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公爵はアメリアが部屋を出た後、慌てて王城のアルフードのところに向かった。

「どういう事なのですか?」
公爵のあまりの慌てぶりにアルフードも呆気に取られている。

「公爵、どうしましたか?落ち着いて説明してもらえますか?」

アルフードがなだめるが、公爵の興奮はおさまる様子がない。
アルフードもアメリアと同じでまだ13歳。
公爵をなだめている様子は異様だった。

「どうもこうもないですよ!アメリアに何をしたんですか?どうしても婚約したい。アメリアを幸せにするといったのは嘘だったのですか?」

「私の気持ちに嘘はありません。アメリア嬢がどうしたのですか?」
アルフードは真剣な面持ちで公爵を見つめる。

「…アメリアが除名を申し出ました。あなたとの婚約破棄をすると私達に迷惑がかかると言ってね。」

アルフードに公爵は言葉を投げ捨てた。
本来、王子に向かって不敬だが、公爵は怒りを抑える事はできなかった。

こんな事なら何がなんでも婚約を受け入れるのではなかったとまで言い切った。

「アメリア嬢が婚約破棄を望んでいる…」
アルフードは呆然としながら呟いた。
公爵はそんなアルフードを見て大人気なかったと気づき、コホンと咳払いした。
アルフードだってまだ子どもなのだ。

「王には正式に婚約破棄を申し出ます。良いですね?」

「……」
アルフードからの返答はなかったが、公爵はそのまま部屋を出た。

公爵だってわかっている。
アルフードがアメリアを大切にしていた事を…

アメリアの幸せを考えたらアルフード以上の相手はいないと公爵も思っていたのに、アルフードへの怒りは完全な八つ当たりだ。

アルフードの表情を思い出し、公爵は罪悪感に苛まれながら馬車で帰った。



「あの王子め…」
公爵はイライラしながらアルフードからの書状を見ていた。

罪悪感など持つ必要はなかった。

感情で動かず、先に王に話を持っていくべきだった。
だが、まだ成人前のアルフード様がここまでするとは誰が思う?

結論を言えば、婚約破棄はできなかった。

アルフード側が正当な理由を求めてきた。

片側が婚約破棄を願い出れば通るのが通常だ。無理やり婚約を続けても関係性を良くするのは難しいから。

にも関わらず、アルフードには非はなく、アメリアの優秀さを理由に婚約の継続を王に願い出るなんて…

アメリアの体調や精神面から王子妃は無理だと言っても
「大丈夫です。体調が悪いなら療養できる土地で一緒に暮らしますし、王子妃が苦痛ならば私が王子でなくなれば良いのです。」

アルフード様はその一点張りで廃嫡の話まで出て、王にそれだけはとやめてくれと頭を下げられた。

王もアルフード様に甘すぎる。

だが…

確かにアルフード様に非はない。
アメリアを婚約者として大切に扱っていた事は公爵も知っている。

アメリアがどうしてアルフードを嫌がるのか理由を言わないが、アメリアを説得するのも無理だとわかっている。

あれから何度アメリアと話し合っても除名の上、家を出ていくの一点張りなのだ。

二人とも頑固なところはそっくりなのに…何でうまくいかないんだ。

公爵は頭を抱えた。

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