【完結】王太子の求婚は受け入れられません!

みやちゃん

文字の大きさ
上 下
25 / 36

アレンの仮想空間

しおりを挟む
警備兵隊長は倒れそうになっている。
気持ちはわかるけど、倒れる前に伝令を早く出しなさい。
アレンが出てきた以上、誰にも止められない。
何とか倒れる前に伝令を出せた隊長に同情の目を向ける。

アレンは警備兵から私に視線を向けた。
「久しいな。元気にしていたか?」

疲れ切り表情なくアレンは私の体調を気にかける言葉を述べる。
私でなく、あなたが大丈夫ではないでしょう?
私の目に涙が浮ぶのを必死にこらえた。

雨がポツポツ降りだす。
ダメ、感情を動かしちゃ。

久々に会ったアレンを前に感情を動かすなという方が無理だ。

それにアレンも強く私の感情が動いたことに気づいて静かに微笑んだ。
「その揺れは何を意味している?」

これだから幼馴染みは嫌だ。

「‥‥」
私は答えられない。

だって黙ってアレンから逃げたのだから。
こんなことを今更アレンに言う資格はない。
会えなくて寂しかったなんて‥

アレンはフィンランに振り返り
「少し離れる。1時間後にリーグガーの城で会おう。」

「‥承知いたしました。」
フィンランが頭を下げると一瞬で景色が変わる。

私とアレンだけが場所を移動した。
アレンが作り出した仮想空間に飛んだのだ。

「ここなら誰の邪魔も入らず、2人だけで話ができるだろう。」
アレンは私の頬を手で撫でた。

アレンの作り出す空間は温かくてとても居心地が良い。
私の魔力に合わせて空間を作ってくれているのがわかる。

仮想空間を作るだけでもかなりの魔力を要する。
私の魔力の色に合わせて空間をつくるなんて‥

ずっと一緒にいたアレンにしかできないことだが、王太子の守りの魔力すら落としかねない。

「この空間から早めに出て。アレンの魔力消費が激しい。いざという時の守りすら発動できない恐れがあるわ。」

私が言うと
「大丈夫だ。レイシアが私を見た瞬間に保護をかけた。あなたの保護を破れる人間はこの国にはいない。」

「それでも王太子の安全を第一よ。アレンの代わりはこの国にはいない。」

私もそこは、譲れない。
私の力ならこの空間を壊して脱出することはできるが‥
仮想空間は術者の精神とつながっており、下手な攻撃は精神にも傷をつける可能性がある。

「だから、この空間にあなたを呼んだ。私を傷つけてまでレイシアは逃げることができないだろう?」
アレンが力なく笑う。

今までの自信たっぷりでいつもにこやかに笑う方が‥

「何があったの?そんなになるまで、アレンを追い詰めるものは何?」

「‥‥何もない。」

アレンは私の問いに返答する。
しばらく沈黙の後話し出した。

「何があったわけではない。これが元々の私だ。ただ生きている。何かしたいことがあるわけではない。ただ、存在しているだけだ。」

今話しているのは本当にアレン?
別人のように感じてレイシアは怖くなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

なんでも報告してくる婚約者様

雀40
恋愛
政略結婚を命じられた貴族の子どもは、婚約中にどういうふうに関係を築いていくかを考えた。 そうしてふたりで話し合って決めたのは「報告すること」。 お互いの感情と情報のすれ違いによるトラブルの防止を目的とした決め事だが、何でもオープンにすることに慣れてしまうと、それはそれで問題に……? ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 真面目女子✕真面目男子。 双方真面目が過ぎて若干ポンコツ気味なカップルのゆるい話。

【完結】傷跡に咲く薔薇の令嬢は、辺境伯の優しい手に救われる。

朝日みらい
恋愛
セリーヌ・アルヴィスは完璧な貴婦人として社交界で輝いていたが、ある晩、馬車で帰宅途中に盗賊に襲われ、顔に深い傷を負う。 傷が癒えた後、婚約者アルトゥールに再会するも、彼は彼女の外見の変化を理由に婚約を破棄する。 家族も彼女を冷遇し、かつての華やかな生活は一転し、孤独と疎外感に包まれる。 最終的に、家族に決められた新たな婚約相手は、社交界で「醜い」と噂されるラウル・ヴァレールだった―――。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

婚約破棄させてください!

佐崎咲
恋愛
「ユージーン=エスライト! あなたとは婚約破棄させてもらうわ!」 「断る」 「なんでよ! 婚約破棄させてよ! お願いだから!」 伯爵令嬢の私、メイシアはユージーンとの婚約破棄を願い出たものの、即座に却下され戸惑っていた。 どうして? 彼は他に好きな人がいるはずなのに。 だから身を引こうと思ったのに。 意地っ張りで、かわいくない私となんて、結婚したくなんかないだろうと思ったのに。 ============ 第1~4話 メイシア視点 第5~9話 ユージーン視点  エピローグ ユージーンが好きすぎていつも逃げてしまうメイシアと、 その裏のユージーンの葛藤(答え合わせ的な)です。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人

白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。 だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。 罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。 そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。 切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》

処理中です...