15 / 49
15
しおりを挟む
「何が起こったのだ!」
神殿の中は大騒ぎになっていた。
レピアの部屋に入った大神官は目の前の光景に息をのんだ。
「レピア様!レピア様!」
ノアはレピアの横で泣き崩れている。
レピアの部屋中血が飛び散っている…
それも多量の血。
アールは亡くなり、ノアは大怪我。
何より聖女レピアも意識不明の重体だった。
大神官はノアを突き飛ばしレピアに駆け寄る。
倒れていたレピアは全身の骨が折れており、移動させるのも無理だった。
至るところから血が流れており、顔は血の気が引き真っ白となっている。
「どうしてこんな事に…」
大神官は一瞬目の前の事態が夢であってほしいと願った。
「大神官様!」
パニックを起こしている神官達の声に大神官は我に返る。
「治療班を全て呼べ!最優先事項だ!聖女様を何が何でも救え!」
大神官は大声で命令する。
レピアの息はまだかすかにある。
今ならまだ助けられるかもしれない。
「多くの治療班は討伐準備に出ています!集められません!」
神官は大神官に恐る恐る報告をした。
聖女であるレピアは誰よりも優れた治癒の力も持っている。
だからこそ、治療に関わる神官を討伐に多く出していた。
それはレピアがいるからこそ成り立つものだった。
「そんなのは知っている。だが今はそれよりも聖女様の命が重要だ!ここにいる者たちだけでは聖女は救えない!今いる者は治療班が戻るまでつなげ!」
大神官は急ぎ、治療班の呼び戻しをすると同時に皇城にも使いを出す。
「ノルディ皇子…」
大神官はノルディが来てくれる事を願った。
ノルディの治癒力も相当優れていた。
ノルディがいてくれれば治療班が戻るまで聖女の命をつなぐことができる…
だが、神殿は散々ノルディとレピアとの仲を引き離すようにしてきた。
聖女様はノルディ皇子ではなくアールを選んだ…
協力してくれるだろうか?
恨んではいないだろうか…
大神官は祈るしかなかった。
なぜ、こんな事になった?
なぜアールが死に聖女様も命の危機にある?
神殿内は完全にパニックに陥っていた。
どうしてこんな事態になったのか誰にもわからなかったのだから。
「早くしなければ…聖女様が…」
大神官はブツブツとつぶやきながらただ待つことしかできない自分が情けなくてたまらなかった。
それからどのくらい経っただろう。
数十分という時間が神殿の皆にとって永遠の時間のように長かった。
「大神官様…もう力がもちません…」
レピアの命を繋いでいた治癒師達はもう力が尽きかかっていた。
「もう少しだけ頑張ってくれ。お願いだ…」
大神官は頭を下げた。
大神官が治癒師に頭を下げることなど絶対にない。
だが、今聖女様を助けられるのはここにいる治癒師達しかいない。
そのためなら大神官のプライドなど小さなものだった。
「聖女様を助けてください…」
大神官は祈るしかできなかった。
誰か…誰か…助けてくれ…
その祈りが届いたのだろうか。
ノルディが息を切らしながら慌ててレピアの部屋に駆け込んできた。
神殿の中は大騒ぎになっていた。
レピアの部屋に入った大神官は目の前の光景に息をのんだ。
「レピア様!レピア様!」
ノアはレピアの横で泣き崩れている。
レピアの部屋中血が飛び散っている…
それも多量の血。
アールは亡くなり、ノアは大怪我。
何より聖女レピアも意識不明の重体だった。
大神官はノアを突き飛ばしレピアに駆け寄る。
倒れていたレピアは全身の骨が折れており、移動させるのも無理だった。
至るところから血が流れており、顔は血の気が引き真っ白となっている。
「どうしてこんな事に…」
大神官は一瞬目の前の事態が夢であってほしいと願った。
「大神官様!」
パニックを起こしている神官達の声に大神官は我に返る。
「治療班を全て呼べ!最優先事項だ!聖女様を何が何でも救え!」
大神官は大声で命令する。
レピアの息はまだかすかにある。
今ならまだ助けられるかもしれない。
「多くの治療班は討伐準備に出ています!集められません!」
神官は大神官に恐る恐る報告をした。
聖女であるレピアは誰よりも優れた治癒の力も持っている。
だからこそ、治療に関わる神官を討伐に多く出していた。
それはレピアがいるからこそ成り立つものだった。
「そんなのは知っている。だが今はそれよりも聖女様の命が重要だ!ここにいる者たちだけでは聖女は救えない!今いる者は治療班が戻るまでつなげ!」
大神官は急ぎ、治療班の呼び戻しをすると同時に皇城にも使いを出す。
「ノルディ皇子…」
大神官はノルディが来てくれる事を願った。
ノルディの治癒力も相当優れていた。
ノルディがいてくれれば治療班が戻るまで聖女の命をつなぐことができる…
だが、神殿は散々ノルディとレピアとの仲を引き離すようにしてきた。
聖女様はノルディ皇子ではなくアールを選んだ…
協力してくれるだろうか?
