7 / 49
7
しおりを挟む
「ノア。明日もアールに会えるかしら?」
ベットに入ったレピアが側についていたノアに聞いた。
「休みとは報告を受けていませんので来ますよ。」
そう言った時のレピアの嬉しそうな表情にノアの顔も綻んだ。
神殿で育ったレピア様がここまで興味を持つ人間が今までにいただろうか。
ウンウンとレピアはノアの答えを待っていたように頷いた。
「そうよね。わかっているけど、確認しておきたかったの。明日がとても楽しみだわ。」
「レピア様が初対面の人をそのように気にいるのは珍しいですね。」
何でも手に入るレピアだったが、皇帝よりも高位である身分が邪魔してレピアとの距離を縮めようとする者は少なかった。
レピア自身もそれを自覚して人と距離を保っており、親密になる事はなかった。
ノルディ様くらいだと思っていたのに…
アールは決して聖騎士の立場を超えてはいない。
レピア様がアールとの距離を縮めたのだ。
「ええ、これは一目惚れっていうよ。出会った瞬間時間が止まるって本当だったわ。」
レピアは興奮しながら早口で話した。
「そんなに興奮していたら眠れませんよ。」
クスリッとノアは笑う。
「ノルディからもらった本の通りだった。ノルディには感謝しなくちゃね。」
「ノルディ様は嬉しくないと思いますが…」
ボソリとノアはレピアに聞こえないように呟いた。
ノルディ様がレピア様を妃にと望んでいることは周知の事実だ。
ノルディ様自身が隠すこともなく、堂々とアプローチしているのだから当たり前だけど。
そのノルディ様の想いに微塵も気付かないレピア様はかなり鈍感だとノアも思っている。
でもレピア様が望まない限りノルディ様は結ばれない。
皇族とはいえ、ノルディ様には決定権などないのだから。
一生懸命アプローチし続けるノルディ様には悪いけど、こんなにレピア様が心を寄せる者はいなかったわ。
レピア様が望めば、アールと結ばれることもできる。
ノアは純粋にレピアの幸せを願っていた。
聖女なら皆を救って当たり前。
そんな皆の期待を一身に受け、レピア自身もそれが当たり前だと思っている。
誰かの犠牲になっているという意識すらないのがノアには歯がゆくて仕方なかった。
だからこそ、レピア自身が自ら心を開く者ができたことにノアは喜んだ。
宝石もドレスも何も欲しがらない。
ただ皆の幸せを願い祈るレピア。
「レピア様、おやすみなさいませ。明日も良い一日でありますよう。」
ノアはレピアに一礼をし部屋を出た。
「大神官様に報告をしなくてはいけないわ。」
ノアはレピアの嬉しそうな顔を思い浮かべながら早足で大神官のところに向かった。
ベットに入ったレピアが側についていたノアに聞いた。
「休みとは報告を受けていませんので来ますよ。」
そう言った時のレピアの嬉しそうな表情にノアの顔も綻んだ。
神殿で育ったレピア様がここまで興味を持つ人間が今までにいただろうか。
ウンウンとレピアはノアの答えを待っていたように頷いた。
「そうよね。わかっているけど、確認しておきたかったの。明日がとても楽しみだわ。」
「レピア様が初対面の人をそのように気にいるのは珍しいですね。」
何でも手に入るレピアだったが、皇帝よりも高位である身分が邪魔してレピアとの距離を縮めようとする者は少なかった。
レピア自身もそれを自覚して人と距離を保っており、親密になる事はなかった。
ノルディ様くらいだと思っていたのに…
アールは決して聖騎士の立場を超えてはいない。
レピア様がアールとの距離を縮めたのだ。
「ええ、これは一目惚れっていうよ。出会った瞬間時間が止まるって本当だったわ。」
レピアは興奮しながら早口で話した。
「そんなに興奮していたら眠れませんよ。」
クスリッとノアは笑う。
「ノルディからもらった本の通りだった。ノルディには感謝しなくちゃね。」
「ノルディ様は嬉しくないと思いますが…」
ボソリとノアはレピアに聞こえないように呟いた。
ノルディ様がレピア様を妃にと望んでいることは周知の事実だ。
ノルディ様自身が隠すこともなく、堂々とアプローチしているのだから当たり前だけど。
そのノルディ様の想いに微塵も気付かないレピア様はかなり鈍感だとノアも思っている。
でもレピア様が望まない限りノルディ様は結ばれない。
皇族とはいえ、ノルディ様には決定権などないのだから。
一生懸命アプローチし続けるノルディ様には悪いけど、こんなにレピア様が心を寄せる者はいなかったわ。
レピア様が望めば、アールと結ばれることもできる。
ノアは純粋にレピアの幸せを願っていた。
聖女なら皆を救って当たり前。
そんな皆の期待を一身に受け、レピア自身もそれが当たり前だと思っている。
