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王太子の出現

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アレンの後ろにいたフィンランは、レイシアの顔を見るなり頭をぺこりと下げた。

放心状態の私にドイルが近づく。
「おい、レイ。どうなってんだ?あれ、王太子だよな?」
レイシアからいつも新聞の切り抜きのアレンを見せられていたドイルはすぐに目の前の人物が王太子だと気づいた。
コソコソとレイシアに話しかけるドイルをチラッとアレンが見た。

アレンからオーラがブワッと溢れ出た。
何??怒り?
何に対してかわからないが相当怒っている。
現れた時はそんなオーラなかったのに、今いきなり現れた。
えっ、この一瞬で何があった???
放心しておりドイルに話しかけられたこともわかっていなかったレイシアはプチパニック‥
警違隊を呼んだことを後悔した。

ドイルはアレンからとてつもない殺気をぶつけられていた。
会った瞬間になぜ?とは思わない。
勘の良いドイルはすぐにわかった。
なぜなら、レイシアに話しかけた直後に殺気立ったのだから。

おいおい、勘弁してくれよ‥
王太子が恋人ってマジだったのか。
何で俺が睨まれないといけないんだ。
こういうことは早く言っといてくれよ‥
泣きたくなるドイル。

いや、レイシアは何度も恋人だって言っていた。
そうドイルが信じていなかっただけだと気づき、その時の自分を恨んだ。

危険リスク回避能力もドイルは人一倍高い。
早く離れなければと本能がいっていたが、今動いたら本当に命がないと冷や汗が流れた。

話しかければ余計に殺気が強くなるのは確実‥
おーい、レイ!何とかしろ!
念力を送る。

その願いが叶ったのかレイシアがハッと意識を取り戻し‥
王太子に対し臣下の礼をとった。

「我らの王太子にレイシアが挨拶申し上げま‥
「レイシアから堅苦しい挨拶はいらない。私の愛しい人。」

???
レイシアは内心焦っていた。
アレンは私の話を遮り、言葉を重ねた。
私生活はどうであれ、このような大勢の前では主従関係には気をつけていた。
まぁ、王様達の前ではアレンと呼びきりにはしてたけど‥
家族の前では呼びすてにはしてほしいとのアレンの希望であり、王様も王妃様も了承していたので何も言われなかった。

なのに、愛しい人?
こんな一般市民も多くいる中で?
みんな固まったまま。

いつもと違うアレンに戸惑いを隠せない。

「‥‥どうしてアレン‥様がおいでになったのでしょう?」

思ったまま聞いてみた。

「‥‥警違隊の仮とはいえ、今のトップは私だ。私が来て何が悪い?」

顔をあげてアレンを見ると表情がない。
仮?
誰かが就任予定なのか?
確かにアレンは相当忙しいし、ずっと一つの部署のトップをするのは難しいだろう。

痩せた?

ここまで疲れきった様な表情を見るのは幼馴染みであるレイシアでも初めてだった。

やっぱり何かあったのだ。
新聞にも出てこなくなったアレン‥

私は楽しく旅してた間、アレンは何か大変な事に巻き込まれていたのだと思うと胸が苦しくなった。

「王太子殿下、申し訳ありません。ご多忙の中、こんな呼び出しをしてしまいました。」

それに対し、アレンは答えず、ため息をついた。
警備兵に向きを変え、話しかける。
「ここは誰の領だ?」

アレンには直接会ったことはないだろうが、新聞などでアレンの顔は知っている警備兵の隊長は、真っ青になりながら答える。
「ここは、サーマルレンランド領アルロンド・リーグガー様です。」

アレンはちょっと考えてから
「リーグガーの領か。では、1時間後に王太子アレンが領城に行くと伝えろ。フィンラン、今回の揉め事の原因を探っておけ。」
と指示を出す。

チラッとドイルを見て
「レイシアの知り合いの者も一緒に連れて行けよ。」

ドイルは逃げられないことを悟った。
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