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「アルフード様とはもう会えない。」
アメリアは倒れてからアルフードとの面会を断っている。
だが、いつまでも体調不良との言い訳が通用するはずがない。
トントン
「失礼します。」
アメリアは父である公爵が屋敷に戻ったタイミングで執務室を訪れた。
「アメリアか。どうした?体調は良くなったのか?」
「はい、もう大丈夫です。お忙しいのにいきなり来てしまい、申し訳ありません。」
綺麗に頭を下げたアメリアを見て公爵は頭を撫でた。
「無理をしすぎていないか?公爵令嬢としては褒めるべきだとは思うが、父としては甘えられなくて寂しいよ。」
「お父様…」
頭を撫でられたのはいつぶりだろうか?
父はいつでも味方だった。
前回の時どんなにできなくても見放すことはなくアメリアの頑張りを認めてくれていた。
「お願いがあります。アルフード様との婚約をなかった事にしてください。」
アメリアは深々と頭を下げた。
わかっている。
公爵である父であろうとそれがいかに難しいかも。
アルフード様の婚約者になりたいと前回父にお願いしたが、それ以上に困難なお願いだと自覚はある。
「アメリア…そんなにアルフード様との婚約が嫌なのか。だが…」
「私の方からそれを言える立場にない事はわかっています。ですから私を除名してください。この家の者でなければ迷惑はかけませんよね?」
公爵は目を見開いた。
除名…家名を捨ててここを出ていくのか?
目の前にいるアメリアはまだ13歳…
夢や希望があってもいい時期だ。
だが、アメリアは完全に冷めた目をしている。
そして、王家と自分の家の立場を考え家を出る覚悟までしている。
公爵はアメリアを抱きしめた。
「お前をそんな風にしてしまったのは私か?すまない。まだお前は成人前だ。家の迷惑など考えなくてもいい。」
アメリアがアルフード様を最初こそ嫌がってはいたが、最近はうまくいっていると思っていた。
自分達の為に何年も我慢していた事実に衝撃を受けた。
除名などしてアメリアをここから追い出すつもりはないと言うとアメリアは笑った。
「大丈夫です。弟のレオンはスクスクと大きくなります。後継なら問題ありません。」
レオンは優秀な後継に育つ事をアメリアは知っている。
私なんかいなくても大丈夫。
そう言いながらアメリアは笑った。
「そういう事を言っているのでない。お前も大切な私の子だ。」
「申し訳ありません。私はお父様達に迷惑をかけたくないのです。どうか除名をお願い致します。」
アメリアの頑なに除名を申し出た。
「除名してここをでてどうやって生きていくのだ。子ども一人で生きていけるほどこの世の中は甘くない。」
アメリアみたいな綺麗な子はさらわれて売られてしまうと公爵がいうと家族のひいき目ですよとアメリアはフフフと笑った。
なぜ?アメリアはどうしてこんな風に笑う?
自虐した笑い方をいつ覚えた?
私のせいか?
「街が無理なら修道院という手もありますね。」
「いや、さらに無理だ!もうお前に会えなくなるだろう。」
修道院では男子禁制となる。
親の死に目にも会えないと言われるくらい規律には厳しいのだ。
「では今から街で生きる術を学びます。」
アメリアは微笑んだ。
アメリアは公爵令嬢として生きてきた。
街で平民としてなど生きていけるわけがない…
言っている事が大人びているかと思えば、いきなり現実離れした突拍子のない話になるアメリアを見て公爵は余計に無謀だと思った。
だが、こんな風に苦しそうに微笑ませたい訳でもない。
「一旦この話は預かるよ。少しだけ時間を私にくれないか。」
頭を下げて部屋を出るアメリアの礼儀作法は完璧だった。
アメリアは倒れてからアルフードとの面会を断っている。
だが、いつまでも体調不良との言い訳が通用するはずがない。
トントン
「失礼します。」
アメリアは父である公爵が屋敷に戻ったタイミングで執務室を訪れた。
「アメリアか。どうした?体調は良くなったのか?」
「はい、もう大丈夫です。お忙しいのにいきなり来てしまい、申し訳ありません。」
綺麗に頭を下げたアメリアを見て公爵は頭を撫でた。
「無理をしすぎていないか?公爵令嬢としては褒めるべきだとは思うが、父としては甘えられなくて寂しいよ。」
「お父様…」
頭を撫でられたのはいつぶりだろうか?
父はいつでも味方だった。
前回の時どんなにできなくても見放すことはなくアメリアの頑張りを認めてくれていた。
「お願いがあります。アルフード様との婚約をなかった事にしてください。」
アメリアは深々と頭を下げた。
わかっている。
公爵である父であろうとそれがいかに難しいかも。
アルフード様の婚約者になりたいと前回父にお願いしたが、それ以上に困難なお願いだと自覚はある。
「アメリア…そんなにアルフード様との婚約が嫌なのか。だが…」
「私の方からそれを言える立場にない事はわかっています。ですから私を除名してください。この家の者でなければ迷惑はかけませんよね?」
公爵は目を見開いた。
除名…家名を捨ててここを出ていくのか?
目の前にいるアメリアはまだ13歳…
夢や希望があってもいい時期だ。
だが、アメリアは完全に冷めた目をしている。
そして、王家と自分の家の立場を考え家を出る覚悟までしている。
公爵はアメリアを抱きしめた。
「お前をそんな風にしてしまったのは私か?すまない。まだお前は成人前だ。家の迷惑など考えなくてもいい。」
アメリアがアルフード様を最初こそ嫌がってはいたが、最近はうまくいっていると思っていた。
自分達の為に何年も我慢していた事実に衝撃を受けた。
除名などしてアメリアをここから追い出すつもりはないと言うとアメリアは笑った。
「大丈夫です。弟のレオンはスクスクと大きくなります。後継なら問題ありません。」
レオンは優秀な後継に育つ事をアメリアは知っている。
私なんかいなくても大丈夫。
そう言いながらアメリアは笑った。
「そういう事を言っているのでない。お前も大切な私の子だ。」
「申し訳ありません。私はお父様達に迷惑をかけたくないのです。どうか除名をお願い致します。」
アメリアの頑なに除名を申し出た。
「除名してここをでてどうやって生きていくのだ。子ども一人で生きていけるほどこの世の中は甘くない。」
アメリアみたいな綺麗な子はさらわれて売られてしまうと公爵がいうと家族のひいき目ですよとアメリアはフフフと笑った。
なぜ?アメリアはどうしてこんな風に笑う?
自虐した笑い方をいつ覚えた?
私のせいか?
「街が無理なら修道院という手もありますね。」
「いや、さらに無理だ!もうお前に会えなくなるだろう。」
修道院では男子禁制となる。
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「では今から街で生きる術を学びます。」
アメリアは微笑んだ。
アメリアは公爵令嬢として生きてきた。
街で平民としてなど生きていけるわけがない…
言っている事が大人びているかと思えば、いきなり現実離れした突拍子のない話になるアメリアを見て公爵は余計に無謀だと思った。
だが、こんな風に苦しそうに微笑ませたい訳でもない。
「一旦この話は預かるよ。少しだけ時間を私にくれないか。」
頭を下げて部屋を出るアメリアの礼儀作法は完璧だった。
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