4 / 23
4
しおりを挟む
アメリアの時間が戻っても必死で覚えたマナーや教養は身についていた。
「素晴らしいですわ。その年齢でそれほどできている方はいないでしょう。」
前はあれほどダメ出しをしていた教師たちがアメリアをベタ褒めした。
元々知っているのだから当たり前だけど、そんな風に褒められる事がなかったアメリアは最初、嬉しくてたまらなかった。
だけど、褒められれば褒められるだけ段々と苦痛に変わっていった。
「できて当たり前なのに。」
ズルをしているような気分…
血を見るような努力の末に身につけたものだが、今なら簡単にできているように見える。
あんなに頑張ってできるようになったのに。
そんなアメリアの頑張りを誰も知らない。
アメリアは教師たちのその態度が嫌でしょうがなかった。
努力し続けてやっと身につけた前回の自分を全て否定されたような気がして悲しくてたまらなかった。
「アメリア嬢は今日も素敵ですね。」
アルフード様は微笑んだ。
アルフード様とのお茶会は頻回に行われた。
いつも美味しいお菓子の差し入れがあって、どれもアメリアの好物ばかり。
どこでその情報を得ているのかはわからないけど、私を喜ばせようと頑張ってくれているのがわかる。
前回以上に優しく対応してくれている…なぜ、私にここまでしてくれるの?
「アメリア嬢の所作はとても綺麗ですね。学業なども優秀だと聞きました。本当に素敵な婚約者に恵まれて良かったです。」
アルフード様が前回より優しかったのは私が優秀だから?
だけど…そんなの本当の私じゃない。
アルフード様の言葉でガラガラと自分の中で何かが崩れ去る音がした。
ここにいるのは本当の私じゃない。
二度目だからそう見えるだけ…
だけど、その後は?前回の年齢を超えてしまったら?
『出来損ないのアメリア』でしかない私はみんなを期待させた分、失望させてしまう。
「私は決して優秀な人間ではありません…」
青ざめながら呟く私を見てアルフード様が焦るのが見える。
「大丈夫ですか?気分が悪いのですか?今、人を呼びます。」
アルフード様は立ち上がった。
私はそんなアルフード様の服を掴んだ。
「いえ、人を呼ばなくても大丈夫です。」
必死で微笑もうと思うけど、きっと顔がこわばってしまっている。
アルフード様の袖を持つ手が震えているのが自分でもわかる。
もう私に関わらないでください。
今、アルフード様の前にいる私は本当の私じゃない。
これ以上あなたを騙したくないし、失望もされたくない。
「アメリア嬢?」
不安そうに揺れるアルフード様の瞳に見つめられ、私はそのまま意識を手放した。
「素晴らしいですわ。その年齢でそれほどできている方はいないでしょう。」
前はあれほどダメ出しをしていた教師たちがアメリアをベタ褒めした。
元々知っているのだから当たり前だけど、そんな風に褒められる事がなかったアメリアは最初、嬉しくてたまらなかった。
だけど、褒められれば褒められるだけ段々と苦痛に変わっていった。
「できて当たり前なのに。」
ズルをしているような気分…
血を見るような努力の末に身につけたものだが、今なら簡単にできているように見える。
あんなに頑張ってできるようになったのに。
そんなアメリアの頑張りを誰も知らない。
アメリアは教師たちのその態度が嫌でしょうがなかった。
努力し続けてやっと身につけた前回の自分を全て否定されたような気がして悲しくてたまらなかった。
「アメリア嬢は今日も素敵ですね。」
アルフード様は微笑んだ。
アルフード様とのお茶会は頻回に行われた。
いつも美味しいお菓子の差し入れがあって、どれもアメリアの好物ばかり。
どこでその情報を得ているのかはわからないけど、私を喜ばせようと頑張ってくれているのがわかる。
前回以上に優しく対応してくれている…なぜ、私にここまでしてくれるの?
「アメリア嬢の所作はとても綺麗ですね。学業なども優秀だと聞きました。本当に素敵な婚約者に恵まれて良かったです。」
アルフード様が前回より優しかったのは私が優秀だから?
だけど…そんなの本当の私じゃない。
アルフード様の言葉でガラガラと自分の中で何かが崩れ去る音がした。
ここにいるのは本当の私じゃない。
二度目だからそう見えるだけ…
だけど、その後は?前回の年齢を超えてしまったら?
『出来損ないのアメリア』でしかない私はみんなを期待させた分、失望させてしまう。
「私は決して優秀な人間ではありません…」
青ざめながら呟く私を見てアルフード様が焦るのが見える。
「大丈夫ですか?気分が悪いのですか?今、人を呼びます。」
アルフード様は立ち上がった。
私はそんなアルフード様の服を掴んだ。
「いえ、人を呼ばなくても大丈夫です。」
必死で微笑もうと思うけど、きっと顔がこわばってしまっている。
アルフード様の袖を持つ手が震えているのが自分でもわかる。
もう私に関わらないでください。
今、アルフード様の前にいる私は本当の私じゃない。
これ以上あなたを騙したくないし、失望もされたくない。
「アメリア嬢?」
不安そうに揺れるアルフード様の瞳に見つめられ、私はそのまま意識を手放した。
21
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください
稲垣桜
恋愛
リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。
王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。
そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。
学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。
私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。
でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。
でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがあるみたい……なんだけどね。
※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。
※ あくまでもフィクションです。
※ ゆるふわ設定のご都合主義です。
※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。
ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?
藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」
9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。
そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。
幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。
叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
幼馴染は不幸の始まり
mios
恋愛
「アリスの体調が悪くなって、申し訳ないがそちらに行けなくなった。」
何度目のキャンセルだろうか。
クラリッサの婚約者、イーサンは幼馴染アリスを大切にしている。婚約者のクラリッサよりもずっと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる