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何が起こっているの?
アルフード様が私を突然訪ねてきた。
会わずに面会を断るつもりだった。
先触れもなく、いきなり来たのだから断る理由はあった。
物陰に隠れて執事に対応を任せていたのに…
だけど、アルフード様の顔が青ざめ焦っているのをみると心がざわついた。
どうしてあんな顔をするの…何を考えているの?
お茶会での私の様子を気にして来たのだろうか?
もうアルフード様に関わりたくないのに…忘れたいのに…
魔女に時間を戻してもらい、ショックから立ち直れていないうちにあのお茶会が開かれた。
アルフード様と王妃様をみるのが本当に辛くて目も合わせられなかった。
泣きたいのを必死でこらえて座っていた。
だから、お茶会の事をよく覚えていない。気づいた時は帰りの馬車の中だった。
アルフード様がこのまま大人しく引き下がるとも思えない。
それならば、話だけ聞いてすぐに帰ってもらおう。
今までのように部屋には招かず、応接間で向かい合ってソファに座った。
アルフード様は私と二人になりたいと言った。
あまりに真剣な顔をしていうので受け入れてしまった。
そして告げられたのは思いもよらないものだった。
魔女と契約して一緒に過去に戻っていたと告白された。
過去に戻った後から何か違う気がしていたのは一緒に過去に戻っていたから。
私のやっていたことは意味がなかった…
なんて言って良いのかわからなくて黙っているとアルフード様が口を開く。
「一番最初の人生で…あなたが嫌がらせを受けているのは知っていましたが、影から見守るしかなかった。嫌がらせがひどくなるのでもっと会いたいのも我慢しました。」
アルフード様は婚約者の義務ではなくて会いたいと思ってくれていたの?
私の戸惑いを感じたアルフード様は苦笑いをした。
「結婚したら毎日会えると言い聞かせてね。あなたが妻になるのをどれだけ楽しみにしていたかわかりますか?」
私が婚約破棄をしようと動いている時、結婚を楽しみに待っていたなんて…
「あなたが婚約破棄を望んでいると知った時はショックでした。ですが、それだけはどうしても受け入れられない。」
アルフード様の声が震えていた。
「あなたの望む未来で一緒に生きていきたいと思いました。ですが、レアン兄上の件はあなたの望みを叶えた訳ではない…私の嫉妬です。」
「嫉妬…」
「あなたは私より兄上に心を開いているように見えたのです。あなたが強く望めば公爵が兄上との婚約をまとめるかもしれないと焦ってしまった。」
「私はレアン様と結ばれたかった訳ではありません。」
「ええ、今ならわかります。」
アルフード様は申し訳なさそうに言った。
「平民でも王でもあなたが側にいてくれれば私は何でもよかった。あなたなしでは私は生きていけない。そんな私のわがままにあなたを巻き込んで傷つけた…」
「生きていけない…」
私はアルフード様の言葉を繰り返した。
私はそんなに愛されていたの?
じゃあ、私はなぜアルフード様と婚約破棄したかったの?
私はアルフード様の足を引っ張りたくなくて。幸せになってもらいたくて。義務で結婚をして欲しくなくて。
「ごめんなさい。そんな風に考えているなんて思いもしなくて…私という足手まといがなくなれば、アルフード様はもっと幸せになれると思いました。本当にごめんなさい。」
涙がこみ上げてくる。
「そちらに行ってもいいですか?」
アルフード様に言われ頷いた。
隣に座ったアルフード様は私を抱き寄せた。
「もっと素直に向き合うべきでした。私を許してくれますか?これからは何でも話し合える婚約者になりたい。」
アルフード様は抱きしめながら耳元でささやいた。
「まだ婚約者ではないですよ?」
ここではまだお茶会で一度会っただけの関係。
「では婚約者になってくれますか?一生側にいてほしい。あなたを愛しています。」
アルフード様は私の目をまっすぐに見つめてそう言ってくれた。
「はい。」
あんなに離れたかったのは何故だろう。
隣にいたらこんなに幸せな気持ちになったのに。
自分に自信がなくて逃げ出そうとしていただけかもしれない。
「でも、王妃は無理ですから。レアン様にちゃんと謝ってくださいね。」
そういうとクスッとアルフード様は笑った。
「まだ何も起きてないので私に謝られても兄上は困りますよ。ですが、もう兄上や母上に顔向けできない事はしません。約束します。」
その言葉を聞いてホッとした。
あの優しい二人の笑顔が守られて、その上アルフード様が側にいてくれるのなら私はなんて幸せなんだろう。
「これからどんな未来にしたいのかは一緒に考えていきましょう。」
「はい」
二人で一緒に考えたら、これまでのようなすれ違いはなくなるはず。
「愛しています、アルフード様」
私がそういうとアルフード様は満面の笑みを浮かべて強く私を抱きしめた。
二人は愛を誓い合った。
他者が見ていたら子どものおままごとのように微笑ましく見えていたはずだ。
8歳の子どものプロポーズなのだから。
その後、アルフードとアメリアは仲の良い婚約者として有名になった。
結婚した後もずっとその関係性は変わらなかった。
その秘訣はと聞かれるとアルフードとアメリアは笑い合いながら答える。
「二人でいっぱい話して一緒に考えていくこと」と…
FIN
アルフード様が私を突然訪ねてきた。
会わずに面会を断るつもりだった。
先触れもなく、いきなり来たのだから断る理由はあった。
物陰に隠れて執事に対応を任せていたのに…
だけど、アルフード様の顔が青ざめ焦っているのをみると心がざわついた。
どうしてあんな顔をするの…何を考えているの?
