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「魔の扉が発生した!今回のはかなり大きいようだ。」
「なぜ?こないだ起きたばかりだろう!」
皇居や神殿内は大騒ぎとなった。
魔の扉…
発生機序は不明であるが、時々魔の国との繋がり魔物が押し寄せてくる事があった。
こちら側の世界に来た魔物を聖騎士達が倒す。
魔の扉が開くためのエネルギーを出し切ったところで魔の扉を壊し、魔物により汚染された地を浄化する。
それが聖女の役目だった。
少し前に魔の扉が開き、街が一つ全滅していた。
その街から逃げだせた住民は少なく、殆どが犠牲となっていた。
魔物に荒らされた街に立ち浄化しかできないレピアは自分の無力さに打ちのめされるしかなかった。
いつだってそう。
魔の扉が開ききるタイミングでなければ壊せない。
その頃には多くの魔物がこちら側の世界に来てしまっている。
発生場所によっては一つの街を見捨てそれ以外の被害の拡大を抑えるしかできないのだ。
それでも聖女が存在しない時は魔の扉の破壊すらできず被害が大きかった。
それから考えれば小さな被害で済んでいる…
レピアはそう皆に言われ続けていたが、その言葉を素直に聞くことができなかった。
罪悪感、無力感…
魔の扉が開かれるたびにレピアは心に傷を負っていた。
年に何度も起こることではない。
それなのに今年に入り二回目の魔の扉が開くという事態に神殿内も大騒動となっていた。
だがレピアはまだその事実を知らない。
なぜなら魔の扉が開ききるまで聖女であるレピアには知らされないからだ。
聖女は魔の扉を壊す存在。
扉のエネルギーが出ている時に聖女が間違って扉を壊そうとすれば聖女の身が危険になる。
聖女には知らせない、それは神殿内の絶対的な決まりであったが…
「レピア!」
いつも穏やかなアールが扉をノックもせずに乱暴に開けた。
「どうしたの?そんなに慌てて…」
レピアはアールのあまりの慌てぶりに驚いた。
アールはノアをチラッと見て黙った。
ノアがいてはできない話なのね…
「…ノア。少し部屋を離れていて。」
レピアはノアに視線を向けた。
「レピア様、それはできません。」
アールの行動があまりにおかしい。
この状態のアールとレピアを二人きりにするなんてありえない。
ノアはまっすぐにレピアを見つめ返す。
アールの手がフルフルと震えているのをレピアは見た。
大切な婚約者をこんな風に追い詰める何か…
その原因を早く知りたいとレピアは思った。
「ではノアこれは命令よ。部屋の外に出ていなさい。」
レピアは普段命令などしない。
だが、今のレピアの目は本気だ。
レピア様の命令を無視などできない…
ノアは頭を下げて部屋を出るしかなかった。
だが、レピアに嫌われようと命令違反で処刑されようとその部屋を出るべきでなかったとノアは後悔し続けている事になる。
部屋にいさえすればアールの愚行を止めることができたのだから…
部屋の前に立ちノアは嫌な予感がしていた。
アールはいつもと全く違っていた。
胸騒ぎがする。
入った方がいい?
