【完結】どうやっても婚約破棄ができない

21アルフード視点

「やはりバカ王子だな。」
魔女がヒヒヒと笑う。

魔女の嫌な笑いは私を余計に苛立たせる。
だが、今ここで魔女を機嫌を悪くする訳にはいかない。
アメリアに何が起こったのか知るのが今一番重要だ。

「アメリアに何をしたんだ。」

「私は何もしていない。したのはお前だろう？」
魔女は呆れた顔をした。

「私は何もしていない。アメリアの望みを叶えようとしただけだ。」
平民も王妃もアメリアが望んだ事だ。

「本当に望んだ事か？レアン王太子への仕打ちをあの娘が苦しまないと思ったか？あの娘のせいにしてお前の嫉妬をぶつけただけだろう。」

兄上はアメリアを心配をして私にもう少し気遣うように言ってきた。
そして、アメリアは私よりも兄上に心を許しているように見えた。
公爵令嬢が王太子との婚約を望めば、叶う可能性がある。
アメリアの父である公爵はアメリアに甘すぎるくらい甘い。
そんなのは嫌だ、兄上であろうとアメリアを奪う奴は敵だ。

それをこの魔女は見透かしている。
私とアメリアは過去に飛ぶたびにこの魔女の魔力と繋がっている。
記憶を覗いたのか…

「あの娘の望みはお前との婚約破棄だけだった。それをお前が拒否するからこじれたのだろう？」

婚約破棄だけ？
何を言っている？望みを叶えたらそばにいてくれるはずだ。
大切にすれば婚約破棄など望まないだろう。

魔女は大きくため息をついた。

「まだわからんとは本当に愚かだな。あの娘はお前のために身を引こうとしただけさ。別に平民や王妃になりたい訳じゃない。」

アメリアが私の為に身を引こうとした？
不甲斐ない私に愛想が尽きたのではなくて？

「お前がレアン王太子や王妃も巻き込んだから、あの娘を追い詰める結果になった。さっさと婚約破棄をすれば、こんな事にはなっていなかっただろうさ。」

私がアメリアをあんな風にした？
どうしたら元に戻る？

「私だけ時間を戻してくれ…」
一番最初の時に。
そうすれば後の2回の人生はなくなるだろう。

「無理だな。お前との契約がまだ切れていない。お前との契約はアメリアが過去に戻る際、自分も戻るというものだ。」

それじゃあ、アメリアはあのままなのか？

呆然としている私に魔女は言う。
「平民になったり兄を裏切ったり…お前自身を犠牲にしてあの娘は幸せになれると本当に思っていたのか？」

「犠牲じゃない。アメリアがそばにいてくれれば私は幸せだった。」
だが、側にいてほしいのはあんな感情を殺したアメリアではない。

涙で視界がぼやける。

「だからバカ王子と言うんだ。それをあの娘にちゃんと伝えたのか？」

気持ちを伝えたか？
裏工作も色々したが、好きだときちんと伝えた。大切にしたいと態度や行動で示した。
足りなかったのか？

「お前自身がアメリアを必要だと言ったのかと聞いている。あの娘ならいじめられようがお前の気持ちを一番に考えたと思うぞ。」

必要…そんな事は言っていない。
側にいるのは決定事項だったから。
その言葉を言っていたらアメリアは婚約破棄を望まずにいてくれたのか？

「もうアメリアはあのままなのか…」

「お前次第だろう。お前にとってアメリアが一番大切であるようにアメリアにとって大切なのもお前だから。」

アメリアのところに行かなければならない。
許されるのだろうか？

アメリアがいる公爵邸に向かい馬を走らせた。


「本当に私はいつからこんなお節介な魔女になったんだろうな。人との交流が嫌でこんな森の中に住んでいるのに。」
魔女はブツブツと文句を言っている。

まぁ、あの二人だけで生涯働かなくてもいいくらい稼がせてもらったから、サービスみたいなものだけどさ。
ヒヒヒと一人魔女は笑った。