誰かの犠牲になっているという意識すらないのがノアには歯がゆくて仕方なかった。
だからこそ、レピア自身が自ら心を開く者ができたことにノアは喜んだ。
宝石もドレスも何も欲しがらない。
ただ皆の幸せを願い祈るレピア。
「レピア様、おやすみなさいませ。明日も良い一日でありますよう。」
ノアはレピアに一礼をし部屋を出た。
「大神官様に報告をしなくてはいけないわ。」
ノアはレピアの嬉しそうな顔を思い浮かべながら早足で大神官のところに向かった。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
婚約破棄された真の聖女は隠しキャラのオッドアイ竜大王の運命の番でした!~ヒロイン様、あなたは王子様とお幸せに!~
白樫アオニ(卯月ミント)
恋愛
「私、竜の運命の番だったみたいなのでこのまま去ります! あなたは私に構わず聖女の物語を始めてください!」
……聖女候補として長年修行してきたティターニアは王子に婚約破棄された。
しかしティターニアにとっては願ったり叶ったり。
何故なら王子が新しく婚約したのは、『乙女ゲームの世界に異世界転移したヒロインの私』を自称する異世界から来た少女ユリカだったから……。
少女ユリカが語るキラキラした物語――異世界から来た少女が聖女に選ばれてイケメン貴公子たちと絆を育みつつ魔王を倒す――(乙女ゲーム)そんな物語のファンになっていたティターニア。
つまりは異世界から来たユリカが聖女になることこそ至高! そのためには喜んで婚約破棄されるし追放もされます! わーい!!
しかし選定の儀式で選ばれたのはユリカではなくティターニアだった。
これじゃあ素敵な物語が始まらない! 焦る彼女の前に、青赤瞳のオッドアイ白竜が現れる。
運命の番としてティターニアを迎えに来たという竜。
これは……使える!
だが実はこの竜、ユリカが真に狙っていた隠しキャラの竜大王で……
・完結しました。これから先は、エピソードを足したり、続きのエピソードをいくつか更新していこうと思っています。
・お気に入り登録、ありがとうございます!
・もし面白いと思っていただけましたら、やる気が超絶跳ね上がりますので、是非お気に入り登録お願いします!
・hotランキング10位!!!本当にありがとうございます!!!
・hotランキング、2位!?!?!?これは…とんでもないことです、ありがとうございます!!!
・お気に入り数が1700超え!物凄いことが起こってます。読者様のおかげです。ありがとうございます!
・お気に入り数が3000超えました!凄いとしかいえない。ほんとに、読者様のおかげです。ありがとうございます!!!
・感想も何かございましたらお気軽にどうぞ。感想いただけますと、やる気が宇宙クラスになります。
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
失敗作の愛し方 〜上司の尻拭いでモテない皇太子の婚約者になりました〜
荒瀬ヤヒロ
恋愛
神だって時には失敗する。
とある世界の皇太子に間違って「絶対に女子にモテない魂」を入れてしまったと言い出した神は弟子の少女に命じた。
「このままでは皇太子がモテないせいで世界が滅びる!皇太子に近づいて「モテない魂」を回収してこい!」
「くたばれクソ上司」
ちょっと口の悪い少女リートは、ろくでなし上司のせいで苦しむ皇太子を救うため、その世界の伯爵令嬢となって近づくが……
「俺は皇太子だぞ?何故、地位や金目当ての女性すら寄ってこないんだ……?」
(うちのろくでなしが本当にごめん)
果たしてリートは有り得ないほどモテない皇太子を救うことができるのか?
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
すてられた令嬢は、傷心の魔法騎士に溺愛される
みみぢあん
恋愛
一方的に婚約解消されたソレイユは、自分を嫌う義母に新たな結婚相手を言い渡される。
意地悪な義母を信じられず、不安をかかえたままソレイユは、魔獣との戦いで傷を負い、王立魔法騎士団を辞めたペイサージュ伯爵アンバレに会いに王都へと向かう。
魔獣の呪毒(じゅどく)に侵されたアンバレは性悪な聖女に浄化をこばまれ、呪毒のけがれに苦しみ続け自殺を考えるほど追い詰められていた。
※ファンタジー強めのお話です。
※諸事情により、別アカで未完のままだった作品を、大きく修正し再投稿して完結させました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる