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幸せの行方
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「アレン、ごめんなさい。」
「なんのことだ?」
アレンは私が謝る意味がわからないのだろう。
「あなたに理想を押し付けて勝手に失望したこと。」
「レイシア、あなたに頼られるのは嬉しい。それがあなた自身の事でなくても。レイシアにとって民の幸せが一番大切だろう。私もレイシアに尊敬される人間でいようとしていたしな。失望はさせたくなかったが‥」
アレンは苦笑いをした。
「そうね、でも私も勝手な人間よ。あなたの幸せが一番だと思ってしまうのだから」
私も苦笑いをする。
「ずっとそばにいさせてください。あなたの唯一の妃として。」
私は頭を下げる。
「この国のためか?」
私は、クスッと笑う。
そう仕向けたのは自分のくせに。
国のためにと脅した形なのにそれでは嫌なのだと態度で言っている。
私の気持ちも欲しくなったのだ。
「そうね、アレンにはこの一年の損害を倍返しにしてもらわないといけないわね。」
「あぁ。」
「私が離れてもあなたが幸せになれないなら自分の気持ちを押し込めてまで離れる必要がないわ。」
アレンのオーラが揺れる。
「レイシア‥それは‥」
「アレンは私のためなら頑張れるのよね?ならこの国の未来を見て私のことをどれだけ愛しているか評価するわ。どれだけ国を発展されられるの楽しみよ。」
「レイシア、愛してる。そのために必要ならいくらでも国を発展させる。」
「私も愛しているわ、アレン」
アレンの耳元で囁く。
「レイシア!」
アレンにギュウギュウと抱きしめられる。
なんかデジャブ‥
さっき王様が王妃様にしてたのと同じ。
この親子の愛情表現はギュウギュウ抱きしめることなんだろうか。
次の日からアレンのやる気が変わった。
レイシアの気が変わる前に結果を出さないといけないから。
周囲の者はこの一年、胃薬が欠かせなかったが、今度は回復薬が欠かせなくなった。
業務が倍以上に増えたから。
一年サボったツケが回ってきた。
やってもやっても終わらない。
ついに限界を迎えた政務官たちはレイシアに泣きつき、アレンの横にレイシアが寄り添い、政務を調整し始めた。
そこからアレンは余計に勢いづいた。
レイシアがそばにいる。
アレンにとって夢にまで見た事が叶い、さらにパアーアップしたのだ。
ドイルはそんなアレンの側近の一人になった。
ひたすらアレンに巻き込まれ、結局、彼女を作る時間がない。
お前ら、二人揃って手がかかるんだよ!との声が聞こえてきそうだ。
美味しいご飯は食べ放題となったのだから許してもらいたい。
そして王様と王妃様は‥
結局、離縁は成立しなかった。
王様はアレンに王位を譲り、王妃様と一緒に慈善事業を行なっている。
王妃様とこれからの人生を共にするために。
なぜなら、レイシアがささやいたから。
王妃様には
「王妃様も素直ではないですよ。自分の気持ちに素直になって王様と話し合いましょう。」と。
王妃様も自分がレイシアに語った手前、自分はできないとは言えなくなったのだ。
王様には王妃様がギュウギュウと抱いても嫌がっていなかった事をコソッと教えておいた。押し押しで行った方が良いと背中を押した。
二人の距離はまだまた縮まっていないが、これから時間などいくらでもある。
レイシアはこれからに期待している。
なぜならオーラが一本だけ細く二人を繋いだのだから‥
太くするのも切るのもこれからの二人次第だ。
マリアージュ妃は幽閉が解け、孤児院で孤児達のために頑張っているときく。
マリアージュ妃の王子、王女達も慈善事業の一環で訪ね、幸せそうに微笑む母に安心したと報告してくれた。
そうそう、あと数年もすればこの国の未来が大きく変わる出来事が起こる。
