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レイシアの後悔

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「王家にとって世継ぎが大切だという事を私は知っています。王様と王妃様は愛し想いあいながら、マリアージュ様を迎えなければならなかった。これが一番不幸な出来事だったと思います。」

私が抱える心の内は一生胸の中におさめる予定だった。
今更いっても誰も幸せにしない。
そればかりか、傷つけてしまうこともわかっていた。

「マリアージュ様は元々心優しく愛情深いお方です。マリアージュ様が欲しがったもの、それは王妃の立場でも産んだ子が王になる事でもありませんでした。マリアージュ様が欲したものが手に入っていたら、あんな風にはならなかったと思います。」

マリアージュ妃の事をよく言う人はいない。
それだけの事をしていた。
しかし、そんな風にしてしまったのは、ここだと私は思ってしまう。

「どういう事だ。」
王は眉をひそめて言葉を発した。

私は言おうかどうかまだ迷っている。
そこで声を出したのはアレンだ。

「父上の愛情か?」

私は小さく頷いた。

「マリアージュ様は王様を心から愛していました。王様が愛情をマリアージュ様に向けておられたら、悲しみ、憎しみの感情に飲み込まれることはなかった。自分への愛情は全く感じる事ができず、愛を向けられる王妃様を憎み、自分が産んだ子たちにすがるしかなかった。」

そして、憎しみの魔力に呑まれ精神を病んだ。

公にはなっていないが、アレン暗殺を企てたことにより幽閉された。
病気療養として王城を離れることになった。

自分の子を王にしたいわけではなかった。
だが、アレンを産んだ王妃が愛されているのをみて自分の子が王太子となれば、王の愛が自分に向くのではないかと考えたのだ。

子を甘やかしたのも嫌われたくなかったからだ。
子たちに縋っていたマリアージュ妃は、子から拒否されるのにも怯えていた。

王と王妃の愛を一身に受けて生まれたアレンが王妃以上に憎くなっていった。

そのオーラを感じていた私は、憎しみのオーラが超えないようマリアージュ妃の負の感情をなんとかしようと関わりを持つようになった。

マリアージュ妃から出る優しい愛情深いオーラはレイシアの母のオーラととてもよく似ていた。

だからこそ救いたかった。
自分が母を殺してしまったけど、今ならマリアージュ妃はまだ間に合う。
これが償いのチャンスだと思った。

毎日、マリアージュ妃に会いに行った。
レイシアがマリアージュ派閥に入るのではと警戒され周囲が邪魔をしたため、なかなか会うこともできなくなり‥
だんだんと憎しみのオーラが強くなっていく。
小さいレイシアには、どうしようもできなかった。

しかし、とうとう負の感情に染まり、それがアレンに向いていた。
アレンの危機を感じた私は、王に報告し暗殺計画は露見した。

そんなことはしたくなかった。
優しいオーラを守ってあげられなかった。
もう少し早く関わっていたら‥
負のオーラを押さえ込めていたら‥
変わっていたかもしれないという後悔が大きい。

マリアージュ妃を救えなかった。
王太子であるアレンを暗殺しようとしたのだ、ただでは済まない。
処刑されるだろうと噂されているのを聞いた。

母と同じように私が殺してしまう。
私はマリアージュ妃を見捨てて、アレンを選んだのだから。

レイシアはふさぎ込んだ。
しばらくは、人と口を聞けなくなるくらいに自分がマリアージュ妃を裏切ったと罪悪感でいっぱいだった。
心配したアレンに事情を聞かれたレイシアは自分の感情を吐き出したくて全てを話した。

オーラが見えることは言わないというお母さんとの約束を破った事にまた、別の罪悪感がこみ上げてきて‥
余計にふさぎ込んだ。
アレンはずっと何も言わずに、ずっと横にいて手を握ってくれていた。

その後、マリアージュ妃は処刑ではなく、幽閉となった。
アレンがどう手を回したのかはわからない。

でも、死ななくて良かった。
マリアージュ様が処刑されていれば‥
もう立ち直れなかったかもしれない。

母親が行った暗殺未遂は、マリアージュ妃の王子や王女にもショックを与えたが、レイシアはマリアージュ妃が少しでも王から遠くに離れて気持ちを落ち着けてくれる事を願った。

「精神が壊れていく中でも、マリアージュ様は王様への愛情を求めていました。アレンへの憎しみはマリアージュ様が得ることができない愛情への裏返しです。王様と王妃様は本当の意味で愛し合い、アレンが生まれたのですから。」
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