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レピアはノアを部屋の外に出しアールに駆け寄った。
「アール、どうしたの?どうしてそんなに怯えているの?」
レピアは震えるアールの手を握りソファに座らせた。
「…レピア。魔の扉が現れました…」
「えっ?どうして…」
こんなに急に…
前の被害からまだそんなに経っていないのに。
歴史上、こんな事今までなかった。
間隔が短すぎる。
アールは聖騎士…
「あなたも魔物の討伐に出るの?」
それで慌てて私のところに来たのだろうか?
一刻を争う事態なことはわかっている。
だが、アールがもし討伐で何かあれば…
レピアは血の気が引いた。
「いや、私は残ることになります。レピアの護衛として…」
レピアはホッとした。
その瞬間罪悪感がレピアの心の中に広がった。
他の聖騎士達にも家族がいる。
皆心配しながらも討伐に送り出している。
それなのに自分がアールを失わないとわかり安堵するなんて…聖女失格だ…
アールの握っていた手の力が緩んだ。
今度はその手をアールが両手でガッツリと掴んだ。
「レピア、お願いです。魔の扉を壊してください。」
アールは頭を下げた。
「まだ開ききっていないでしょう?」
開いていたら自分にも報告がきているはずだ。
聖女として魔の扉を壊すように。
「だが、開ききってからでは遅すぎる!前みたいに街が全滅してしまう…」
アールがこんなに取り乱すのは今までに見たことがない。
「今回も魔の扉は街中なの?」
どうして…いつもは森の中とかが多いのに…
レピアは数ヶ月前魔の扉の出現でなくなった街を思い出していた。
「お願いだ!」
焦っているアールの口調にいつもの丁寧さがない。
こっちのアールが素なのだろうか。
「アール、私もそうしたいわ。でも聖女の力では魔の扉のエネルギーには勝てない。開ききる前に手を出せばどうなるかわからない…力がぶつかり合ってこちらが押し負ければ被害がどのくらいになるのか…」
「ああ、下手をすれば聖女の命も失われるっていう…何度も教わったから知っています。だが、レピアは過去最高の聖女と言われている。できるはずです。」
握る手が強くなる。
「アール…でも…」
聖女が神殿の決まりを破る訳にはいかない。
もし壊せなかったらその後の被害がどうなるのかレピアには想像もできなかった。
その街だけではなく、この国をも危機に陥れる…
「また街を全滅させ、人々を殺すのですか?」
「殺す…」
確かにレピアが早く扉を壊せれたら魔物の流入を防げたはずだ。
私が力不足だから見殺しにした。
私が殺したも同然…
最愛のアールから言われた言葉は罪悪感を持ち続けていたレピアに衝撃を与えた。
「今回の街は俺の故郷なんだ。どうか救ってくれ。お願いだ…」
アールはレピアに頭を下げた。
手の震えがずっと震えている。
「アールの故郷…」
これを断ったら一生アールに恨まれるのだろうか?
私だって皆を救いたい。
死なせたくない。
だけど…
レピアはどうして良いかわからなかった。
「助けてはくれない…のですか…」
アールが裏切られたような顔をした。
レピアが人から初めて向けられた表情。
それもアールから…
アールがレピアの手を離して部屋を出て行こうとした。
「どうするつもりなの?」
レピアは慌ててアールの袖をつかんだ。
「俺も討伐に参加して一人でも多くの人を助けます。あの街の皆には恩がありますから。」
血の気がひいて青い顔をしているアールはレピアを見なかった。
私を置いて行かないで。
レピアはアールにそう言いたかった。
討伐で死ぬかもしれない。
無事に帰ってきても故郷の皆を見殺しにした聖女として一生恨むかもしれない。
このまま行かせたらアールを失う…
レピアは覚悟を決めた。
「初めての事だから成功するとは断言できないわ。それでも良い?」
「ええ、レピアなら必ず成功するはずです。ありがとうございます。」
アールからいつもの優しい微笑みが向けられた。
「アール、どうしたの?どうしてそんなに怯えているの?」
レピアは震えるアールの手を握りソファに座らせた。
「…レピア。魔の扉が現れました…」
「えっ?どうして…」
こんなに急に…
前の被害からまだそんなに経っていないのに。
歴史上、こんな事今までなかった。
間隔が短すぎる。
アールは聖騎士…
「あなたも魔物の討伐に出るの?」
それで慌てて私のところに来たのだろうか?