ちょっとだけ先の未来を先読みすれば‥
アレンが魔力を吸う装置の開発に成功するのだ。
ずっとレイシアを悩ませていたもの‥莫大な魔力による暴発。
感情をひたすらコントロールし、暴発に怯える日々。
魔力封じは内側に抑えるだけだが、魔力を吸ってしまうものがあればとずっとアレンは研究していた。
レイシアの魔力の暴発を防ぐだけではなく、魔力の強い女性が一時的に魔力が減る事で妊娠できるようになった。
母親の魔力が違う魔力を持つ子を攻撃する事で起こる不妊。
なら母親の魔力を落とせば妊娠するのではとの理論を実現させた。
魔力の暴発を防ぎ、妊娠する。
それは、レイシアの苦痛は大きく減らすためのもの。
レイシアの事だけを考えて行なっていた研究は、国に一大変化をもたらした。
吸った魔力を国の防御である結界システムに活用した。
妊娠を望む女性は多い。
もともと魔力が強いだけあって半端ない量で、王城に常に魔力にあふれ、魔力を活用した装置やシステムもどんどん開発され発展していく。
魔力が強い子も生まれやすくなり、さらに魔力で溢れるようになった。
「アレン!また、やりすぎたわね!苦情がきてるわ!」
レイシアが怒鳴っている。
どんなに怒っても、魔力の暴発どころか暴風も暴雨ももう起こらない。
「レイシア、私の愛にやりすぎなんてないよ。まだまだ足りないくらいだ。」
どれだけ国を発展させるつもりだ?
レイシアは国の発展具合でアレンの愛を評価すると言った自分の発言を後悔していた。
アレンのやる気はどんどんレベルアップしている。
レイシアに自分の愛を見せるために。
「アレン様、レイシア様は今魔力も少なめで負担がかかりやすいのです。ストレスはお腹の子にも影響が出ます。出産が済むまでは政務は程々にしておいてください。」
侍医が恐る恐る言う。
「‥‥あぁ、わかった。一年は政務を抑えよう。」
レイシアの妊娠のたびに王城は休憩タイムに入る。
皆の祈りは一つ。
レイシア様、たくさん子どもを産んでください!
FIN
「なんのことだ?」
アレンは私が謝る意味がわからないのだろう。
「あなたに理想を押し付けて勝手に失望したこと。」
「レイシア、あなたに頼られるのは嬉しい。それがあなた自身の事でなくても。レイシアにとって民の幸せが一番大切だろう。私もレイシアに尊敬される人間でいようとしていたしな。失望はさせたくなかったが‥」
アレンは苦笑いをした。
「そうね、でも私も勝手な人間よ。あなたの幸せが一番だと思ってしまうのだから」
私も苦笑いをする。
「ずっとそばにいさせてください。あなたの唯一の妃として。」
私は頭を下げる。
「この国のためか?」
私は、クスッと笑う。
そう仕向けたのは自分のくせに。
国のためにと脅した形なのにそれでは嫌なのだと態度で言っている。
私の気持ちも欲しくなったのだ。
「そうね、アレンにはこの一年の損害を倍返しにしてもらわないといけないわね。」
「あぁ。」
「私が離れてもあなたが幸せになれないなら自分の気持ちを押し込めてまで離れる必要がないわ。」
アレンのオーラが揺れる。
「レイシア‥それは‥」
「アレンは私のためなら頑張れるのよね?ならこの国の未来を見て私のことをどれだけ愛しているか評価するわ。どれだけ国を発展されられるの楽しみよ。」
「レイシア、愛してる。そのために必要ならいくらでも国を発展させる。」
「私も愛しているわ、アレン」
アレンの耳元で囁く。
「レイシア!」
アレンにギュウギュウと抱きしめられる。
なんかデジャブ‥
さっき王様が王妃様にしてたのと同じ。
この親子の愛情表現はギュウギュウ抱きしめることなんだろうか。
次の日からアレンのやる気が変わった。
レイシアの気が変わる前に結果を出さないといけないから。
周囲の者はこの一年、胃薬が欠かせなかったが、今度は回復薬が欠かせなくなった。
業務が倍以上に増えたから。