でもレピア様の命令は絶対…
部屋の前で扉を見つめながらノアは悩んでいた。
そう、ノアが部屋を出てそんなに経っていない。
10分程度だろうか。
ノアの中では長い長い時間だった。
バーンという音とともに部屋の扉が壊れ、中から眩しいばかりの光が辺り一面に広がり何も見えない状態となった。
ノアは扉が壊れた時、後ろに吹っ飛ばされ壁に激突していた。
身体中が痛い。
動こうとすると激痛が走った。
骨が折れているのだろう。
口から血を吐いたところを見ると内臓もやられたかもしれない。
「レピア様!」
それでもノアは必死でレピアのところに行こうとした。
何が起こったのかはわからない。
だが、あんな爆発の中レピアが無傷だとは思えない。
血を吐き足を引きずりながら部屋に入ったノアが見たのは血まみれの状態で倒れているレピアとアールだった。
「なぜ?こないだ起きたばかりだろう!」
皇居や神殿内は大騒ぎとなった。
魔の扉…
発生機序は不明であるが、時々魔の国との繋がり魔物が押し寄せてくる事があった。
こちら側の世界に来た魔物を聖騎士達が倒す。
魔の扉が開くためのエネルギーを出し切ったところで魔の扉を壊し、魔物により汚染された地を浄化する。
それが聖女の役目だった。
少し前に魔の扉が開き、街が一つ全滅していた。
その街から逃げだせた住民は少なく、殆どが犠牲となっていた。
魔物に荒らされた街に立ち浄化しかできないレピアは自分の無力さに打ちのめされるしかなかった。
いつだってそう。
魔の扉が開ききるタイミングでなければ壊せない。
その頃には多くの魔物がこちら側の世界に来てしまっている。
発生場所によっては一つの街を見捨てそれ以外の被害の拡大を抑えるしかできないのだ。
それでも聖女が存在しない時は魔の扉の破壊すらできず被害が大きかった。
それから考えれば小さな被害で済んでいる…
レピアはそう皆に言われ続けていたが、その言葉を素直に聞くことができなかった。
罪悪感、無力感…
魔の扉が開かれるたびにレピアは心に傷を負っていた。
年に何度も起こることではない。
それなのに今年に入り二回目の魔の扉が開くという事態に神殿内も大騒動となっていた。
だがレピアはまだその事実を知らない。
なぜなら魔の扉が開ききるまで聖女であるレピアには知らされないからだ。
聖女は魔の扉を壊す存在。
扉のエネルギーが出ている時に聖女が間違って扉を壊そうとすれば聖女の身が危険になる。
聖女には知らせない、それは神殿内の絶対的な決まりであったが…
「レピア!」
いつも穏やかなアールが扉をノックもせずに乱暴に開けた。
「どうしたの?そんなに慌てて…」
レピアはアールのあまりの慌てぶりに驚いた。
アールはノアをチラッと見て黙った。
ノアがいてはできない話なのね…
「…ノア。少し部屋を離れていて。」
レピアはノアに視線を向けた。
「レピア様、それはできません。」
アールの行動があまりにおかしい。
この状態のアールとレピアを二人きりにするなんてありえない。
ノアはまっすぐにレピアを見つめ返す。
アールの手がフルフルと震えているのをレピアは見た。
大切な婚約者をこんな風に追い詰める何か…
その原因を早く知りたいとレピアは思った。
「ではノアこれは命令よ。部屋の外に出ていなさい。」
レピアは普段命令などしない。
だが、今のレピアの目は本気だ。
レピア様の命令を無視などできない…
ノアは頭を下げて部屋を出るしかなかった。
だが、レピアに嫌われようと命令違反で処刑されようとその部屋を出るべきでなかったとノアは後悔し続けている事になる。
部屋にいさえすればアールの愚行を止めることができたのだから…
部屋の前に立ちノアは嫌な予感がしていた。
アールはいつもと全く違っていた。
胸騒ぎがする。
入った方がいい?
でもレピア様の命令は絶対…
部屋の前で扉を見つめながらノアは悩んでいた。
そう、ノアが部屋を出てそんなに経っていない。
10分程度だろうか。
ノアの中では長い長い時間だった。
バーンという音とともに部屋の扉が壊れ、中から眩しいばかりの光が辺り一面に広がり何も見えない状態となった。
ノアは扉が壊れた時、後ろに吹っ飛ばされ壁に激突していた。
身体中が痛い。
動こうとすると激痛が走った。
骨が折れているのだろう。
口から血を吐いたところを見ると内臓もやられたかもしれない。
「レピア様!」
それでもノアは必死でレピアのところに行こうとした。
何が起こったのかはわからない。
だが、あんな爆発の中レピアが無傷だとは思えない。
血を吐き足を引きずりながら部屋に入ったノアが見たのは血まみれの状態で倒れているレピアとアールだった。
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