一刻を争う事態なことはわかっている。
だが、アールがもし討伐で何かあれば…
レピアは血の気が引いた。
「いや、私は残ることになります。レピアの護衛として…」
レピアはホッとした。
その瞬間罪悪感がレピアの心の中に広がった。
他の聖騎士達にも家族がいる。
皆心配しながらも討伐に送り出している。
それなのに自分がアールを失わないとわかり安堵するなんて…聖女失格だ…
アールの握っていた手の力が緩んだ。
今度はその手をアールが両手でガッツリと掴んだ。
「レピア、お願いです。魔の扉を壊してください。」
アールは頭を下げた。
「まだ開ききっていないでしょう?」
開いていたら自分にも報告がきているはずだ。
聖女として魔の扉を壊すように。
「だが、開ききってからでは遅すぎる!前みたいに街が全滅してしまう…」
アールがこんなに取り乱すのは今までに見たことがない。
「今回も魔の扉は街中なの?」
どうして…いつもは森の中とかが多いのに…
レピアは数ヶ月前魔の扉の出現でなくなった街を思い出していた。
「お願いだ!」
焦っているアールの口調にいつもの丁寧さがない。
こっちのアールが素なのだろうか。
「アール、私もそうしたいわ。でも聖女の力では魔の扉のエネルギーには勝てない。開ききる前に手を出せばどうなるかわからない…力がぶつかり合ってこちらが押し負ければ被害がどのくらいになるのか…」
「ああ、下手をすれば聖女の命も失われるっていう…何度も教わったから知っています。だが、レピアは過去最高の聖女と言われている。できるはずです。」
握る手が強くなる。
「アール…でも…」
聖女が神殿の決まりを破る訳にはいかない。
もし壊せなかったらその後の被害がどうなるのかレピアには想像もできなかった。
その街だけではなく、この国をも危機に陥れる…
「また街を全滅させ、人々を殺すのですか?」
「殺す…」
確かにレピアが早く扉を壊せれたら魔物の流入を防げたはずだ。
私が力不足だから見殺しにした。
私が殺したも同然…
最愛のアールから言われた言葉は罪悪感を持ち続けていたレピアに衝撃を与えた。
「今回の街は俺の故郷なんだ。どうか救ってくれ。お願いだ…」
アールはレピアに頭を下げた。
手の震えがずっと震えている。
「アールの故郷…」
これを断ったら一生アールに恨まれるのだろうか?
私だって皆を救いたい。
死なせたくない。
だけど…
レピアはどうして良いかわからなかった。
「助けてはくれない…のですか…」
アールが裏切られたような顔をした。
レピアが人から初めて向けられた表情。
それもアールから…
アールがレピアの手を離して部屋を出て行こうとした。
「どうするつもりなの?」
レピアは慌ててアールの袖をつかんだ。
「俺も討伐に参加して一人でも多くの人を助けます。あの街の皆には恩がありますから。」
血の気がひいて青い顔をしているアールはレピアを見なかった。
私を置いて行かないで。
レピアはアールにそう言いたかった。
討伐で死ぬかもしれない。
無事に帰ってきても故郷の皆を見殺しにした聖女として一生恨むかもしれない。
このまま行かせたらアールを失う…
レピアは覚悟を決めた。
「初めての事だから成功するとは断言できないわ。それでも良い?」
「ええ、レピアなら必ず成功するはずです。ありがとうございます。」
アールからいつもの優しい微笑みが向けられた。
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