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アレンの仮想空間

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警備兵隊長は倒れそうになっている。
気持ちはわかるけど、倒れる前に伝令を早く出しなさい。
アレンが出てきた以上、誰にも止められない。
何とか倒れる前に伝令を出せた隊長に同情の目を向ける。

アレンは警備兵から私に視線を向けた。
「久しいな。元気にしていたか?」

疲れ切り表情なくアレンは私の体調を気にかける言葉を述べる。
私でなく、あなたが大丈夫ではないでしょう?
私の目に涙が浮ぶのを必死にこらえた。

雨がポツポツ降りだす。
ダメ、感情を動かしちゃ。

久々に会ったアレンを前に感情を動かすなという方が無理だ。

それにアレンも強く私の感情が動いたことに気づいて静かに微笑んだ。
「その揺れは何を意味している?」

これだから幼馴染みは嫌だ。

「‥‥」
私は答えられない。

だって黙ってアレンから逃げたのだから。
こんなことを今更アレンに言う資格はない。
会えなくて寂しかったなんて‥

アレンはフィンランに振り返り
「少し離れる。1時間後にリーグガーの城で会おう。」

「‥承知いたしました。」
フィンランが頭を下げると一瞬で景色が変わる。

私とアレンだけが場所を移動した。
アレンが作り出した仮想空間に飛んだのだ。

「ここなら誰の邪魔も入らず、2人だけで話ができるだろう。」
アレンは私の頬を手で撫でた。

アレンの作り出す空間は温かくてとても居心地が良い。
私の魔力に合わせて空間を作ってくれているのがわかる。

仮想空間を作るだけでもかなりの魔力を要する。
私の魔力の色に合わせて空間をつくるなんて‥

ずっと一緒にいたアレンにしかできないことだが、王太子の守りの魔力すら落としかねない。

「この空間から早めに出て。アレンの魔力消費が激しい。いざという時の守りすら発動できない恐れがあるわ。」

私が言うと
「大丈夫だ。レイシアが私を見た瞬間に保護をかけた。あなたの保護を破れる人間はこの国にはいない。」

「それでも王太子の安全を第一よ。アレンの代わりはこの国にはいない。」

私もそこは、譲れない。
私の力ならこの空間を壊して脱出することはできるが‥
仮想空間は術者の精神とつながっており、下手な攻撃は精神にも傷をつける可能性がある。

「だから、この空間にあなたを呼んだ。私を傷つけてまでレイシアは逃げることができないだろう?」
アレンが力なく笑う。

今までの自信たっぷりでいつもにこやかに笑う方が‥

「何があったの?そんなになるまで、アレンを追い詰めるものは何?」

「‥‥何もない。」

アレンは私の問いに返答する。
しばらく沈黙の後話し出した。

「何があったわけではない。これが元々の私だ。ただ生きている。何かしたいことがあるわけではない。ただ、存在しているだけだ。」

今話しているのは本当にアレン?
別人のように感じてレイシアは怖くなった。
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