一年サボったツケが回ってきた。
やってもやっても終わらない。
ついに限界を迎えた政務官たちはレイシアに泣きつき、アレンの横にレイシアが寄り添い、政務を調整し始めた。
そこからアレンは余計に勢いづいた。
レイシアがそばにいる。
アレンにとって夢にまで見た事が叶い、さらにパアーアップしたのだ。
ドイルはそんなアレンの側近の一人になった。
ひたすらアレンに巻き込まれ、結局、彼女を作る時間がない。
お前ら、二人揃って手がかかるんだよ!との声が聞こえてきそうだ。
美味しいご飯は食べ放題となったのだから許してもらいたい。
そして王様と王妃様は‥
結局、離縁は成立しなかった。
王様はアレンに王位を譲り、王妃様と一緒に慈善事業を行なっている。
王妃様とこれからの人生を共にするために。
なぜなら、レイシアがささやいたから。
王妃様には
「王妃様も素直ではないですよ。自分の気持ちに素直になって王様と話し合いましょう。」と。
王妃様も自分がレイシアに語った手前、自分はできないとは言えなくなったのだ。
王様には王妃様がギュウギュウと抱いても嫌がっていなかった事をコソッと教えておいた。押し押しで行った方が良いと背中を押した。
二人の距離はまだまた縮まっていないが、これから時間などいくらでもある。
レイシアはこれからに期待している。
なぜならオーラが一本だけ細く二人を繋いだのだから‥
太くするのも切るのもこれからの二人次第だ。
マリアージュ妃は幽閉が解け、孤児院で孤児達のために頑張っているときく。
マリアージュ妃の王子、王女達も慈善事業の一環で訪ね、幸せそうに微笑む母に安心したと報告してくれた。
そうそう、あと数年もすればこの国の未来が大きく変わる出来事が起こる。
ちょっとだけ先の未来を先読みすれば‥
アレンが魔力を吸う装置の開発に成功するのだ。
ずっとレイシアを悩ませていたもの‥莫大な魔力による暴発。
感情をひたすらコントロールし、暴発に怯える日々。
魔力封じは内側に抑えるだけだが、魔力を吸ってしまうものがあればとずっとアレンは研究していた。
レイシアの魔力の暴発を防ぐだけではなく、魔力の強い女性が一時的に魔力が減る事で妊娠できるようになった。
母親の魔力が違う魔力を持つ子を攻撃する事で起こる不妊。
なら母親の魔力を落とせば妊娠するのではとの理論を実現させた。
魔力の暴発を防ぎ、妊娠する。
それは、レイシアの苦痛は大きく減らすためのもの。
レイシアの事だけを考えて行なっていた研究は、国に一大変化をもたらした。
吸った魔力を国の防御である結界システムに活用した。
妊娠を望む女性は多い。
もともと魔力が強いだけあって半端ない量で、王城に常に魔力にあふれ、魔力を活用した装置やシステムもどんどん開発され発展していく。
魔力が強い子も生まれやすくなり、さらに魔力で溢れるようになった。
「アレン!また、やりすぎたわね!苦情がきてるわ!」
レイシアが怒鳴っている。
どんなに怒っても、魔力の暴発どころか暴風も暴雨ももう起こらない。
「レイシア、私の愛にやりすぎなんてないよ。まだまだ足りないくらいだ。」
どれだけ国を発展させるつもりだ?
レイシアは国の発展具合でアレンの愛を評価すると言った自分の発言を後悔していた。
アレンのやる気はどんどんレベルアップしている。
レイシアに自分の愛を見せるために。
「アレン様、レイシア様は今魔力も少なめで負担がかかりやすいのです。ストレスはお腹の子にも影響が出ます。出産が済むまでは政務は程々にしておいてください。」
侍医が恐る恐る言う。
「‥‥あぁ、わかった。一年は政務を抑えよう。」
レイシアの妊娠のたびに王城は休憩タイムに入る。
皆の祈りは一つ。
レイシア様、たくさん子どもを産んでください!
FIN
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