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レイシアの旅

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「はぁ、もうすぐ一年がたつわね。」
独り言だったが、ドイルが返答した。

「そうだな。レイが冒険者になって、そんなに経つんだな。本当何もできないやつだったのに。」
シミジミとドイルは懐かしむように考え込んだ。

レイシアが王城が出てもうすぐ一年‥と言いたかったが、確かに冒険者になってドイルと会ったのもその時期だ。

色々な人とパーティーを組んだが、結局ドイルと依頼を受けながら色々な領地を回スタイルに落ち着いた。

もうダメ人間レイシアなんて呼ばせない。
街の人にも会いに行かないとね。
私の成長具合を見てびっくりするはず!
この一年で大抵の事はできるようになったし。
料理の腕は上がらなかったが‥それはご愛嬌ということで。
一人で掃除、洗濯はできるようになったし、冒険者としてお金を稼いでいる。
自分を自画自賛。
笑っている私をみてドイルは怪訝そうにしている。

新しい出会いが多かったこの一年で‥
国民がどのような生活をしているのか、何に困っているのか見て自分がどれだけ狭い知識や考えで政務に取り組んでいたのか今ならよくわかる。

今なら一年前よりもっと良くできる‥と考え、フッと笑う。

王城でもう仕事することはないのにと。
ついつい、これは使えるとか、こんなことしたら良いんじゃないかとアイデアが沢山出てきた。
意味がないことはわかっているが、やめられなかった。

王妃との約束まで一ヶ月を切っている。
気が重い。
アレンは元気でやっているかな‥
まだ、婚約者の発表はないみたいだけど。

アレンの事を考えない日はなかった。
離れてみてその存在の大きさに悩まされた。
自分から望んだ事なのに。
離れる覚悟なんて全くできていなかった。

そんな中、ドイルの存在には助けられた。
お父さんは‥失礼だな。
4歳違いだし、お兄ちゃんのような存在だ。
ドイルのオーラを見てもレイシアに向けて恋愛感情は全くない。

レイシアに少しでも恋愛感情のオーラをもつ人たちとは距離を取っていた。
レイシア自体、それに答えるつもりがないのでめんどくさいだけなのだ。

ドイルと一緒にいる事も多く、付き合っているという噂も流れたが‥
お互いに全くそういう感情もなければ、甘い雰囲気もでない。
ドイルの優しい愛情深いオーラは見えるが、家族に対するようなものだった。
妹のように思ってくれてるという安心感。
家族がいなかったレイシアにとって家族として愛されるのはこういうことなんだと思えた。

誰をみてもアレンが一番いいと思ってしまう私は重症だと自分でも思う。
新聞記事一つでもアレンとの接点が持てることが嬉しかった。

ただ一年前、新聞でよく取り上げられていたアレンが、最近ではほとんど見なくなった。

写真を見る限り元気そうではあるが‥
彼が行った政務や活動などの報告が極端に減っていた。

「何か表に出せないような難しい事案でも抱えてるのかな」
王妃に国の危機には手を貸すと約束しており、いつでも連絡が取れるよう王妃だけには居場所を伝えていた。
特に連絡もないから大丈夫と思うけど‥

新聞だけでもアレンの事を知りたいと思っていた私は、寂しく感じていた。
一年近く王城から離れていたレイシアは、王城の事を知る機会はなく、ずっと旅を続けていたのだ。

王城では‥
悲惨な状況に陥っていた‥
その事を知るのは、もう少し後のことだった。



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