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アメリアは王妃になりたいと言った。

だけど、本当にそんな事を望んでいる訳じゃない。
王子妃だって無理だと思うのに。

レアン様と婚約者のルーア様の仲が良いのは公認だ。
そんな二人の中に入っていこうなんて思わない。

ただ、アルフード様に婚約を諦めてもらいたかっただけ。
アルフード様が絶対に手に入れられないもの。
そんなものを欲しがる婚約者なんて失格でしょう?

貴族の令嬢ならより身分の高い者に嫁入りを希望するのが常識の世の中。
公爵令嬢の私が王妃になりたいと言って不敬で罰せられても死罪にはならない…と思っている。

今度こそ、アルフード様との離れられるかしら?

目を閉じれば笑っているアルフード様が思い出される。
その思い出だけで私は生きていけるわ…






おかしい、婚約破棄の報告が来ない。
あれから数ヶ月経っているのにアルフード様は一度も連絡がない。

「アメリア!レアン様が失脚した。アルフード様が王太子となる。お前は将来、王妃となるぞ。」
自室でアルフード様の事を考えていたら興奮気味のお父様が飛び込んできた。

えっ?失脚?なぜ?
数ヶ月前のレアン様を思い出していた。

私の心配をして声をかけてくれた優しい人。
何でそんな事になったの?

「王城に行って状況を確認してきます。」
私は嫌な予感がしていた。

「王妃になりたい」
そうアルフード様に伝えてから数ヶ月しか経っていない。

なのにレアン様が失脚してアルフード様が王太子となるなんて…

ひょっとしてアルフード様がその一件に絡んでいるの?
でなければタイミングが良すぎる。





アルフード様の執務室の扉をノックした。
「アメリアです。突然申し訳ありません。アルフード様に面会の申し入れをお願い致します。」
アメリアはドキドキとうるさい心音を抑えながら静かに言った。

いつもなら側近か護衛が扉を開けてくれる。
今日もそうだと思っていた。

それなのに…

アルフード自らが扉を開けて笑いながら立っていた。
「私が扉を開けるのがそんなに驚く事ですか?」

「アルフード様…」

「そろそろ来るかなと思って待っていたんですよ。アメリア嬢を迎え入れる準備はもう整いました。」

満面の笑みを浮かべるアルフード様。

「アルフード様…迎え入れる準備とは何でしょうか?」

この流れから予想はできる。
だけど、私の予想は外れてて欲しい。

アルフード様は何を言っているかという顔をして
「王妃になりたかったのでしょう?だから、私が王になれば、なれるでしょう?」

王になれば…

「レアン様に何をしたのですか?」

「聞きたいですか?でもアメリア嬢を怖がらせるのは不本意なので秘密にしておきます。」
そういうアルフード様は笑ったまま。

秘密にしておかねばいけない内容なの?

目の前にいるのは本当にアルフード様?
前回、アルフード様とレアン様は本当に仲の良い兄弟だった。

「私のせい?」
私が王妃になりたいと言ったから?

膝がガクガクと震えその場に座り込んだ。


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