【完結】どうやっても婚約破棄ができない

みやちゃん

文字の大きさ
上 下
22 / 23

22アルフード視点

しおりを挟む
「アルフード様、本日の面会の約束はないはずですが。」
アメリアの屋敷の執事はスケジュールが書かれた紙を見ながらアルフードに確認する。

まだ婚約者でもない私が先触れもなしにいきなりやってくるなどあり得ない事なので、警戒されているのがわかる。

「連絡をしなくて申し訳ない。急ぎの用がアメリア嬢にあるのだが、面会の許可をもらいたい。」

王族といえ、この訪問はかなり失礼…
断られてもおかしくない。

執事もかなり渋っていた。
公爵が戻った時に出直した方が良いかとアルフードは思い直し退室しようとした。

「アルフード様…」
アメリアの声が階段の上から聞こえた。

アメリアは無表情でただこちらを見つめている。
私に会いたくなかったのだろうか?
そう思うと不安が強くなる。
だが、ここで逃げ出したら…きっともう二度とアメリアとは会えなくなってしまう。

「アメリア嬢…」

言葉が出てこない。

「ラーク、構わないわ。応接間に通してちょうだい。」

アメリアは執事に指示を出した。

この屋敷に何度も通ってきた。
だが、応接間で対応された事は一度もなかった。

視線も合わない。
アメリアから見て他人だと言われている様で胸が痛むのを感じた。



「それでお話とは何でしょう?」

応接室に通されてアメリアとはアルフードは向かい合って座っている。

執事とメイドが控えているのを私はチラッと見た。
アメリアと二人になりたい。
そうでなければ、話せない話だ。

「執事とメイドを退室させてくれませんか?」
私はアメリアに聞いた。

「そんな事はできません!」
執事が口を挟む。
執事がこのタイミングで口を挟むなど不敬もいいところ。
それでもそうしなければいけないと思わせるほど、私は完全に不審者なのだ。

黙ったままアメリアは私をしばらく見つめたが、小さくため息をつき頷いてくれた。

「…わかりました。あなた達は出ていなさい。」

「ですが、お嬢様は体調が…」

「ラーク、従いなさい。」
アメリアに言われ渋々執事とメイドは外に出た。

「アルフード様、私の家の者が申し訳ございません。」

アメリアは無表情なまま頭を下げる。
お茶会の時と同じ態度。

「いえ、当たり前の事だと思っています。ですが、彼らがいたら私がしたい話はできません。」

王族とはめんどくさい。
執事やメイドの前で謝ることもできない。

「…」
アメリアは黙ってアルフードの話を聞いている。

「アメリア嬢、本当にすまなかった。」
私はアメリアに向かい頭を下げた。

その様子にアメリアが目を大きくして驚いていた。

前ほどではないが、こうやって表情があることにホッとした。

「何に謝っているのかはわかりませんが、アルフード様が私に謝る必要などありません。」
アメリアは首を横に振った。

「いや、全ては私が悪いのです。どうしてもアメリア嬢と婚約破棄をしたくなかった。私のわがままであなたを傷つけてしまいました。」

私はアメリアに今までの全てを話した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

偽りの愛に終止符を

甘糖むい
恋愛
政略結婚をして3年。あらかじめ決められていた3年の間に子供が出来なければ離婚するという取り決めをしていたエリシアは、仕事で忙しいく言葉を殆ど交わすことなく離婚の日を迎えた。屋敷を追い出されてしまえば行くところなどない彼女だったがこれからについて話合うつもりでヴィンセントの元を訪れる。エリシアは何かが変わるかもしれないと一抹の期待を胸に抱いていたが、夫のヴィンセントは「好きにしろ」と一言だけ告げてエリシアを見ることなく彼女を追い出してしまう。

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...