助ける。
血を使い力を底上げする。
そう考えた瞬間ノルディは血まみれのこの部屋で何があったのかが想像できた。
レピア様も血の力を使ったのだ…
自分のためではないだろう。
誰かのために自分を犠牲にしようとした…
ノルディは遠のきそうな意識の中でアールに優しく微笑むレピアを思い出し、誰のためだったのかわかってしまった…
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