恨んではいないだろうか…
大神官は祈るしかなかった。
なぜ、こんな事になった?
なぜアールが死に聖女様も命の危機にある?
神殿内は完全にパニックに陥っていた。
どうしてこんな事態になったのか誰にもわからなかったのだから。
「早くしなければ…聖女様が…」
大神官はブツブツとつぶやきながらただ待つことしかできない自分が情けなくてたまらなかった。
それからどのくらい経っただろう。
数十分という時間が神殿の皆にとって永遠の時間のように長かった。
「大神官様…もう力がもちません…」
レピアの命を繋いでいた治癒師達はもう力が尽きかかっていた。
「もう少しだけ頑張ってくれ。お願いだ…」
大神官は頭を下げた。
大神官が治癒師に頭を下げることなど絶対にない。
だが、今聖女様を助けられるのはここにいる治癒師達しかいない。
そのためなら大神官のプライドなど小さなものだった。
「聖女様を助けてください…」
大神官は祈るしかできなかった。
誰か…誰か…助けてくれ…
その祈りが届いたのだろうか。
ノルディが息を切らしながら慌ててレピアの部屋に駆け込んできた。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ゲームと現実の区別が出来ないヒドインがざまぁされるのはお約束である(仮)
白雪の雫
恋愛
「このエピソードが、あたしが妖魔の王達に溺愛される全ての始まりなのよね~」
ゲームの画面を目にしているピンク色の髪の少女が呟く。
少女の名前は篠原 真莉愛(16)
【ローズマリア~妖魔の王は月の下で愛を請う~】という乙女ゲームのヒロインだ。
そのゲームのヒロインとして転生した、前世はゲームに課金していた元社会人な女は狂喜乱舞した。
何故ならトリップした異世界でチートを得た真莉愛は聖女と呼ばれ、神かかったイケメンの妖魔の王達に溺愛されるからだ。
「複雑な家庭環境と育児放棄が原因で、ファザコンとマザコンを拗らせたアーデルヴェルトもいいけどさ、あたしの推しは隠しキャラにして彼の父親であるグレンヴァルトなのよね~。けどさ~、アラブのシークっぽい感じなラクシャーサ族の王であるブラッドフォードに、何かポセイドンっぽい感じな水妖族の王であるヴェルナーも捨て難いし~・・・」
そうよ!
だったら逆ハーをすればいいじゃない!
逆ハーは達成が難しい。だが遣り甲斐と達成感は半端ない。
その後にあるのは彼等による溺愛ルートだからだ。
これは乙女ゲームに似た現実の異世界にトリップしてしまった一人の女がゲームと現実の区別がつかない事で痛い目に遭う話である。
思い付きで書いたのでガバガバ設定+設定に矛盾がある+ご都合主義です。
いいタイトルが浮かばなかったので(仮)をつけています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
聖女は寿命を削って王子を救ったのに、もう用なしと追い出されて幸せを掴む!
naturalsoft
恋愛
読者の方からの要望で、こんな小説が読みたいと言われて書きました。
サラッと読める短編小説です。
人々に癒しの奇跡を与える事のできる者を聖女と呼んだ。
しかし、聖女の力は諸刃の剣だった。
それは、自分の寿命を削って他者を癒す力だったのだ。
故に、聖女は力を使うのを拒み続けたが、国の王子が難病に掛かった事によって事態は急変するのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる