【完結】王太子の求婚は受け入れられません!

みやちゃん

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王太子の微笑み

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王太子の仮想空間が消えるとレイシアがフィンランの魔力を追って空間転移で移動した。
アレンの魔力をこれ以上使わせないためだ。

「このくらい何でもないのに、心配性だな。」
ニコニコ笑うアレンの横でレイシアは無言のまま。

リーグガー城の客間と思われる部屋にフィンラン、先程達の警備兵、あの女の子、その横に父親と思われる女の子によく似たおじさん、そして青ざめている領主がいた。

「良いタイミングですね。お茶を入れましょうか?さすが、お茶の名産地。良い茶葉が色々あります。」
フィンラン一人ニコニコ出迎えた。

フィンランはこんなに笑う人だっけとレイシアはぼんやり考えていた。
フィンランにしてみれば恐怖の一年が終わりを迎えようとしているのだ。
治癒魔法だけでは間に合わないくらい胃痛に悩まされた。
胃痛から解放される、嬉しさが前面に出ていているのは仕方がない。

「お茶は必要ない。すぐ終わるしな。で、現状を報告しろ。」
アレンはフィンランに向かって言った。

「はっ!」

頭を下げ、フィンランが商業ギルド長と名乗る男に話を振った。

男がポツリポツリ話し出す。

リーグガーはお茶の名産であり、この国の6割以上のお茶を生産してしている。
その為、領民の殆どがお茶の栽培、加工、販売など何かしらに関わっていた。

今年はお茶の葉が凶作で、領主の求める税収が領民が払えるものではなかった。
反乱が起こる一歩手前まで追い詰められた領民達の代わりに商業ギルド長が領主と話し合いに臨んだ。

その商業ギルド長の娘がさっきの女の子だ。

話し合いが領主にとって都合良いものに進めるための人質として捕らえるつもりだったらしい。

女の子の横で商業ギルド長はギリギリと歯を噛み締めた。
女の子の口から警備兵とレイシアのやりとり、女の子を切ろうとしたこと、レイシアが切れたことなどが細やかに話された。

レイシアは、何でそこまで話すの??と叫びたかったが沈黙を守った。
やぶ蛇になりかねないからだ。

「よく抑えてくれました。あなたが本当にキレてたらこの辺り全て吹き飛んでいましたよ。」

フィンランから声が漏れた。
皆の表情はさらに青ざめ、シーンとした沈黙の時間が流れた。

ドイルからは昔からそうだったのかよと冷たい視線を向けられた。

いや、そんなに何度も暴発などしていない。
みんなオーバーなのだ。
きっとドイルに言うと何度もやってるじゃねぇか!と突っ込みがくるだろうが。

「私だってそこまで馬鹿ではないわよ。だから警違隊を呼んだの。私がブチ切れる前に」
ボソリとつぶやく。

その話には反応しないアレンは別の話をしだした。
基本的にレイシア以外のことはどうでも良いのだ。
「レイシアを侮辱したのはどの者だ?」
アレンが突拍子もなく話し出した。

「?侮辱などされてないわよ?」

「言葉を変えよう。俺の女になれば、魔力封じを外してやってもいいぞと言ったのは誰だ。説明願おう。」

はぁ?
「確かに魔力封じを勝手に外すのは違反ですけど、今その話している場合ではないですよね?」
呆れて私が言った。

アレン、論点ズレてるよと突っ込みたい。
意味がわからない‥
という顔をしていたようだ。
皆から冷たい視線が集まる。

ドイルは、お前がズレてるんだよ!
と叫びたい。
睨まれるのが嫌だから、言わないが‥

フィンランが駆け寄り小さな声で耳元で囁く。
「レイシア様が女性としてみられ、侮られた事を言っているのですよ。レイシア様はお綺麗ですから触れたいと思う男は多いでしょう。」

フィンランは言葉を選んだ。
性的な意味も含まれている「俺の女」の意味をレイシアに説明すれば、その言葉でアレンが確実にブチ切れそうだから。
フィンランはそのことを十分に知っている。

「えっ?確かに女だけど‥男でもこの国に私に勝てる者などいないでしょう?魔力封じすら気持ち魔力奪うくらいしか効果ないのに。第一、昔からモテたこともないし、売り言葉に買い言葉でしょ」

レイシア様、鈍過ぎますよとフィンランは突っ込みたい。
王城にいた時‥2人でレイシアと話しただけでその後の業務は倍になっていた。
アレンにより業務倍増、下手したら配置転換、国の端っこに飛ばされた者もいた。
それを恐れてレイシアを口説くものがいなかっただけだ。
王太子はめちゃくちゃ嫉妬深いんですよ‥
それを知らないのはレイシア様だけです‥

ドイルに至っては
っかもういいから黙っていろ。
と念力をもう一度飛ばしていた。

王太子の視線が怖すぎるのだ。

フィンランは
「それだけアレン様はレイシア様のことが大切なのですよ。」
王太子の方をチラチラ見ながら小声でレイシアに伝える。

「誰だ?」
コソコソ話しているのを無視してアレンは話を進める。

誰も名乗りを上げない。
当たり前だ、王太子に睨まれてこんなところで自分がしました何て言える者はそうそういない。

アレンが笑うと警備兵、領主が苦しみ出した。

「王太子?何をしてるのです?」
私は慌ててアレンの魔法を無効化にした。
拷問にかけようとした?

信じられないと言った目でアレンを見つめた。

「当たり前だろう。王太子妃となるあなたに手を出そうとしたのだから、大きな罪だ。」

ニッコリ笑うアレン。
領主も警備兵も王太子妃という言葉にさらに顔を青ざめた。
下手したら王家に反逆したことになる。

「王太子妃?それはとっくになくなった話でしょう?」
私は慌てて聞き返す。

「一年前に宣言してあった筈だ。あなたが王太子妃にならないなら私は廃嫡すると。それは今でもいきている。誓約書にサインして提出してあるからな。」
ニコニコしながらアレンは言う。

王族が結ぶ誓約書は王の許可がいる。
誓約書がある時点で王は認めているということになる。

一年経っても事態はなにも変わっていなかったこと、何のために逃げ回っていたのかわからなくなり頭がクラクラしてきた。

そんな私の様子をアレンは嬉しそうに微笑んで眺めていた。
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