お茶会での私の様子を気にして来たのだろうか?
もうアルフード様に関わりたくないのに…忘れたいのに…
魔女に時間を戻してもらい、ショックから立ち直れていないうちにあのお茶会が開かれた。
アルフード様と王妃様をみるのが本当に辛くて目も合わせられなかった。
泣きたいのを必死でこらえて座っていた。
だから、お茶会の事をよく覚えていない。気づいた時は帰りの馬車の中だった。
アルフード様がこのまま大人しく引き下がるとも思えない。
それならば、話だけ聞いてすぐに帰ってもらおう。
今までのように部屋には招かず、応接間で向かい合ってソファに座った。
アルフード様は私と二人になりたいと言った。
あまりに真剣な顔をしていうので受け入れてしまった。
そして告げられたのは思いもよらないものだった。
魔女と契約して一緒に過去に戻っていたと告白された。
過去に戻った後から何か違う気がしていたのは一緒に過去に戻っていたから。
私のやっていたことは意味がなかった…
なんて言って良いのかわからなくて黙っているとアルフード様が口を開く。
「一番最初の人生で…あなたが嫌がらせを受けているのは知っていましたが、影から見守るしかなかった。嫌がらせがひどくなるのでもっと会いたいのも我慢しました。」
アルフード様は婚約者の義務ではなくて会いたいと思ってくれていたの?
私の戸惑いを感じたアルフード様は苦笑いをした。
「結婚したら毎日会えると言い聞かせてね。あなたが妻になるのをどれだけ楽しみにしていたかわかりますか?」
私が婚約破棄をしようと動いている時、結婚を楽しみに待っていたなんて…
「あなたが婚約破棄を望んでいると知った時はショックでした。ですが、それだけはどうしても受け入れられない。」
アルフード様の声が震えていた。
「あなたの望む未来で一緒に生きていきたいと思いました。ですが、レアン兄上の件はあなたの望みを叶えた訳ではない…私の嫉妬です。」
「嫉妬…」
「あなたは私より兄上に心を開いているように見えたのです。あなたが強く望めば公爵が兄上との婚約をまとめるかもしれないと焦ってしまった。」
「私はレアン様と結ばれたかった訳ではありません。」
「ええ、今ならわかります。」
アルフード様は申し訳なさそうに言った。
「平民でも王でもあなたが側にいてくれれば私は何でもよかった。あなたなしでは私は生きていけない。そんな私のわがままにあなたを巻き込んで傷つけた…」
「生きていけない…」
私はアルフード様の言葉を繰り返した。
私はそんなに愛されていたの?
じゃあ、私はなぜアルフード様と婚約破棄したかったの?
私はアルフード様の足を引っ張りたくなくて。幸せになってもらいたくて。義務で結婚をして欲しくなくて。
「ごめんなさい。そんな風に考えているなんて思いもしなくて…私という足手まといがなくなれば、アルフード様はもっと幸せになれると思いました。本当にごめんなさい。」
涙がこみ上げてくる。
「そちらに行ってもいいですか?」
アルフード様に言われ頷いた。
隣に座ったアルフード様は私を抱き寄せた。
「もっと素直に向き合うべきでした。私を許してくれますか?これからは何でも話し合える婚約者になりたい。」
アルフード様は抱きしめながら耳元でささやいた。
「まだ婚約者ではないですよ?」
ここではまだお茶会で一度会っただけの関係。
「では婚約者になってくれますか?一生側にいてほしい。あなたを愛しています。」
アルフード様は私の目をまっすぐに見つめてそう言ってくれた。
「はい。」
あんなに離れたかったのは何故だろう。
隣にいたらこんなに幸せな気持ちになったのに。
自分に自信がなくて逃げ出そうとしていただけかもしれない。
「でも、王妃は無理ですから。レアン様にちゃんと謝ってくださいね。」
そういうとクスッとアルフード様は笑った。
「まだ何も起きてないので私に謝られても兄上は困りますよ。ですが、もう兄上や母上に顔向けできない事はしません。約束します。」
その言葉を聞いてホッとした。
あの優しい二人の笑顔が守られて、その上アルフード様が側にいてくれるのなら私はなんて幸せなんだろう。
「これからどんな未来にしたいのかは一緒に考えていきましょう。」
「はい」
二人で一緒に考えたら、これまでのようなすれ違いはなくなるはず。
「愛しています、アルフード様」
私がそういうとアルフード様は満面の笑みを浮かべて強く私を抱きしめた。
二人は愛を誓い合った。
他者が見ていたら子どものおままごとのように微笑ましく見えていたはずだ。
8歳の子どものプロポーズなのだから。
その後、アルフードとアメリアは仲の良い婚約者として有名になった。
結婚した後もずっとその関係性は変わらなかった。
その秘訣はと聞かれるとアルフードとアメリアは笑い合いながら答える。
「二人でいっぱい話して一緒に考えていくこと」と…
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