上 下
20 / 23

20アルフード視点

しおりを挟む
待ちに待った8歳のお茶会。これで4回目となる。

アメリアと会える日。
今日は来てくれるのか、それともまた来ないつもりなのか。
どちらでもいい。来なくても会いに行く。
早く会いたい。このお茶会がなければ何も始まらない。

「すごく嬉しそうね。お茶会がそんなに楽しみなの?」
一緒にお茶会の場に向かっている母上が聞いてくる。

「はい、このお茶会で運命の出会いが待っているかもしれません。」

アメリアに早く会いたい。
今回のアメリアはどんなに可愛らしい事をしてくれるのかと思ったら会場までの距離すら待ちきれない。

「あなたが運命という言葉を使うなんてね。私もあなたの未来のお嫁さんに会うのは楽しみよ。」

アメリアと結婚するのは運命だ。
たとえ違う道に進みそうになっても必ず私が元に戻す。




お茶会の会場では数人の婚約者候補の令嬢達が待っていた。

アメリアがいる。
そう思って嬉しくなったのは一瞬だった。

アメリアの表情がない。人形のようにジッと座っているだけなのが見えた。

彼女は表情豊かで笑った顔が一番可愛い。
それなのにどうして?
彼女の瞳には何も映っていない。
ただの存在しているという言葉がぴったりだった。

周りの者たちは気づいていないだろう。
ただ緊張しているだけと思っている。
だけど、何年もアメリアを見続けてきた私にはわかる。

どうしてだ?何か間違った?

「アルフード、挨拶をしなさい。」
母に声をかけられるまで私は固まっていた。

「…はい。今日はご令嬢達との交流を深めたいと思っています。楽しんでくださいね。」
そう、声に出すのが精一杯だった。
笑顔を作ろうとするが、うまくできない。

皆、私の方を見てくれているが、アメリアだけは真っ直ぐに前を見たまま、視線を向ける事もなかったのだから。

アメリアのところに行く前に心を落ち着けよう。きっと気のせいだ。
私が話しかけたらいつものアメリアに戻ってくれる。そうに違いない。
そう言い聞かせながらも不安が拭い去れない。
順番に令嬢と適当な話をしているが、全く話の内容が入ってこない。

アメリアの番になった。
「アメリア嬢、よろしくお願いします。」
できるだけにこやかに対応した。

アメリアは私の笑顔が好きだといってくれていた。
その笑顔を向ければ、アメリアだって返してくれるはずだ。

「アルフード殿下、よろしくお願い致します。」
アメリアは全く表情を変えず、視線すらあわない。

「アメリア嬢…体調が悪いのですか?」
声が震えているのが自分でもわかる。
何でもいい。私の方を向いてくれ。
そんな心の声はアメリアには届かず、視線を合わせることはなかった。

「いいえ。殿下のお気遣いに感謝いたします。」
綺麗に頭を下げるアメリア。
他人行儀なうわべだけの言葉…

誰だ、これは。
こんなのはアメリアじゃない。

どうしてだ?

その後の事はよく覚えていない。

お茶会が終わるのと同時に私は魔女のところに向かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]君に好きだと伝えたい〜婚約破棄?そうですか、貴方に愛を返せない私のせいですね〜

日向はび
恋愛
表情は動かず、愛の言葉は囁けない。そんな呪いをかけられた伯爵令嬢の元に愛する人から婚約破棄の手紙がとどく。さらに彼は腹違いの妹と恋をしているという。絶望しながらも、全ては自分の責任と別れを決意した令嬢は愛するひとに別れを告げるために彼の家へ訪れる。そこで煌めくナイフの切っ先を目にした彼女は、愛する人を守るためその身をナイフの前に曝け出すのだった。

婚約者をないがしろにする人はいりません

にいるず
恋愛
 公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。  ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。  そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。

拗れた恋の行方

音爽(ネソウ)
恋愛
どうしてあの人はワザと絡んで意地悪をするの? 理解できない子爵令嬢のナリレットは幼少期から悩んでいた。 大切にしていた亡き祖母の髪飾りを隠され、ボロボロにされて……。 彼女は次第に恨むようになっていく。 隣に住む男爵家の次男グランはナリレットに焦がれていた。 しかし、素直になれないまま今日もナリレットに意地悪をするのだった。

お粗末な断罪シナリオ!これって誰が考えたの?!

haru.
恋愛
双子の兄弟王子として育ってきた。 それぞれ婚約者もいてどちらも王位にはさほど興味はなく兄弟仲も悪くなかった。 それなのに弟は何故か、ありもしない断罪を兄にした挙げ句国外追放を宣言した。 兄の婚約者を抱き締めながら... お粗末に思えた断罪のシナリオだったけどその裏にあった思惑とは一体...

いちゃつきを見せつけて楽しいですか?

四季
恋愛
それなりに大きな力を持つ王国に第一王女として生まれた私ーーリルリナ・グランシェには婚約者がいた。 だが、婚約者に寄ってくる女性がいて……。

私の主張は少しも聞いてくださらないのですね

四季
恋愛
王女マリエラは、婚約者のブラウン王子から、突然婚約破棄を告げられてしまう。 隣国の王族である二人の戦いはやがて大きな渦となり、両国の関係性をも変えてしまうことになって……。

【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-

七瀬菜々
恋愛
 ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。   両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。  もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。  ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。  ---愛されていないわけじゃない。  アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。  しかし、その願いが届くことはなかった。  アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。  かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。  アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。 ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。  アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。  結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。  望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………? ※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。    ※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。 ※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。  

【完結】え、お嬢様が婚約破棄されたって本当ですか?

瑞紀
恋愛
「フェリシア・ボールドウィン。お前は王太子である俺の妃には相応しくない。よって婚約破棄する!」 婚約を公表する手はずの夜会で、突然婚約破棄された公爵令嬢、フェリシア。父公爵に勘当まで受け、絶体絶命の大ピンチ……のはずが、彼女はなぜか平然としている。 部屋まで押しかけてくる王太子(元婚約者)とその恋人。なぜか始まる和気あいあいとした会話。さらに、親子の縁を切ったはずの公爵夫妻まで現れて……。 フェリシアの執事(的存在)、デイヴィットの視点でお送りする、ラブコメディー。 ざまぁなしのハッピーエンド! ※8/6 16:10で完結しました。 ※HOTランキング(女性向け)52位,お気に入り登録 220↑,24hポイント4万↑ ありがとうございます。 ※お気に入り登録、感想も本当に嬉しいです。ありがとうございます。

処理中です...